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転校生

シュウと恋人同士になって なんだか、嬉しい様な、気恥ずかしい様な そんな関係になって、少しした頃 その人はやって来た 1番後ろだったはずの、俺の後ろに机があって 朝から教室はざわめいていた 「転校生を紹介する。深山(みやま) 陸」 そう言って先生が紹介した人は 「郁人兄ちゃん!」 思わず、そう叫びそうになるくらい 郁人兄ちゃんそっくりだった 俺の後ろの席に向かって歩いて来る 見れば見る程、そっくりだ ふと、視線が合う しまった 初対面なのに、凝視してしまった 「穂積、休み時間に校内案内してやれ」 「はい」 昼休み 「じゃあ、校内案内するね」 「よろしく…えっと…」 「穂積」 「よろしく、穂積」 笑い方も、なんか似てる気がする 意識しちゃって、そう見えるだけなのかも 「……で、ここが保健室」 「うん」 「……深山は、体弱いとかない?」 「え?特に…ないけど?」 「そっか。良かった」 なんとなく… 同類な気がしてしまう 「穂積は、体弱いのか?」 「う~ん…強くはない。から、時々俺は、お世話になるんだ。保健室」 「そうなのか…」 「あ、でも、病気とかじゃないよ。風邪引きやすいとか、車酔いしやすいとか…そんなん」 「そっか。実は俺の弟もさ、そんな感じなんだ。席近いんだし、なんかあったら言ってよ」 「ありがとう」 郁人兄ちゃんじゃないけと、優しい 優しくされると、益々郁人兄ちゃん思い出しちゃうな 「穂積ってさ…」 「うん」 「いつも皆の事、そんな風に、じっと見るの?」 「えっ?!違っ…ごめん!」 そんなに見てた?! 気を付けてるつもりだったのに 「いや…別にいいんだけどさ」 「よく似てる人…知ってて…」 「俺に?」 「うん…凄くよく似てるんだ。だから、つい見ちゃってるんだと思う。ごめん…」 「そっか。そういう事か。意味があるならいいんだけどさ、無意識でやってんなら、勘違いする奴とか居そうだから、一応言っとこうと思って」 ほっ… ヤバい奴だと思われなかった 初対面なのに、そんな見てたら、そりゃ気になるよな ん? 「勘違い?って?」 「え?だからさ、好意持ってるとか思われるかもしれないだろ?」 「好意?」 「好きとか、気になってるとか、アピールしてんのかなと…」 「好き…とか……って…え?!好きって、恋人的な好き?!」 「ふっ…穂積面白い。そりゃそうだろ。穂積モテそうだし」 「えっ?!」 穂積モテそうだし? 俺? モテそう?? 「ど、ど、ど…どの辺が?!」 「え?」 「俺がモテそうと言うのは、一体どんな所が?!」 「……穂積…ふっ…やっぱ面白い。そんなとこも、きっと好かれるとこだと思うよ」 「えっ?!そんなとこ?!どんなとこ?!」 「そんなとこだよ。俺ももう穂積のファンになった」 「えっ?!ファン?!」 郁人兄ちゃんに、そう言われてるみたいで なんかちょっと…照れる 「穂積は、なにか部活入ってるの?」 「いや…俺も妹が居るんだけど、俺が帰るまで1人で留守番してるから、早く帰ってあげなきゃなんだ」 「妹かぁ…何個下?」 「2つ。今小6」 「そっか。俺の弟は小5。いい兄ちゃんなんだな」 「……俺の上にも兄ちゃんが居て、その兄ちゃんは、凄く頼りになるんだけど…俺は全然。だけど、凄く懐いてくれてるんだ」 「へぇ…可愛いな」 「うん」 そんな風に思ってくれるなら きっと深山も、いい兄ちゃんだよ 「なぁ、聞いてもいい?」 「何?」 「俺に似てる人って、どんな人?友達?親戚?」 「ああ…えっと…」 なんて言えばいいんだ? 前世のよく一緒に入院してた兄ちゃん なんて言えない 「戦友…みたいな…」 「戦友?」 「うん…凄く…よくしてもらったんだ」 「ああ…今じゃなく、昔の知り合い?」 「うん」 凄く昔のね… 絶対敵わないって分かってる相手と 一緒に闘ってたんだ 「そっか。なんかさ、凄く大切な人なんだろなって思ったから…ごめん、初対面なのに」 「ううん…俺にとっては、ほんとによく似てるから、初対面って感じしないくらいなんだ」 「そんなに似てんだ」 「うん」 郁人兄ちゃんって、言いたくなる 今度は、お互い健康な心臓で良かったねって、言いたくなる 校内を案内して戻ると、あっという間に深山は、皆に囲まれて質問責めにあった まあ、転校生だし、話しやすいから仕方ないよな 声も…少し似てるかもな 「ユウ…帰ろ」 「うん」 誰かに話したい シュウなら、前世の話出来るけど また心配されるかもしれないしな… 「ユウ…転校生と仲いいんだね」 「…え?」 なんで… 今日、転校してきたのに 「昼休み…凄く仲良さそうに歩いてたから…」 「ああ…」 そういう事か また、何処からかシュウに情報が入ったのかと思った 「俺の後ろの席だからさ、先生に校内案内する様に言われたんだ」 「そっか…」 そっかって言ったシュウの顔が なんだか、あんまり納得出来てなさそうで 少し気になった 「ユウ…」 「シュウ?」 皆が帰って来て、俺の部屋に入るなり シュウが抱き付いてきた 「ユウ…ユウ…」 「んっ…んっ…」 そのままキスしてきた どうしたんだ? 「ユウ…」 「んっ…ちょっ……はっ…んんっ…」 「ユウ…」 「シュ…」 何何? どうしちゃったの? 少しの間 立ったまま、夢中でキスして… 「はっ…はぁ…はぁ…」 「……ごめん…突然…」 そう言って、抱き締めてきた 「シュウ…何かあった?」 「……何かあったって訳じゃないけど…」 「けど?」 「……その…転校生と話してるユウが……なんか…凄く嬉しそうに見えたから…少し…不安になった」 不安? そんなに嬉しそうだったんだ 郁人兄ちゃんと話してるみたいで、そんな顔になってたのかな 「シュウ…実はね…」 「ん…」 話すと不安になると思ったけど 話さなくても不安らしいので 郁人兄ちゃんの話をした 「そっか……それで…」 「うん。だから、深山がどうのって事じゃないんだ。ただ、凄く似てて、懐かしくなってた」 「話してくれて、ありがとう…少し…安心した」 「うん…不安にさせて、ごめん」 シュウが、ようやく体を離すと そっと頬を撫でてきた 「ユウ…蓮は…その人の事、好きだったの?」 「入院先の病院でしか会わなかったけど、同じ病気と闘った、頼れるお兄ちゃんだったんだ」 「うん…恋愛的な意味でとか…」 「それはないよ」 「そっか…良かった」 シュウ… そんな心配までしてたんだ 「蓮には、お兄ちゃん居なかったし、ほんとのお兄ちゃんみたいな存在だったんだ」 「うん……ユウ…好き」 そう言って また抱き付いてきた 「ん…大丈夫。そういう意味で好きなの、シュウだけ」 「うん…ごめん…すぐに色んな事気になって…」 「ううん。でも、言ってくれると助かる。言わないで、シュウに不安な思いさせときたくないから」 「ん…」 俺なんかより、ずっとモテるのに 俺なんかより、恋人居た事あって、色んな経験してて なのに、こんなにも不安になってる 「シュウ…今度、そういうとこ見て気になったら、声掛けていいよ」 「ユウに…嫌われたくない…」 「嫌わないよ」 「ユウに…余裕ないとこ見せたくないのに…」 「ふっ…なんだよ今更…俺達お互いに、カッコ悪いとこなんか、散々見てきたろ?そんなんで、嫌いになったりするかよ?」 「ん…」 そんなの分かってるのに それでも、そんな風に思ってくれるんだろな 「でも、シュウがそんな風に思ってくれるのは嬉しいよ」 「ほんとに?ウザいとか…情けないとか…」 「思わないよ。思ったって、そんなんで嫌いになんかならない」 「ユウ…」 「ん…大丈夫」 俺より大きなシュウが 抱き付いてるって言うか 離れたくないって、しがみ付いてるみたいで なんだか可愛くなってくる 「また、週末どっか遊びに行く?」 「うん…」 「じゃあ、何処行くか考えとこ?」 「うん…」 「この前は映画だったから、今度は、何処行こっか…」 「ユウとなら…何処だっていい」 シュウと同じ好きだけど 好きになったのが、シュウの方が早いから? それとも、そういう感情を、シュウはよく知ってるから? 俺より、ずっとずっと好きって気持ちが、大きい気がする 好きは、楽しくて嬉しいんだと思ってたけど シュウを見てると、そうじゃないんだって思う それでも、きっと… その気持ちを大切だって、思ってくれてるから 「じゃあ、ショッピングモールふらついて、本屋とか、ゲーセンとか適当に行こっか」 「うん…じゃあ、その中の店で、お昼ご飯…」 「そうだな」 幼馴染みで親友だけじゃない 恋人に…少しでも笑ってもらえる様に…

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