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キス…前より気持ちいい

「ユウ、おはよう」 「…おはよう、シュウ」 ヤバい なんか、シュウの顔笑って見れない 今日もきっと帰りは…… 朝は…俺と居ていいのかな ほんとは、朝も一緒に居たいのに 俺に気を遣ってとか…… けど それを聞く勇気…ない 「ユウ…」 「っ…何?」 「今日…帰り…」 来た… 「一緒に帰っていい?」 「………え?」 「急に勝手な事して…都合良過ぎると思うけど……別に聞きたくないかもしれないけど、話…」 「聞きたい!」 「ユウ…」 「ちゃんと……ちゃんとシュウの口から聞きたい」 見たものは、ほんとで 事実は知ってしまってるけど あんな、こそこそ覗いた一部分だけじゃなくて ちゃんと…シュウから… 「うん…ちゃんと話す」 「うん……一緒に帰って…俺の家…来る?」 「ユウが、そうしていいなら…」 「いい…」 「うん…じゃあ、行く」 何…話されるんだろう やっぱりちゃんと考え直して、彼女と付き合う事にしたよって…言うのかな それは、俺が望んでた事 俺じゃなくて、ちゃんとシュウの事を好きな人 これで、俺達は幼馴染みのままで居られる 凄く嬉しいはずなんだ 「穂積!」 「おはよう…ちょっ…何?」 教室入った途端に、昨日俺を連れ出した奴らに、教室の隅に引っ張って連れてかれる 「ごめん、穂積…」 「え?何が?」 「昨日さ、お前…東雲に対して、なんか変な態度取ってたから…俺達がアレ見せちゃったせいだよなと思って…」 「ああ…」 そうだけど… それだけじゃなくて ってか、変な態度って…シュウも思ってたのかな それで、ちゃんと話す気になったのかな 「東雲にも言っといたから」 「……え?シュウに…何を?」 「だから、俺達が昼休みに穂積の事、連れ出して見せてしまったせいだって…」 「え?…シュウに…」 「だから、悪かったって。東雲が何かした訳じゃないから、気にしないでくれって、言っといたから」 それって… じゃあ、シュウ… 俺が、シュウと彼女のキスしたりしてるとこ…見てたって知ってて… そんなの…他の誰かに 見られたくなんてないよな まして、俺になんて… 怒っていいのに 覗く方が悪いのに 勝手な事してって… シュウの勝手なんだから、謝る必要ないのに 俺は、シュウの彼女じゃない シュウには気持ち応えられないって 言ったんだから そんな奴の為に、シュウが気を遣う必要なんてない 俺は、同じ気持ちになれなくて 困ってたんだから 久しぶりのシュウの訪問に 四葉は喜ぶどころか、激おこだった なんとか四葉を落ち着かせ、シュウを夕食作りへと引っ張る こんなんじゃ撮影会も出来ないと 夕食後も、四葉のシュウへの説教は続く 四葉に敵う者など居ないので シュウは、ただ大人しく話を聞いている 大和が帰って来て なんだか、大和にも興奮気味に話して 父さんと母さんが帰って来て いつもの様に、シュウと俺の部屋へと向かう 今日は、俺と話す為に彼女と帰るの断って来たのかな ほんとは、今日も彼女と帰るの楽しみにしてたのかな 俺の部屋のベッドに、2人して腰掛ける シュウと2人の沈黙なんて、それが自然で心地好くすらあったのに 今は…重い 「シュウ…彼女出来たんだな?」 「……うん」 堪えられずに、自分から話し出すと ちょうど、何か言いかけたとこだった 「ごめん、俺…クラスの奴らと……その…シュウが……彼女と…」 あれ? なんか…いっぱいで、言葉が出てこない 「ユウ?」 「シュウが…彼女とさ……っキス…とか……見ちゃって……み…見られたくないよな…そんなの…」 見られたくないよな 俺も… そんなの見たくなかった 「そんなの見せて、ごめん」 「シュウが謝る事なんてないよ!俺達が、勝手にこそこそと覗いて……シュウの声…聞こえて…」 シュウの…声… 優しそうな声 少し苦しそうだけど… きっと、気持ちいいの声 あれから…もっと気持ちいい事したのかな 皆が羨ましいって思う先輩と 凄く…凄く… 「ユウ…先輩と…」 「に…似合ってたよ!」 「…え?」 「お似合いだった!イケメンと、綺麗な先輩…良かったな?ちゃんとシュウの事好きになってくれる人に出会えて……皆が羨ましいって思う様な人と付き合えて…」 笑わなきゃ シュウは、俺が喜ぶと思ってる 俺が望んでた事だから 「ユウ…話聞いて…俺、先輩の事…」 「いいから!」 「…え?」 「彼女出来たんだって、教えてくれるだけで大丈夫!そしたら、帰り一緒に帰れないのも…俺の家来ないのも…分かるから。分かったから…もう、いちいち俺に言わなくて、大丈夫だから!」 聞きたくない シュウが先輩の事……好き……とか言うの 聞きたくない なんで… 四葉に感化されたから? 自分だけのものだと思ってた? 「ユウ…違う」 「何が?!」 なんで、こんなイライラするの なんで、こんな泣きそうなの なんで俺…こんな嫌な奴になってるの シュウが…びっくりしてる 「ごめん…何?違うって?」 「……俺…先輩の事…好きじゃないんだ」 「っ!」 好き…… え?……じゃない? 「え?」 「好きじゃないし…先輩と話し合って、別れたんだ」 「……え?…え?!…別れたって…だって…」 まだ…何日? ってか、あんなに羨ましいって思われる彼女出来たのに… なんで… 「ユウ…ちゃんと話したい。けど…ユウが聞きたくないって言うなら、話さない」 聞きたいって呼んでおいて俺… 「……ごめん…ちゃんと聞く」 「うん…」 シュウは、先輩に告白された時の事から どうして付き合ってみようって、思ったのか 先輩が、どんな感じの人で どうして別れる事になったのか ゆっくり… 思い返しながら、話してくれた 「だから…ユウにとっては、安心出来る事だったのかもしれないけど……ごめん…やっぱり俺…ユウ以外を、好きにはなれないみたいだ」 ほんとに、申し訳なさそうにシュウが言う 当たり前だ 俺の言動からして、そう思って当然だ 「けど…今までと同じ。ユウが俺の気持ちに応える必要はないし…ユウに好きって言っといて、こんな事した俺と…一緒に居たくないって言うなら、俺は…」 「~~~っ…居るっ!」 思いっきりシュウに抱き付く 「ユウ…?」 「俺の事、好きでいていいから…傍に居て…」 「ユウの気持ち…振り回してばっかりだよ…」 「いい…~~~っ…シュウが居てくれるなら…何でもいいっ…」 「ユウ……ありがとう」 そう言って、俺を抱き締めてくれた 俺には あの先輩みたいに綺麗な顔も、髪も、体も無い なのに、俺を選んでくれる あの先輩より 俺の方を好きだって言ってくれる 「っ…シュウ…」 「ん…」 「俺の事…好き?」 「ん…ごめん」 「っ…謝らなくて…いいから……ちゃんと言って」 「ユウ…」 おかしい 言われて困るのに 言ってとか… だけど、今聞きたい 「ユウ…好き……ユウだけ……ユウが…好きなんだ」 「~~~っ…うん…」 嬉しいって思ってしまう シュウと同じだなんて思えないのに なんで…こんなに嬉しいの… 「…シュウ……キスして欲しい」 「……えっ?」 何言ってんの?俺… 分かんない 自分で自分の気持ちが 分からない 「……いいの?」 「うん…して…んっ……んっんっ…」 気持ちいい 俺だけを好きなシュウが 好きって気持ち込めて 俺に キスしてる 俺が……他の誰が見ても あの先輩に勝てる要素なんて1つも無い なのに… シュウは、俺とキスして 大切そうに見つめてくる 「ユウ…倒していい?」 「うん…」 シュウが、俺を後ろに倒して キスをしながら、髪や頬を撫でてくる 気持ちいい シュウに… こうしてもらうの気持ちいい 「はぁっ…ユウ…」 「はっ…はぁっ……シュウ…」 何? 苦しいし、力入んない 言葉が出ないまま、シュウの顔を見ると 「~~~っ!」 ガバッと上から俺に、抱き付いてきた 「…シュウ?」 「っ…ごめん…ちょっと……喋んないで…動かないで…」 「…うん」 何? どうしたの? 彼女と別れたばかりで こんな事してるから? やっぱり、男って事確認しちゃったから? 先輩の体のが… 絶対触り心地もいい… 「……ごめん…ありがとう」 しばらく、抱き付いたまま動かなかったシュウが、俺の上から退ける 「…ううん…俺も、突然キスしてなんて言ったから…ごめん。彼女と別れたばかりなのに、こんな 事させて…」 「それは…関係なくて…」 「え?」 「~~っ…ちょっと……ユウが予想以上の反応見せてくれたから……無理矢理…色んな事しそうになっちゃって…落ち着かせたかっただけ…」 予想以上の反応? どれの事? キスしてって言った事? 「よく分かんないけど……シュウのキス…前より気持ちいい」 「っ!……そ…なの?」 「うん…シュウ…上手くなった?」 先輩と…付き合ったから? 「ちっ…違う!前と同じ様にしかしてない…」 「……そうなの?」 前も、気持ち良かったけど なんだろ… なんか前とは違ってて… 「……ユウ…なんでキスして欲しかったの?」 「…なんで…か……自分でも、よく分からない」 「…そう……教えてくれて、ありがと」 「うん…?」 教えてって、何を? キスが、前より気持ちいいって事? なんでキスしたくなったか、分からないって事? 俺自身が、俺の事分かってないけど 何故だか、シュウが嬉しそうな顔してるから シュウの顔見たら とりあえず俺も、嬉しくなった

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