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好きって言われると

あれから… なんだか、おかしい 別に、今まで通りの生活してるんだけど 概ね普通に出来てるんだけど 不意に… 胸の奥がぎゅ~~~ってする事があって あの感覚に襲われる前に、何とか気を逸らして 「はぁ…」 疲れる 「どうしたの?悩み事?」 「甲斐…ううん…悩み事って訳じゃないんだけど……なんか…自分で自分がよく分かんない」 「え?」 だよね… 「お~い!穂積が、なんか人生に迷ってるぞ~」 「どうしたどうした?」 「なんか、自分で自分が分かんないとか言ってるぞ」 「お~!それは危険だな」 危険? そうなの? 「皆は、自分の事分かんなくなる事ない?」 「分かんなくなるって、具体的にどんなだよ?」 「どんなって……自分では別に気にしてないのに……時々…体の凄く奥の方が…ぎゅ~~~ってなる感じがする」 「……へ?」 「位置的には、心臓の辺りだけど、不整脈とか、心臓が悪いのとは違うんだ。誰か、こういう感じ分かる奴居ない?」 居る訳ないか シュウは、あまり言葉を交わさなくても、何となく通じ合えるから、分かってくれたんだ 「穂積…それって…」 「だ…誰に?!」 「え?」 なんで… 急に甲斐が必死に… 「穂積、誰と居る時そうなるの?!」 「そうよ!そこが重要よ!」 「え?」 いつの間に女子達まで… 「誰と…」 誰か特定の人と居る時だったかな 「じゃあ、誰を見てる時?!」 「見てる?」 ってか…なんで女子達、そんな嬉しそうなの? 「無自覚かぁ…まあ、穂積だしなぁ」 「これから、ゆっくり分かってけばいいさ」 「きゃ~~~!穂積君、穂積君!誰か分かったら、教えてね!」 「…え?……うん」 で? 結局、何なのかは教えてくんないの? でも、なんだか皆嬉しそう 悪い事ではなさそう 甲斐だけが、なんか機嫌悪そうだけど… 「ユウ…ユウ」 「…あ、何?」 「なんか、考え事?ぼ~っとしてる」 「う~~ん…最近さ、あの、ぎゅ~~~ってのが、ちょいちょい出てくるから、皆に聞いてみたんだけど、なんかハッキリ教えてくんないんだよね」 「……え?皆に…聞いたんだ」 「うん…?」 え… なんか、シュウびっくりしてる 「あんまり人に聞く事じゃなかった?」 「いや……で…分かったの?」 「ううん…誰と居る時だの、ゆっくり分かってけばいいだのって……でも、なんか皆嬉しそうだったから、まあ、そんな深刻に考える事でもないのかなって」 「……ふっ…そう」 あ… シュウが困った様に笑う この笑顔…好きなんだよな 「ユウは、皆に大切にされてるね」 「そう…なのかな」 シュウが、こんな風に笑うの 見てる人は、きっと、そんなに多くない 「?何?」 「ううん…今日の晩ごはんは~…」 何も変わらない、いつもの日常 でも、少しずつ変わってきてるのは 俺が成長してるって証拠? 「四葉、あんまり本ばっかり見てたら、目悪くなるよ?」 「うん…でもね、これを途中で止める事なんて無理だから」 「まったく…宿題は?」 「もちろん完璧!」 四葉が新しく友達になった子達は 四葉と趣味が同じらしく しょっちゅう漫画の貸し借りをして まあ…お陰で俺達の撮影会は中断されてるから、ほっとしてるんだけど 「はぁ…」 「どうしたの?」 「なんか…四葉、今の友達になってから、あんまり俺に抱き付いて来たりしないじゃん?撮影会もしなくなったし…」 「……寂しい?」 「…こうやって、離れてくんだろなぁ…」 来年は中学生 当たり前と言えば当たり前だ 中学生の妹が、兄に抱き付いてる方が異常なんだから、今のうちに離れられて良かったんだ 「四葉に抱き付いて欲しいなら、言ってみたら?きっと喜んで抱き付いて来るよ」 「い…言う訳ないだろ?!別に…これでマトモになったからいいんだ。ただ、今までが、ちょっとくっ付き過ぎてたから…」 「ユウは、四葉が大好きだね」 「…うん。大和も四葉も…もちろん朔兄もシュウも」 ずっとこのままで居られる訳ないって分かってる だって、まず…大和と朔兄は、大学生になったら、きっと家を出る 四葉も中学生になったら、部活に入ったりするかもしれない 帰りだって、場合によっては、俺より遅くなる 「ユウは…うちと、ユウの家族が大切だからね」 「そんなの、俺だけじゃなく、シュウだって、皆だって思ってる事だろ?」 「うん…でも…誰よりも、今の家族の形が変わる事を望んでない」 「……え?」 「なのに俺は…それを変える様な事を言ってしまった。そして…ユウをずっと悩ませてる」 「シュウ…」 そんな風に…思ってたんだ 「ユウは優しいから考えるなって言っても、俺が傍に居ると考えてしまうから、どうしたって俺が言ってしまった事で、これからも悩ませてしまう」 「そんな…シュウが言ってくれた事…迷惑みたいに思ってないよ……そんな言い方しないでよ」 「ねぇ、ユウ……今、俺は…ユウの中で、どんな存在?」 「え?」 シュウが、凄く優しい目をして そっと頰に触れてくる ?! あ…これ… パッとシュウから目を逸らす きっと…ぎゅ~~~ってなる 「ユウ…どうして目を逸らすの?」 「だ…だって、また…ぎゅ~~~って…なりそう」 「俺に…触れられたから?」 「わっ…分かんない…」 誰と居る時? シュウが、頰からゆっくりと 髪の毛を耳にかける様にして、耳に触れる 「んっ…」 「俺を見てると、そうなるの?」 誰を見てる時? そりゃ… 1日の中で、2人で会ってる時間長いもん 他の誰より一緒に居るもん 必然的にシュウと居る時に、そうなる事多くなる……んじゃないの? シュウ…だから? 「ユウ…こっち見て」 シュウが、手を重ねてくる 今、シュウと目を合わせたら… 「ユウ…俺を…見て」 だけど… その声に…惹かれて… 「~~~っ」 「ユウ…今、ぎゅ~~~ってなってる?」 「~~~っ…なってるっ…」 「うん…俺も。だから…」 シュウが、ふわっと抱き締めてきた 「こうしたら…少し落ち着かない?」 「……落ち着く…かも…」 「うん…少し…こうしてよう?」 「うん…」 ぎゅ~~~って強かった感情が ふわふわと泡の様に消えていく 安心する 落ち着く シュウが優しく頭を撫でてくれる 気持ちいい もっと撫でて欲しい 「ん…ん…」 「ユウ?頭…嫌?」 「嫌じゃない…気持ちいい…」 「そっか…あと…して欲しい事は?」 して欲しい事… シュウにして欲しい事… なんだろう 気持ち良くて 少し頭がぼ~っとする 「…キス…して…」 あれ? なんでまた…こんな事言ってんだろ でも…嘘じゃない 「キス…していいの?」 「うん…」 シュウが、ゆっくりと俺の耳を包み込み 唇に触れてくる 初めての時は、パニックだった なんで、こんな事になっちゃったの?って けど、今は… 「はっ…んっ……んっ…はぁっ…」 シュウのキスが、気持ちいい 俺…キス好きなのかな 大和のキスも気持ち良かったし 「ユウ…はぁ…好き…」 「っ!…あ…~~~っ…」 「ユウ?」 「あ…はぁ…はぁ…だめ…」 あの…感覚が… 「や…やだ…」 「ユウ?」 シュウから離れて、くるりと後ろを向く 熱い… やだ… また、あれやんなきゃなんないなんて… なんで、こんな体になっちゃったの? 皆そうなの? でも、シュウも大和も、そんなしょっちゅうやってないよ? 俺…変だ 「…っ……っ…」 「ユウ…泣いてるの?」 「ふっ……うっ…」 「ごめん…ほんとはキス…嫌だった?」 「ちがっ…」 「じゃあ…好きって言われたのが…嫌だった?」 そうじゃない そうじゃなくて 「自分の…体…嫌っ…」 「ユウ……」 「なっ…なんでっ……こんな風に……っ…やだっ…」 「ユウ……」 シュウが、後ろから抱き締めてきて… ? 抱き締めてきたら… なんか…背中に硬い物が当たってる ポケットに何か入ってたの? 「ユウ……ユウだけじゃないよ」 「……え?」 シュウが…その硬い物…擦り付けてくる え? それ… 何かの物じゃなくて… もしかして、シュウのアソコ?! 「シュ…シュウ……それって…」 「ん…ユウと居たら…すぐにこうなる。いつも上手く収めたり、誤魔化したりしてるだけ。ユウはまだ、自分で上手くコントロール出来ないだけ」 「…そ…そうなの?」 シュウも… 大和も… 皆? 俺も、コントロール出来る様になるって事? 「ん…だから、大丈夫だし、悪い事じゃないよ」 「うん…」 「……ユウ…好き」 「ぁっ…や…やだ…」 「好きって言われると…反応する?」 「んっ…だ…だから……~っ…言わないで…」 「ユウ…」 シュウが、そのままぎゅ~~~っと抱き締めてきた 背中に…当たってる 「シュウ?」 「…ん」 「こ…このままで…いいの?」 「ん……しばらく、こうしてたら…きっと落ち着くから…」 「……そう」 シュウの、いつもより少し優しい声が なんだか、少し泣いてる様にも聞こえて だけど、今の俺に、人の事を気にしてる余裕なんてなくて ただただ、シュウの中で落ち着く事だけを考えていた

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