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学校帰り

「はぁ…王子様のキスで目覚めるって、いいわよねぇ~」 「でもね、葵ね、やっぱり嫉妬がNo.1!お互いヤキモチ妬くのがね~…きゅん!ってする!」 母さんと葵… また、あの話してる 葵…ヤキモチとか、きゅんとか、分かるの? 「ヤキモチ妬きながらね~、少しずつ気持ち気付いてくのもいい!」 「あ!それいい!」 葵が居てくれて良かった 俺しか居なかったら きっと、凄く静かで 笑い声聞こえなかったかもしれない 母さん…楽しそう… ピピピピ…ピピピピ… 朝… 結叶の部屋 結叶の朝だ 「ふぁ~~…よし!」 朝から元気! 「っと……あれ?」 何となく…右の足首痛い様な… 転んだ時、捻ったのかな? まあ、気になる位じゃないか と、思ってたけど… 何度か、階段上り下りしてると やっぱ、痛いかも… 「母さん…なんか、ちょっと右の足首痛いかも…」 「あら…後から痛いとこ出てきたりするから…学校休んで、病院行こっか」 「えっ?いや…歩けない程じゃないし、そんな大袈裟な事じゃないよ」 「ん~~…でも、歩いてるうちに、痛くなるかもしれないから……とりあえず湿布貼ってって、我慢出来なかったら、保健室行くのよ?」 「うん」 「やっぱり痛かったら、明日は病院行こ?」 「……うん」 病院… こんなんで、行きたくないな 母さんは仕事、俺は学校休まなきゃなんない 「ユウ…足痛いの?」 「四葉…何となく痛いかな?ってくらいだよ」 「痛かったら、シュウ君に運んでもらってね?」 「ふっ…分かったよ」 シュウは、俺のSPじゃないんだから クラスだって違うし、いつも一緒じゃないんだけどね 母さんに湿布を貼ってもらう あ、そうだ 「四葉、痛くなったら言うけど…今はシュウに秘密にしてくれる?」 「なんで?」 「きっと昨日、頼まれたのに俺が怪我したから、シュウのせいじゃないのに、責任感じてる。今日も俺の事頼まれたら…1日中、気が気じゃないと思うから」 「……そっか。分かった」 階段から落ちたのも そのせいで蓮の事思い出したのも シュウのせいだと思ってるからな 四葉がシュウに言わなかったお陰で 昨日の色々な事は気にしてるものも まあまあ…いつものシュウだな 「おはよ~」 「穂積!」 「大丈夫か?お前…」 「穂積君、怪我は?」 そっか… 昨日学校休んだ時点で、皆に知れ渡ってんのか 「えっと、心配かけてごめん。実は、ほとんど怪我してない」 少しの間記憶失くしてたけど 「お前…今年厄年か?」 「いや、奇跡的に無事だから、運を使いまくってる年かもしんねぇぞ?」 「どっちにしても、お祓いしてもらった方がいいぞ」 すっかり皆を心配させてしまった ホームルームが始まるまで、皆に色々答えてると ガラッ 「きり~つ!れ~い!着席!」 「おはよう。穂積…大丈夫か?」 先生も心配させてしまった 「大丈夫です。軽い怪我だけで済みました」 「そうか。通学時間の通学路を、引っ掛ける位ギリギリで通るなんて、けしからん自転車の乗り方をする奴も居るから、皆も気を付けるように!」 「は~~い」 「そして、自分も加害者にならないように、自転車乗る時は気を付けるように!」 「は~~い」 俺が居るクラスの先生は 心配事が増えて大変だ そうして1日の授業が終わり 帰りのホームルームが終わると… 「穂積、いい時、ちょっと先生のとこに来てくれ」 「…はい」 何だろう? 昨日の事? 「穂積、大丈夫?」 「甲斐…悪いけど、シュウが来たら、先に帰っててって、伝えてくれる?」 「待っててもらわなくていいの?」 「妹が1人で待ってるんだ。先生の話、どれ位かかるか分かんないし、シュウだけでも先に帰ってくれたら、妹のとこ行ってくれるから」 「そうなんだ…分かった」 職員室に行って、坂下先生に声を掛けると 「おお、来たか。穂積…お前……」 「はい?」 「あ~っと…やっぱ、ちょっとこっち」 職員室の隅の、来客用の椅子に座らせられた ここ、俺が座っていいの? 坂下先生が、少し声を抑えて話し掛けてくる 「穂積、お前さ…その…学校休んだり、保健室で休む事多いだろ?」 「はあ…」 「だからその……勉強とか…大丈夫か?ちゃんと付いてこれてるか?」 「ああ…それは、兄ちゃん居るし、幼馴染みも頭いいんで、大丈夫です」 「ああ…そうだったな」 その話? それで、わざわざ呼び出したの? 別に教室で聞いてくれても、良かったのに 「それじゃその……誰かに何か言われたりとか…嫌な事されたりとか…ないか?」 何か言われたり… 嫌な事されたり… 先生の言いたい事が、いまいち分からない 「特に…ないですけど…?」 「ほんとか?!ずる休みしてるとか、体弱いのバカにしたりとか…なんか…なかなか言えなくて、困ってる事あったら、いつでも先生に言っていいんだからな?」 あ… ようやく分かった 俺が、随分皆と違うから 虐められてないか心配してくれてるんだ 「先生…俺、虐められてないです。うちのクラスに、そんな事言ってくる奴、居ません」 「先生だって、そう見えるさ。穂積が、皆に心配されてる様にも見える。けど、実際は…って事があるだろ?穂積を救いたいのは勿論だが、気付かないで、うちのクラスの奴を、虐める側の人間にもしたくない。少しでも困ってる事があったら、早めに相談してくれ」 そっか 俺だけじゃなくて、クラス皆の心配してたんだ 「分かりました」 「よし。じゃあ、帰っていいぞ」 「坂下先生」 「何だ?」 「先生って、凄いんですね?」 「え?」 「俺、坂下先生も、坂下先生のクラスも好きです」 「~~っ…そっ…そうか」 坂下先生が 少しだけ赤くなって、照れてる 「はい。失礼します」 「おお…気を付けて帰れよ」 「はい」 小学校みたいに、全教科教える訳じゃないから 一緒に居る時間少ないのに 凄く見て、考えてくれてるんだなぁ 先生との話を終えて、教室に戻ると 「甲斐…もしかして、待っててくれたの?」 「いつも、東雲と帰ってたんだろ?昨日の今日だし、1人は心配だからな」 「そんなに毎日、俺ばかり事故には遭わないよ」 「そりゃそうだが…東雲も心配そうだったしな」 「そっか…でも、やっぱシュウに先に帰っててもらって正解だったな。伝言ありがとう」 そうして、甲斐と共に学校を出る 「甲斐の家、全然方向違うよね?」 「そんなの気にしなくていいよ。俺は、1日でも穂積と学校帰りに話が出来て、ラッキーなんだから」 甲斐… あれから、全然そういう話してこないし なんか、そういう気持ち消えたのかなとか、思ってた 「あ…反応に困ってる感じ?」 「え?あ…いや…」 「ふっ…ごめん。こういう話すると、穂積どうしたらいいのか考えて、普通の友達としての会話出来なくなるだろうから、あまり言わない様にしてたんだけど…ちょっと嬉しくて言葉に出しちゃった」 そりゃ…考えちゃうよ たった1日、一緒に帰れただけで、そんなに喜ばれたら… 俺は、全然その気持ちに応えれてないから 「ほらほら…穂積が悪い訳じゃないんだから。俺が勝手に好きになったんだからさ」 「それは…そうだろうけど……甲斐…俺と友達でいいの?一緒に居て…友達で…」 「もちろん!俺の勝手な気持ち聞いても、気味悪がんないで、友達で居てくれて嬉しいんだから」 「気味悪いだなんて!そんなの…思う訳ないよ…」 「うん。ありがと」 嬉しいけど 同じ気持ちではないから なのに、今まで通り友達でいいのかな 「傍に居るの…無理とか思ったら、全然…言ってね?」 「……ふっ…そういう…優しいとこ、ほんと好き。でも…皆に優し過ぎて、ちょっと心配だな」 「~~っ…あっ…ありがとう」 「たまには、自分の事も甘やかしてあげて欲しいんだけどな…穂積は、すぐに誰かの事を考えちゃうから」 違うよ、甲斐 俺は、散々皆に甘やかされてる 家族にも、友達にも 心配かける事が多い分 他の人よりも、見てもらって、考えてもらって 俺が考えられる事は僅かで 俺に出来る事なんて、もっと僅かな事で それでも、俺を思ってくれてる人達に、何が出来るか、考えずにはいられないよ ありがとうって感謝するだけでも 思わずには、いられないよ 「甲斐…俺は、甲斐が思うより、ずっと甘やかされてる。それに…誰かの事を思えるのは、嬉しい事だよ」 そろそろ家が近付いてきた所で 俺がそう言うと… 「っ…甲斐?」 甲斐が…抱き付いてきた こんな所で… 甲斐?

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