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キスしてる彼女は…

「朔兄…ユウが…好きだって伝えてくれた」 かっわいい2人の寝顔を、俺達に見られたとも知らずに シュウがユウの家から戻り、報告してくれた 可愛い奴め 昼頃、ユウと出掛けるらしい ユウとの初デートだ 見たい と、大和も思ってるはず と、いうわけで 俺達は、可愛い弟達を尾行中だ シュウの嬉しそうな顔と言ったら… あのシュウが、こんなに笑う事ある? って位笑ってる 可愛い過ぎる シュウ達が、ファーストフード店に入って行った あれ? この辺に確か… そうだそうだ いつか、大和の奴を連れてってやろうと思ってたんだ シュウ達が席に着くと 大和も店に入ろうとするのを、力ずくで引っ張り、目的の場所へと引きずってく お前の好きなもんがあんだよ 大人しく着いて来い 渋々、店に入った大和が 仕方なくメニューを見る メニュー見たって見なくたって、決まってるくせに こいつは、こういうとこでは絶対、海老フライ定食かハンバーグ定食なんだ けど、いつだったか皆で定食屋入った時 なんか、アジフライ定食とか頼みやがった お前、そんなん食った事ねぇだろが! って思いながら なんとなく、ユウ達の前で頼みづらいって思ってんのかな…と思った そんなん誰も気にしちゃいないのに ほんとに無駄な労力を使う奴だ 「お待たせしました。海老フライ定食のお客様」 「はい」 冷静な返事とは裏腹に うわぁ… って顔した だろうな お前の好みだろ? 前に来た時、この海老フライ定食見て 絶対好みだと思ったんだよ 「…ん…美味し…んっ……美味し…」 悪魔が、ただの可愛い奴になって食ってる 盛大に笑ってやった まだ苦しくて動きたくないのに シュウ達んとこ戻ったら… 居なくなってた 何故だ… 俺だって、そりゃショックさ けど、もう仕方ないだろが あんな旨そうに海老フライ食ったんだから、諦めろ 大人しく家で待つ事に決めた大和が アイス買ってくとか言い出した あんなに腹いっぱいだって言ってたくせに アイスは溶けるとか、訳分かんない事言ってる 結局 大和ん家だと、俺達が居る事がバレるので 俺の家で一休みしながら待つ事になった アイス… そんな、しっかりしたもん買ったんだ… 「何…やっぱ食いたいのか?」 「いや…よく、そんなもん入るなと…」 「だって、ほぼ液体だぞ」 その、嬉しそうな顔よ 「お前…アイスは、家でも食うの?」 「…皆が食べるならな」 「その、勝手に自分で作るルール生活、いい加減やめたら?」 「別に困ってないんだから、俺の勝手だろが」 いや… 困ってんだよ、お前の心も体もさ 気付いてないのは、お前の頭だけだ 「は~あ…馬鹿のせいで、しばらくする事ないし、少し寝るか」 アイスをペロリと食った大和が 俺のベッドにダイブする 「初デート…何処行ったんだろな」 「さぁな…どっかの食い意地張った奴のせいで、サッパリだ」 「へぇへぇ…悪かったですね」 大和のくせに そんなに本気で怒ってないのは やっぱ、あの海老フライ定食のお陰だろうな 「ってか、俺も腹いっぱい過ぎて、少し寝る。もっと、そっち行け」 「あ?お前は起きてろよ」 「何でだよ?!ここは俺のベッドだぞ!さっさと、そっち行け!」 「はぁ~?お前が寝ると狭いだろが…」 「だから、俺の!ベッドなの!」 言いながらも なんか、こいつ…すでにウトウトしてない? ゴロンと、壁側向くと そのまま動かなくなった え… 「大和?もう寝たのか?」 す~…す~… 「早っ!早過ぎだろ!」 まったく… 自分のベッドじゃねぇんだぞ 仕方なく、布団を掛ける 眠りたい… のに 腹いっぱい過ぎて逆に眠れない 「う~~…なんで、こいつ眠れてんだ…」 大和の髪の毛をクルクルしてやる 全然起きねぇし この触り心地いい髪の毛触ってたら なんか、ちょっと落ち着かないかな 指で梳いてみると お~…流石触り心地抜群 ん? サラサラと流れる髪から シャンプーの匂いがしてくる う~~ん… 匂いも嫌いじゃないし もうちょい顔近付けてみっか ふむ… こいつの髪に顔埋めたら なんだか落ち着くな これなら寝れそう… ベッドを提供する代わりに 寝心地のいいアイテムをゲットした俺は そのまま眠りに就いた あれ… なんか、いい匂い ふわふわ…触り心地いいな 髪の毛? 女の子? 俺、今彼女居たっけ? でも、誰か抱き締めてる 抱き締めて一緒に寝てんだから 彼女だよな 事後? まだ、この子も寝てる? 眠たい意識の中…少し体を触ってみる ん? 意外とガッシリしてんな 「ん~…」 あ…くるっとこっち向いた うん… この方が、ふわふわした髪の毛、撫でやすくていいね 「ん…」 撫でられて、気持ちいいの? 可愛い 頬の辺りにキスをする あ…なんか… そんな気になってきちゃった このまま…キスしていい? 「んっ…んっ?」 寝惚けてんの? 可愛い 俺もまだ…眠いんだけどさ 眠くても…スイッチは入るんだよ 「んっ…んんっ!」 ガシッと、俺の腕掴んできた 可愛い 「ふっ…かわい……え?」 そこで…初めて… 今キスしてる彼女の顔を見た 彼女の顔は… よく知ってる…男だった 「はぁっ…なっ……なっ…」 「え?…あれ?…大和?」 「この…馬鹿が!何寝惚けてんだよ?!」 「え?……ええ?!うっ…嘘だろ?!」 「この…馬鹿!」 「うわっ!」 思いっきり枕で殴られた そりゃ、そうだ むしろ、もっと殴ってもらいたいくらいだ なんちゅう事したの…俺… 「ご…ごめん、大和…」 「お前の頭どうなってんの?!沸いてんの?!病院行って来たら?!」 「俺だってショック受けてんだ…許せ」 「自業自得だろうが!お前のショックなんか知るか!」 そう言って、また、ゴロンと横になった クソが…とかブツブツ聞こえる まあ…そうだろな けど、俺だって、すげぇビックリした上に、すげぇショックだったんだからな まあ…自業自得だけど しばらくすると、静かになった お… もう怒り収まったのか? 随分早かったな まさか、静かに仕返し考えてんの? そ~っと、覗き込むと… す~…す~… 「…は?」 何… 寝てんの?!こいつ! たった今… あり得ない事起きたのに?! あんな怒ってたのに?! いや…お前こそ病院行きじゃね?! ってか… 寝惚けてだけど… 俺だけど… 間違ってキスされた相手…ここに居んのに 無防備過ぎないか? 「おい…いつもの警戒心は、どうした~?」 ツンツンと、つついてみるが 「ん……」 す~…す~… どんだけだよ そんなに眠かったの? そんだけ信用されてんの? 「お前…俺なら、お前に何も出来ないと思ってんな?」 もう一度ツンツンとすると 「ん~…」 と、仰向けになった 「あ~あ…そんな可愛い顔見せちゃって…」 ふにっと、ほっぺたを触ると 「ふふっ…うん…美味し…」 な~に食ってんだか 「嬉しそ…」 彼女には、見せてんのかな… 見せてなさそう ってか、彼女の前でも一瞬でも眠らなそう 「馬鹿だなぁ…もっと楽に生きろよ…」 ふわっと頭を撫でてやると 「んっ……朔?」 お?分かったか? 「…馬鹿だな…お前…」 そう言って、にっこり微笑んだ 「馬鹿は、お前だ…普段から、そうしてろっつ~の」 勝手に決めたルールの中で 勝手に窮屈に生きるから せめて、俺が傍に居る間は 俺しか知らないお前を いっぱい出してやる 「……勝手に…離れて悪かったな…一緒の高校…行くと思ってたんだよな?」 「ん……一緒…」 「ああ…相談…しないで決めて、悪かったな」 「朔んとこ……眠れる…から…」 「ただの安眠場所かよ」 俺の前で眠る大和は 幼い頃の大和のままで こんな幼いのが 頑張ってんのかと思うと 「もう少し…ゆっくり寝てけ」 大和を、抱き寄せて布団を掛ける 「ん…」 小さく丸まった大和が、俺の胸に収まる せめて、俺の前では 幼い子供のまま、ゆっくり寝ろ

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