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40℃の大和
「……はぁ…んっ…ん~…」
なんか…聞こえる
「……はぁ~…だるっ…」
大和か
なんか、しっかりしてそう…
ん?
どっか行く…
「…って!」
「うわっ!」
ドテ~ン!
俺につまずいた大和が
上から降って来た
ガチャ
「大丈夫?!凄い音したよ?」
「ユウ…ちょっと…電気点けてくれ…」
「うん」
パッと電気が点くと
「はぁ…お前が居るの…忘れてた」
俺の上から、退けようとしてる大和が、そう言った
自分で呼び出しといて?
「大和も朔兄も大丈夫?」
「大丈夫だよ…起こしてごめんな」
「俺も大丈夫だ」
大和が、俺の上から退いて、ユウの頭なんか撫でている
撫でるなら、下敷きにした俺だろが!
「大和、熱は?」
「汗かいて目覚めたから、少し下がってると思うよ」
「そっか…」
「ん…おやすみ、ユウ」
「おやすみ…」
心配そうにしながらも、ユウが去ってくと
「おい…着替え出してくれ」
「おお…」
確かに、さっきみたいにおかしくないな
着替えを出すと、ちゃんと着替えてる
「洗濯機、入れて来るな」
「おお…」
ちゃんと自分で、水分摂ってるし
元々ユウみたいに、体弱くないし
案外早く治るのかも
なんて思って、再び大和と眠りに就き
ぐっすりと眠ってると
「……っ…っ…」
なんか…聞こえる…
「……はぁ……っ…んっ…はぁ…」
なんか…苦しそうだな
「…ん…っ……さむ…」
さむ?
あ…
「大和?寒いのか?」
「ん…」
「毛布掛けとくな」
「ん…ん…さむ……」
そんな寒いのか?
布団の中に手を入れて、大和の手を触ってみると…
「冷たっ!」
え?
めちゃくちゃ手…冷たい
そりゃ、寒いわ
「まだ、寒いか?」
「寒い…」
「大和…震えてんのか?」
「ん…」
震えてる
震える程寒いのか
「よし…そっち行って一緒に寝るから」
大和のベッドに上がり、少し大和を押しながら布団に入る
顔とかは熱いのに、足先もすげぇ冷たい
手を握って、足をくっ付けてやる
「少しはあったかいか?」
「ん…」
手と足を、スリスリしてやるけど
なかなか暖まらない
そうして
俺もウトウトしてきた頃
少しずつ、大和の震えが治まってきて
手足も、あったかくなってきた
良かった
これで少し寝れる
あんな震えてたら、大和も疲れただろ
少し寝ろ…
「…はぁ……はぁ…」
ん?
「くるしっ……はぁ…」
大和か?
「大和?起きたのか?」
「んっ…くるしっ…」
苦しい?
電気を点けてみると
「んっ…まぶしっ…」
「ああ…悪い」
少し暗くするけど…
なんか…
なんで、こいつ…
俺にしがみ付いてんだ?
「苦しいのか?」
「くるしっ……っ…うぅっ……くるしくてっ…つらいっ…」
げっ…
また泣き出した!
「よし、ちょっと熱計るぞ」
そう言って、ベッドから出ようとすると
「どっ…どこ…行くの?」
「は?体温計取るんだよ」
「んっ…」
体温計取ってる俺の服、ずっと掴んでるんだけど…
どうしたの?こいつ…
「ほれ、計ってみろ」
「ん…」
熱出て辛いから?
涙浮かべて、ウルウルしてる
「熱で辛いのか?」
「くるしい…しっ……っ…体…いたいしっ……うっ…」
「分かった、分かった。泣くな」
ピピッ
「どれどれ……マジか…」
40.3℃
「そりゃ、辛いわ」
「うっ……うっ…つらいっ…」
「そうだな。んっと~…6時間…そろそろ6時間だから、もういいや。薬飲め」
「んっ…薬…」
「そ。飲んだら熱下がって、楽になる」
「んっ…飲む…」
おお…
今度は機嫌悪くねぇ
なんなら、すげぇ素直
「飲めるなら、いっぱい飲んどけ」
「んっ…おいしっ…」
「ほ~か、ほ~か…ふぁ~…飲んだら寝るぞ」
「トイレ…」
「トイレ?行きたいのか?」
「んっ…」
1人では、行かせらんないよなぁ
階段下りれんのか?こいつ…
「よし、まず立つぞ。立てるか?」
「~っ…分かんないっ…」
何故泣く?!
「大丈夫だから。ちゃんと支えてやるから」
「うっ…っ…」
立たせてみると
なんだ、大丈夫そうじゃん
大丈夫なはずだけど
こいつ…
階段の下見てねぇ!
「おい、こっちじゃなく、階段見ろ」
「ん?」
「ん?じゃなくて、下。足元見ろって」
「ん…」
返事だけかよ!
2人で階段下りるだけで、歩きづらいのに
下見ないわ、ひっ付いてるわで
俺まで転げ落ちそうだ
「おら、さっさと行って来い」
「………」
「おい…服から手離せ」
「い…居なくなるつもりだろっ…」
「はあ?ここで待ってるから」
「うっ…嘘だ…はぁ…はぁ…出て来たら…俺っ…1人にするつもりだろっ…」
うわぁ…
今度は、性格の悪い幼児出て来た
「どうしたの?大和、トイレ?」
「あ、おばさん…」
「っ…朔が…意地悪するっ…トイレ…出たら…1人にするつもりだっ…」
「は?!んな事言ってねぇよ!」
「あら…大和、可愛くなっちゃって…ちゃんと朔君捕まえとくから、大丈夫よ」
「んっ…」
おばさんが、俺の腕を組むと
ようやくトイレへと入って行った
「大和、相当高い熱出てる?」
「40.3℃でした」
「あら~…人生初の40℃台ね。それで、あんな可愛くなっちゃってるのね~」
「はぁ…」
「傍に居るのが朔君だから、すっかり安心しきってるのね。朔君大変でしょ?日曜まで持たなかったら言ってね」
ガチャ
「……朔…そこに居ろ」
「あ?」
洗面所へと向かった大和が、歯磨きを始めた
「あら、大和…寝る前の歯磨き、思い出したのね?いい子ね~」
いい子…
あんな、可愛いくない口調ですけどね
「戻るぞ…」
「へぇへぇ…」
「大和、ちゃんと朔君にお礼言うのよ~」
「…………」
「おい…ぜってぇ聞こえてんだろ」
ったく…
子供に戻るなら、さっきみたいな素直な子供に戻れよ
「ん?」
階段の途中で、大和が止まった
「どうした…」
「…はぁ…はぁ…ここ…寝る…」
そう言って、階段に座りだした
「はあ?馬鹿言うな。おら、立て」
「無理…はぁ…くるし…」
苦しいだろうが、ここで寝る訳にいかねぇんだよ
そして、ここで、あんまり話す訳にもいかねぇんだよ
おばさんは、いいとして…
ユウに、こんなとこ見せる訳にいかないだろ
「…ったく」
大和を、無理矢理担ぐ様にして、立たせる
「…朔…無理…」
こっちが、無理だっつ~の!
ほぼ、引きずる感じで、なんとか階段を上りきり
「おりゃ!」
ぼふっ
ベッドに寝かせた
「わぁっ…」
「もう、朝まで大人しく寝てろ!」
「……さっくん…怒ってるの?」
「え…」
「…なんで?…っ…なんで…怒ってるの?」
げっ…
ここで、可愛いま~くん登場
「怒ってない。寝るぞ」
ピッ
と、電気を薄暗くすると
「さっくん…居る?」
「居るから、寝ろ」
「さっくん…怒ってるの?」
「…………」
無視だ、無視
こんなんエンドレスだ
疲れてんだし、そのうち寝る
「………っ…っ…」
無視、無視
「…っ…~~っ…」
無視、無視
「……さっくん…っ…ごめんねっ…」
無視…
「っ…さっくん……っ…嫌いになっちゃった?」
無視…出来るか!
くそっ!
大和のベッドへと戻り
大和を抱き締める
「嫌いになってない」
「…ほんと?」
「ほんと…だから、安心して寝ろ」
「~~っ…居なく…なんない?」
「なんない。ずっと一緒だから」
「っ…うんっ…」
くそっ!
なんだよ、これ
恥ずかしくて、顔から火出るわ!
こんな事言ってる、お前の相手してやったんだぞ!って、動画撮っとくべきだったか
「………さっくん?」
今、ウトウトしてたろ…
「ちゃんと居る」
「んっ…居なく……なんないもんね…」
「ちゃんと、ここに居るだろ」
俺の胸と腕の中だろうが
っつ~か、さっくんは、そんな大きくないだろ
何故、そこは疑問に思わないんだ?
「んっ…さっくん…居ないと…」
「あ?」
「さっくん…だけ……」
「俺だけ?」
「…僕が弱いの…知ってても…居てくれるから…」
「……ああ…全部知ってて、あと10年以上は傍に居るから、心配すんな」
馬鹿だな
お前の弱いとこなんて、皆見たがってんのに
弱いとこ見たって、去ってく奴なんか居ないのに
こんなんじゃお前…
心配で離れらんねぇじゃん
大学とか…就職とか…どうすんだよ
ちゃんと、俺の代わりに甘えられる人、作れよ
俺の代わりに…
大和の柔らかい髪に触れる
「ん…」
俺以外の奴に…
こんなの全部見せんのか
それは、なんか…
「ちょっとムカつくな…」
ん?
なんで、ムカつくんだ?
こんな面倒事、ごめんなのに
「疲れてんな…寝よ…」
いつもより、少し汗の匂いが混じった、大和の髪の匂い…
なんで、こいつの髪って、こんな落ち着くんだろ
いつの間にか、2人して熟睡してた
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