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夢の真相は…

「お待たせ致しました。デザートプレートのお客様」 「はい」 「こちら、コーヒーフロートになります」 店員さんが去って行くと… 「マジでお前、それ食えんの?」 朔が、俺のデザートプレートを凝視している 「食えるけど?何?見たら食いたくなった?」 「逆だわ!見ただけで、コーヒーフロートも自信なくなってきたわ!」 甘い物が苦手なんて だいぶ人生の楽しみ手放してんな デザートプレートの中から コーヒービーンズらしき物が乗ってる、ビターフィナンシェを取り出す 紙ナプキンを取り、その上に乗っけて朔の方へと避ける 「何だ?これ」 「ビターフィナンシェ」 「いや…なんで、こっちによこすんだよ?」 「可哀想だから、お前に分けてやる」 「絶対苦手なだけだろが…」 なんで、甘い物を求めて来てんのに ビターなんて、甘さ控えめな物を混ぜるんだ? 甘さ控えめ希望なら、こんなプレート頼まないだろ 「お前さ…未だにユウと四葉に隠してんの?」 「何を…」 「甘い物、めちゃくちゃ好きな事…」 「隠してる訳じゃない。わざわざ聞かれないから、答えてないだけだ」 「嘘つけ…ポッキー2箱余裕でいけんのに、何本か食ったら要らないとか言ってんだろが」 「それは、兄として遠慮してるだけだ」 俺がバクバク食べたら、ユウと四葉の分が減るだろ 俺は、何本かしか食べれないってインプットしとけば、気を遣わずに残りを2人で食べれるだろ 「ケーキだって、2、3個いけるくせに、1個でもう無理とか、絶対…んむっ?!」 思いっきり甘そうな部分をスプーンに乗せて 朔の口ん中に入れてやる 「旨いだろ?キャラメルソースの付いてる生クリームだ。特別に分けてあげよう」 真っ青な顔になった後 馬鹿が、なんとか飲み込んだ 「い…要らねぇよ!俺を殺す気か?!」 「は?俺が1番楽しみにしてた生クリーム、分けてやったんだぞ?感謝しろ」 「誰も欲しいなんて言ってねぇよ!」 「…っそ。じゃあ、もうやんねぇ」 「くっそ!普通のコーヒー頼んどきゃ良かった…」 生クリーム1口で、大ダメージ ウケるわ~ ほんとに顔色悪そうだもんな ん? 朔の口の端に、生クリームが残ってる ぶつぶつ文句言って、口動かしてんのに、気付かないのか スプーンで掬って、残りを返してもらい口に入れる 「あ?何?」 「生クリーム、お前が残してたから返してもらった」 「………は……はあ?!」 馬鹿が、ようやく状況把握出来た様で 真っ青だった顔が、真っ赤になっていく 面白いな 近くに座ってた女子2人が 目にハートを浮かべて見ている 四葉の仲間か にこりと笑って手を振ると とても嬉しそうな顔をする 四葉も、友達と出掛けるようになったら あんな感じで、常に男友達の客を見付けては観察するんだろな 「ふっ…」 いや… あんなに大人しく観察してないか もっと興奮して、盗撮してるかもしんないな 「……知り合いなのか?」 「…あ?」 朔の方を見ると さっきの女子2人の方を、ちらりと見る 「全然?」 「は?じゃあ、なんで笑顔で手振ってんだよ?」 「なんでって…そうしたら喜ぶと思ったから」 「はあ?!馬鹿じゃねぇの?!お前…学校以外でも、そんな事してんのかよ?」 「…別に…何処だからとか、考えた事ないけど?」 なんか、めちゃくちゃ不機嫌そうだな まあ、当たり前か ちょっと遊び過ぎたか 「そんなんだからお前……」 「?…何?」 何かを言いかけて止めた 何だ? 「……別に」 「…あっそ」 「お前…今日この後、何か予定あんの?」 「ん~…何すっかなぁ…」 「予定ないなら、俺ん家来い」 「?…別にいいけど、なんで?」 「いいから、食ったら帰るぞ」 言われなくたって、食ったら帰るさ 何だ? 急にちょっと、真面目な顔しちゃって 満腹… 「食べ過ぎた」 「だろうな。俺ですら満腹なんだから。お前の体の、何処にあのプレートに乗っかってた物達は消えてったんだ?」 「後悔なんてしてない…あれを残すなんて、心残り過ぎる」 「お前、今日死ぬの?どんだけ必死こいて食ってんだよ?」 うるさい 満腹で気持ち悪いのに、あれこれ言うな 電車の揺れも気持ち悪い どっちみち、こんなんじゃ家には帰れない 朔んとこで、落ち着かせてからだ 「あれ?父さんも母さんも、買い物か?えっと…胃薬…胃薬……」 誰も居ない東雲家で、2人して胃薬を服用 そして、朔の部屋でダウン 「大丈夫か?」 「話し掛けんな…」 「全然大丈夫じゃなさそうだな…ま、薬飲んで寝たらマシになるだろ」 「……寝て…いいのか?…なんか…用事あったんじゃないのか?」 なんかもう… 眠くなってきた 「用事は……お前を…」 お前を…? 聞き取れないまま 俺は眠りに就いてしまった 予想を遥かに超えた速さで寝たな まあ、満腹で気持ち悪いのもあるんだろが 家族の前では頼れる兄ちゃん 知らない奴らの前では、優しいイケメン 演じてる事すら忘れて 自分が疲れてる事にも気付かない 「す~…す~…」 「ふっ…気持ち良さそうに寝やがって…」 大和の顔にかかった髪を、耳にかけてやると 「ん…ん~…」 布団の中に潜った 気持ち悪いのに、潜ったりしたら吐くんじゃねぇの? なんで、帰ろうとしたのかな クラスの奴らだって分かったから? いつか怒ってた、クラスの奴らを見て 不快な気持ちになったのか? けど、これからスイーツって知ってんのに帰るとか… そんなに不快か? なんか、虫の居所が悪かったのか? ん? 「ふっ……んっ…はっ……」 なんか…息荒い? 布団を剥がすと 大和が、苦しそうにしてた 「だろうな…おら、ちゃんと戻って来い」 大和の体を伸ばして、顔を枕に戻すと 「ん…」 気持ち良さそうに眠り始める 「お前のせいで、俺も胃もたれしてんだぞ?」 ほっぺをつついてやると 「ふっ……朔…馬鹿だから…」 「は?!馬鹿じゃねぇし!」 って…寝言か… 何の夢見てんだ? 俺が、何してる夢だよ? すぐ馬鹿馬鹿言いやがって 「朔は頭いい…朔は天才…朔凄い!」 そういう夢見やがれ 大和に暗示かける様に言ってやると 「ん……ん?」 ん?じゃねぇんだよ 俺が素晴らしい夢見やがれ 「朔が居て良かった……朔…大好き」 何言ってんだ?俺… 「…朔……居て…」 そうそう…良かっただよ、ほれ 「……朔…朔……なんで…」 なんで? 「……そんなに…触らせないで…」 触らせないで? 何の夢だよ 「朔……」 なんか…辛そうなんですけど… 「おい…夢だぞ」 「…っ…なんでっ……皆…朔……触らないで…」 え? 皆… 触らないで? ……あっ…あれか 本屋で、あいつら…俺を連れ出そうとしてた時か そんなん夢で見る程、嫌だったのか? 前は、自分が抱かなきゃなんないから、他の奴らに触らせんなってキレてたけど… 今は、あの話無くなった訳だし… でも、まあ… 「朔っ…」 「もう触られてない…大丈夫だ」 そう言って、大和の頭撫でてやると 「……ん」 ちょっと涙出ちゃってんじゃん 「泣くなよ…」 目尻の辺りを拭うと… 「……朔…泣いて…ない?」 は? 泣いてんのは、お前ですけど? 「泣いてない」 「…ん…良かった…」 だから… この前から、何なんだ? ケツに挿れられるってなった時は、いっぱい過ぎて泣いたけど あと、そんなに大和の前で、泣いた事ないぞ? 朔って言ってるんだから さっくんだった時じゃないし ……………… 「………大和っ…助けてっ…」 「…朔?」 「っ…助けてっ……大和っ…」 「朔……何処……」 この前の先輩の時の事思い出してんのか? あん時だって、泣いてねぇぞ? 「……やめろ…朔から…離れろ」 え… 「……許さない…から…」 何の夢… 「…絶対……顔も…名前も……」 怖いんですけど… 夢で…いいんだよな 「大和…もう大丈夫だから…」 「…~~~っ…朔っ…」 「ん……もう大丈夫だ…」 「っ……もっと…早く……~~~っ…ごめんっ…」 「大丈夫…大丈夫だから……」 「ごめっ……朔っ…何…された……」 もっと早く…見付けてたら? ごめん…手遅れだった? 何された?って… 聞く様な状況は…… 「……大和…やっぱ、あの時俺…何かされてたんだろ?」 「…っ…朔っ…」 「それで……未だに夢で泣く位お前…苦しんでんのに…俺…何も知らねぇんだけど…」 「……っ……っ…」 「後で説教だからな……けど、今は…ゆっくり寝ろ」 何で俺の事で、俺じゃなくてお前が苦しまなきゃなんねぇんだよ 馬鹿はお前だ… 俺にまで、優しい兄ちゃんしてんじゃねぇよ 泣きじゃくる大和を抱き締めて 俺も、いつの間にか眠りに落ちていた

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