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まだまだ高熱大和
「……ぃ……っぃ…」
なんか…聞こえる
ん?
なんか…服引っ張られて…
「大和?」
「…はぁ…はぁ…っつい」
「あ…あっついのか?」
「ん…」
布団を剥いで、ベッドから出ると
もう明るい
結構寝てたんだな
「ほら、熱計れ」
黙って、体温計を挟めてる
今は、どんな大和だ?
少なくとも、ま~くんにはなってないな
けど、目覚めた時、俺と一緒に寝てたのに、機嫌悪くなんない辺り…
まともではないのか?
ピピッ
「…はぁ…まだ…熱ある…」
「どれ?」
39.3℃
昨日より1℃下がった
けど、全然高熱だ
「薬飲むか」
「ん…」
「あ、これぬるくなったか」
「いい…」
これは…
まともだけど、かなり弱ってる大和だ
「着替えは?」
「まだいい…寝る」
「おお…」
しんどそうだな
そりゃ…
40℃だの39℃だの出てたら、疲れるよな
体力ないユウは、もっとしんどかったろうな
けど、こいつはこいつで、熱なんてものに慣れてないしな
もう少ししたら、汗かいて起きるだろ
俺も寝よ
ガチャ
なんか…聞こえる
けど…眠い
「ダメだってば…」
「ちょっとだけ」
「せっかく寝てるから…」
「ちょっと見るだけだもん」
うるせぇな
「んあ?なんだ?」
「あ…朔兄、おはよう」
「四葉?おはよう…なんだ?」
「大和の様子見に来たの。具合どう?」
「まだ熱出てる。けど、今眠れてるから、静かにしといてやれ」
「は~~い」
不満気に、部屋の入り口に居るユウの元へと行く
「あ、そうだ……これ、冷蔵庫入れといてくれ」
「分かった!」
ぬるくなったスポドリを渡すと、四葉が張り切って受け取った
「朔兄、眠れてる?大丈夫?」
ユウが、心配そうに聞いてくる
さすが、具合悪くなるプロは、付き添いの気持ちが分かるんだな
「大丈夫だ。大和が寝てる時寝てる。手伝って欲しい時、呼ぶ」
「うん…」
パタン
はぁ…
大和…いい子だから、あと1時間位眠ってくれ
バタン
?
今度はなんだ?
静かにしてくれよ
「はぁ…」
「大和?起きたのか?」
「ああ…汗かいたから、着替える。お前は寝てろ」
おお…
めちゃくちゃ、しっかりしてる大和だ
「おやすみ…」
もう熱下がったんかな
今日で、俺の役目終わりかも
「ん……ん?」
何時だ?
おお!
すげぇ寝た!
大和は?
すやすや寝とる
どれどれ?
ん~…熱、なくはないな
けど、高熱でもないし、震えてない
よし、今のうちに
布団を片付け、リビングへと下りる
皆からの質問責めの中、だいぶ遅い朝食を食べさせてもらう
どうやら、大和も下りて来て、少しはお粥を食べたらしい
「んじゃ、シャワー浴びて来ます」
「はいは~い。行ってらっしゃい」
家に帰り、シャワーを浴びて出て来ると
「朔~…大和君の様子どう?」
今度は、こっちかい
母さん達に、大和の様子を伝えて
さてと…
「行って来るわ」
忙しいな、俺…
大和の様子は~…
「朔君、お帰り」
「お邪魔します」
「さっき見て来たら、まだぐっすり眠ってたわ」
「そうっすか」
回復傾向か?
どれどれ…
お~…丸まってんな
「大和…寒いのか?」
「朔…何処行ってたんだ……寒い…」
「毛布掛けとくな。一旦シャワー浴びに戻ってたんだよ」
「多分また…熱上がる…お前も今…寝とけ…」
「俺は今、眠くねぇよ」
偉そうだけど、一応気は遣ってんだな
また、手足冷たくなってんのか?
「…ん?」
「手…やっぱ冷たいな……ちょっと、そっち行け」
「何…」
「一緒に寝て、あっためてやんだよ」
「はあ?…そんなん…いらねぇ…」
「強がんな。震えてるくせに…おら…そっち行け」
無理矢理、大和を押して横になる
こっちまで冷えそうな程、手足が冷たい
「少しは、あったまるだろ?」
「……ん…後ろ…向く…」
「そっち向くのか?」
「背中…あっためたい…」
「ああ…」
くるんと、ひっくり返った大和を
背中からあっためてやる
首とか、熱いのにな
こんだけ体震わせてんの、すげぇ疲れるよな
暖めてない部分の手足が、いつまでも冷たくて
何度も、場所を変えてあっためてるうちに
だんだん震えが治まっていく
「…ん…ん…」
大和が、モゾモゾと動き出した
「起きるのか?」
「…こっち…」
「ああ…こっち向くのか」
くるんと回って、こっちを向くと
「ん~~…」
俺の肩の辺りに、顔を埋めてきた
「苦しくないのか?」
「………」
もう寝たんかい
首…だいぶ熱くなってる
ん?耳は、なんか冷たいな
「ん…」
耳に触れると、手にスリスリしてきた
やっぱ、耳寒いのか
仕方がないので、手で耳を覆ってやる
「……か……か…ぽか…」
「ん?なんだ?」
「あったか……ぽかぽか…」
「ぶっ!くっくっくっ…あったかくなったのな?」
「ん…あったか……ぽか…ぽか…」
何…そのワンセット
こいつの頭ん中、今どうなってんだ?
録音しときたい
「……朔?」
「なんだ?」
「ん…」
なんの確認?
心配しなくても、俺以外、こんな可愛いとこ見せてねぇよ
ちょっとだけ、おばさん見ちゃったけどな
親はセーフだろ?
「早く治るといいな…」
見てるだけで疲れてくる
こんなんを、毎回乗り越えてんのかと思うと
ユウの方が、実は強いんじゃないかとか、思えてくる
そんなのを繰り返したけど
あがっても39℃前半で
下がると、ほんの少しだけど、お粥なんて食べれたりして
このまま下がるのかなぁ…なんて思ってたら
「…さむ…さむ…」
ん?
「さむ…朔…寒い…」
「寒いのか。毛布掛けるな」
「ん…関節…痛い…」
「熱上がったら、薬飲むから」
毛布を掛けて
また横になると
「……朔」
「ん?」
「…~っ…朔っ…」
「え…何…」
「…こっち…」
「こっち?」
大和の傍に行ってみる
泣いてんの?
「ん…ん…朔…」
「どうした?」
「つ…辛い…から…」
「そうだな」
「朔…」
大和が、弱々しく俺の手を触ってきた
冷たっ…
「一緒に寝るか?」
「ん…」
「少し、そっち行け」
「ん…ん…」
なんか…
日中より辛そうだな
まぁ…どんどん体力なくなってくしな
「そっち向かなくていいのか?」
「~~っ…っ…」
大和が、ほぼ丸になって、俺の胸ん中入ってきた
「どうした?そんな辛いのか?」
「っ…朔?」
「ん?」
「朔…だから…泣いて…いい?」
「…泣くなり、怒るなり、好きにしろ」
「~~っ…っ…んっ…~~っ…んっ…」
「ん…体…辛いな……もう疲れてんのにな?休めねぇよな?」
「んっ…~~っ…っ…」
まん丸大和が、しばらく泣いて
そのうち寝てる事に気付いた頃
震えも、だいぶ治まってきた
「少し…寝ような…」
日中より辛そうだなと思った分
その後の、熱の上がりも大きかった
暑くて目が覚めると
隣で大和も、はぁはぁ…言ってた
上がり切ったか
暑くなってんのに
なんかもう、目覚めもしない
体温計を挟めてみると
ピピッ
40.3℃
「おい~~…ここに来て、こんだけ出る?」
そりゃ、辛いわ
なんか…起こすの可哀想だな
薬…こいつの目が覚めてからでいいか
毛布を剥いで、自分の布団へと入る
俺も眠いんだ
もう少し寝よう…
「ん~~…はぁはぁ……ん~~……はぁ…」
大和?
起きたのか
「大和…起きたのか?」
「ん~~…んっ…はぁはぁ…んっ…はぁ…」
「…何してんだ?」
眠たい目を擦りながら、電気を点けると…
「わ~お…」
布団は、足元に落とし
上は脱いで、下も脱ごうと頑張ってるとこだった
「汗かいたのか?」
「ん~~ん…あっついの…」
なんか…
何歳児?
「汗はかいてないのか。じゃあ、着てた方がいいんじゃないのか?」
「……あっついよ?」
「でも、そんな格好してると、今度寒くなるぞ」
「うん…?」
きょとんとしてる
思考力が…
「あ~っと…まずは、薬飲もうな」
「薬…」
「そ。薬飲んだら楽になる。ほら…起きて…」
大和の体を起こしてやる
あっつ!
「……これ…飲む…」
「そう。飲む」
「……朔は?俺だけ?」
「俺は、熱がないから飲まねぇの。お前は、熱があるから飲むの」
「……うん」
納得いってなさそうな顔しながらも、とりあえず薬は飲んでくれた
さて…
「上、着るぞ」
「着るの?」
「そう。ほら、手入れろ」
「ん…」
「はい、頭入れて」
「ん…ぷはっ!ははっ!」
「ぶっ!」
シャツから顔出しただけで、めちゃくちゃ笑ってる
相当やられてんな
「今、体痛くないのか?」
「体…痛いかも…」
「少し楽なんだな。眠れそうか?」
「朔も一緒?」
「俺も、ここで寝る」
「ん…おやすみ…」
「ふっ…おやすみ」
頭いかれたせいで、なんか元気に見える
なんなら、ちょっと楽しそうだ
本人辛くないなら、なんでもいいや
おやすみ…
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