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葵ちゃん…いい子だった?
「ごめん…少しだけ…」
「うん…」
俺は…
どうするのが正解なんだろう
「……穂積…」
囁く様に…
甲斐が呟く
「甲斐…」
なんて言ってあげればいい?
何も言わない方がいい?
結局、そのまましばらくすると…
「ごめん…ありがとう穂積」
そう言って離れた甲斐の
俯いた顔は…
ちょっと目…赤い?
「うん…」
甲斐…泣いた?
やっぱり一緒に居るの辛いの?
「じゃあ、また明日な」
「…甲斐…途中まで…送ってく?」
「ははっ…それじゃ意味ないじゃん。じゃな」
大和…
分かんないよ
こういう時、大和ならどうするの?
明日も、いつも通り笑ってていいの?
ガチャ
「ただいま~」
ダダダダ…
ガチャ
「ユウ!お帰り!」
「四葉、ただいま。遅くなって、ごめんな?」
「シュウ君来てくれたから、大丈夫!」
「うん」
「ユウ、ユウ、ちゅう!」
「ん…」
ちゅっと、ほっぺにちゅうしてくれる
「ユウ…ぎゅ~~っ!」
「ん、四葉…ぎゅ~~っ」
いつでも元気な四葉は
いつも元気をくれる
「ん?……ん?!」
「ん?四葉?」
「ユウ!この匂い!先生とお話だったんじゃないの?!」
あ…
凄いな、四葉
「先生とお話だったよ。お話終わってから、昨日怪我したばかりで心配だって、友達が送ってくれたんだよ」
「……ふ~~ん…」
なんか…
機嫌悪いな
「シュウ君とこ、行こ?」
「うん」
良かった
四葉に手を引かれながら、リビングへと向かう
キッチンでは、例のごとくシュウが料理をしてくれている
「シュウ、ごめん。俺も着替えたら、すぐに手伝う」
「大丈夫…ユウ、休んでて…」
「とりあえず、着替えて来るね」
自分の部屋へと向かうと
やっぱ、階段の上り下りになると痛いな
他は、たいして気になんないけど
なんか母さん…落ち着いたら警察がとか言ってたな
警察に…
言える事何も覚えてないけど
健康な中学生も
毎日悩む事は沢山あるんだな
制服とネクタイを掛け
シャツを脱ぎ
「いっ…つっ…」
なるほど…
右足に体重かけるのダメだ
制服のズボンも掛けて
あれ?
俺の部屋着…
母さん、洗濯に持ってった?
時々やるんだよなぁ
じゃあ…新しいのっと…
………甲斐…
1人で泣いてないかな…
あんな風に
急に抱き締めたくなるんだ
きっと甲斐だって
あんな場所でって思ってる
それでも…
そんな風に思ってくれる気持ち…
ちゃんとした告白って言うか…
なんか、流れで聞いちゃったみたいになったから…
ちゃんと…話した方がいいのかな
大和に教わった…優しいの意味…
「ぅわっ!」
考え事してたら
右足痛いの忘れてた
ドテ~ン!
そんな格好で、部屋着のズボンに左足から通そうとかしたら
痛みもあるけど
今、右足にそんな力ありませんとでも、言われたかの様に
ふにゃっとなって、転んでしまった
案の定、バタバタと聞こえてくる
マズイ
急いで、転んだままの状態で、足を突っ込み、ズボンを履く
何故なら、上半身裸、下半身パンツのみだから
四葉に、そんな姿見せられない
ガチャ
「ユウ!」
「ユウ…大丈夫?」
「大丈夫…ちょっと…バランス崩して転んだだけ」
間に合った
パンツ一丁の兄の姿は回避された
「ユウ、転んだの?!どこ痛くしたの?!」
「全然大丈夫」
そう言って、起き上がろうとすると
「待って…念のため、ゆっくり…」
そう言って、シュウが支えながら
ゆっくりと、体を起こしてくれる
「ありがと」
「ユウ!手とか足とか捻ってない?頭とか、お尻打ってない?救急車いらない?」
「ふっ…四葉、凄いね。でも大丈夫。何ともない」
「ユウ……」
四葉が、チラリとシュウを見る
なんだ?
「足…大丈夫?」
あ…そっか
シュウには秘密って言ったから
「実は、ちょっと痛いのと…片足だと、上手くバランス取れないみたい」
「足…痛いのか?」
「足首が少しね。けど、気を付けてれば平気だよ」
「……ユウは…部屋で休んでて」
「え?いや…そこまで重症じゃないよ」
「ダメ…階段歩かないで…」
「……うん…分かった」
シュウに手伝ってもらって、ベッドに座る
結局バレちゃった
やっぱ俺、嘘とか隠し事の才能無し
結局、シュウはご飯支度へと戻り
四葉が傍に残ってくれた
「はい!ユウ、バンザイ!」
「ふっ…四葉、痛いのは足なんだから、1人で着れるよ」
「いいの!四葉が着させてあげるの!」
「はいはい。ありがとう」
俺は、一番下だったり、独りっ子だった事がないから、分からないけど
一番下だと、自分の下が欲しいって思うのかな
「四葉、弟か妹が欲しかった?」
ちょこんと、俺の隣に座った四葉に聞いてみる
「う~~ん…時々欲しい」
「え?ふふっ…時々欲しくなるの?」
「うん。四葉、末っ子だから、大和もユウも凄く可愛いがってくれるでしょ?おまけに、朔兄とシュウ君も可愛いがってくれるでしょ?」
末っ子じゃなくたって
四葉は、可愛いから、可愛いがられてたと思うけどね
「おまけにおまけに、皆全員、イケメンと超絶イケメンでしょ?」
「ははっ…そうなの?俺も入れてくれてるの?」
「ユウはイケメンだよ?ただ、可愛いオーラが、それをぼやかしちゃうのと、傍に超絶イケメンが居るから、目立たないだけ」
「そ?ありがと」
四葉の頭ん中、どうなってんだろ?
妄想が…
あ、そっか
漫画描くんだから、常に妄想してんのか
「でもね、たま~に、お姉ちゃんになって、大和とかユウみたいに、下の子に優しくして、お世話したくなる」
「…蓮は…いい弟だった?」
「うん!突然できたお姉ちゃんのお部屋来て、全然怖がらないで、四葉の絵見てたよ!」
「そっか。良かった」
蓮は、お兄ちゃんだ
お姉ちゃんができて、嬉しいって思ったかな
「蓮ね、凄くいい子」
「そう?」
「蓮になったユウに、シュウ君が、ほんとに全然ユウの事知らないの?って…ちょっと問い詰めるみたいにしたらね…ごめんなさいって。頑張ってユウの事思い出すって…一人ぼっちで凄く怖いのにね…シュウ君とかユウの為に頑張るって言ってた」
「うん…」
大切な人…悲しませるのに、敏感なんだ
沢山辛い思いや、寂しい思い
周りにさせてきたから
「そんな風に言われたシュウ君とのキスも、全然嫌がらなかったし…ほんとに優しくて、いい子だったよ」
「そっか…そんな風に思えるなら、四葉はすっごくいいお姉ちゃんになれるね」
「ほんと?!でも、やっぱり末っ子がいいや。そんな風に思っても、四葉は蓮にしてあげれる事、あんまりなかったもん」
「四葉…」
四葉を抱き締める
「ユウ?」
「蓮には妹が居て、凄く仲が良かったけど…お兄ちゃん欲しかったなって、思ってたんだ」
「ユウ…覚えてるの?」
「うん。だから、少しの間だったけど、お姉ちゃんだったけど、一人ぼっちの世界で出逢えたお姉ちゃん…凄く優しくしてくれて、嬉しかったと思うよ」
葵にも、結構色々手伝ってもらったり
兄ちゃんなのに、いつも心配されてたけど
やっぱり、お姉ちゃんではなかったから
「蓮の妹も…覚えてる?」
「うん…葵って言うんだ。花の名前なんだ」
「葵…ちゃん……いい子だった?」
「うん…凄くいい子だった」
「……四葉より…ずっといい子だった?」
「……え?」
四葉の体を離して、顔を見る
元気な四葉が…
凄く不安そう!
「ユウ…時々思い出したら…葵ちゃんの方が…良かったとか…」
「思わない!四葉…思わないよ!」
「四葉…いっぱい我が儘言うから…~~っ…あんまり…っ…いい妹じゃないっ…」
「四葉…何言ってんの…」
もっかい四葉を抱き締める
いつも元気いっぱいで、自信満々の四葉が
そんな風に考えるなんて、思わなかった
「四葉…四葉は、いい妹だよ。こんな、頼りない兄ちゃんの事、凄く好きになってくれて…いつでも元気いっぱいくれて…可愛いくて、可愛いくて…俺が四葉の事、大好きなの分かんない?」
「分かっ…るっ…けどっ……もっと…いい妹…知ってたらっ…」
「あのね…蓮の中では、葵が最高の妹だった。でも、俺の中では四葉が、最高の妹だよ」
だって四葉…
今の俺と、毎日毎日一緒に生きてきただろ?
それは、蓮じゃないよ
「~~っ…ほんと?」
「ほんと。我が儘も、全部可愛い。可愛い四葉が大切で、大好き」
「四葉もユウ大好き!ユウと大和の妹で嬉しいの!ついでに、朔兄とシュウ君の妹みたいで嬉しいの!四葉…このままでも、ユウに嫌われない?」
「嫌いになんてならないよ。そのうち四葉が、兄ちゃんウザいって離れてって、俺は泣くんだから」
泣く…
その時が来たら
絶対泣いちゃう
「そんな事言わないもん…ユウ…ずっとずっと仲良しだもん」
「うん…四葉が、そう思ってくれてる間は、ずっと仲良しだよ」
「ユウ…」
四葉が、ぎゅっと俺の服を引っ張って、見上げる
これは…
「おいで…四葉」
「ユウ…足痛くない?」
「座ってるから、大丈夫」
「ユウ~~」
四葉が、俺の膝の上乗っかって、抱き付いてきた
いつも寂しいの頑張って、元気いっぱいにしてくれてるんだよね
他の妹の名前なんて出して、不安にさせてごめんね
珍しく泣いてしまった四葉が泣き止むまで
そうして、四葉を抱き締めてあげた
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