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可愛い大和を見てしまった

せっかく大和のお世話をしようと、張り切ってたら、朔兄がやって来た まだ、ほんの少ししかお世話出来てないのに… 四葉は、お世話したいってのもあるだろうけど いつもと違う大和を見たいって方が大きそう… いつも、弱いとこなんて見せないから… 朔兄が来たので、仕方なく四葉を連れて退散する 前にシュウが言ってた たまに、朔兄が居なくても、朔兄の部屋で大和が寝てる事あるって 家では、大和が寝てるとこなんて、見た事がない 朔兄にだけは、俺達には絶対言わない様な事言ったりする なんの遠慮もなしに、不機嫌になったり、文句言ったり きっと、朔兄には全部見せていいって思ってんだろな 日曜日のお昼 お昼ご飯の時間を過ぎても、大和も朔兄も降りて来ないので、静かに様子を伺いに行く コンコン 少し小さめにノックしてみる 2人共、寝てるのかな 朔兄も、きっと疲れてる 静かにドアを開けてみると 大和のベッドで2人共眠ってた ちょっとだけ…見てもいいかな 静かに近寄ってくと ちゃんと見えないけど、多分… 大和を、朔兄が後ろから抱き締める様にして、眠っている 凄い… 大和の寝顔だけでも貴重なのに 朔兄と、こんな風に寝る事あるんだ 「ん……んん…」 うわっ! 大和が寝返りを打つ 起きる?! とりあえず、その場にしゃがんでみる 「ん~?」 朔兄の声だ ヤバイ …………… あれ? 静かになった ゆっくりと、立ち上がってみると… 大和が、朔兄の肩に顔埋めて寝てる! 朔兄が、大和の頭撫でてたと思ったら、耳を触って、そのまま耳を覆う様にした すると… 「…ん…ん…」 大和が、朔兄の手に、耳をスリスリしてる! 「ん…あっためたるから…」 「ん…」 2人共、ちゃんと目覚めてないのに なんか… 意志疎通出来てる! ものすごく貴重なものを見てしまった …ってか 大和が、めちゃくちゃ可愛い! こんな可愛い大和見るの、初めて! 静かに静かに部屋を出て 音を立てない様に、ドアを閉めた 「………っはぁ~」 胸が、ドキドキしてる あんな大和見れて、めちゃくちゃ嬉しいけど きっと、大和は見られたくないんだよな 朔兄じゃないとダメなんだ 俺達じゃ、ちゃんと休めなかったんだ 熱があっても、大和…ずっとニコニコ俺達の事見てたもん その日の夕方 「朔君、お疲れ様」 「いえ…大和の熱、ようやく37.0℃台が見える様になってきました。少し咳が出て来たので、帰れと言われました」 「そう…物凄く助かっちゃった。大和も、きっと凄く感謝してるわ。ゆっくり休んでね」 「はあ…んじゃ、お邪魔しました」 そう言って、玄関に向かう朔兄の後を付いて行く 「ん?ユウ、どうかしたか?」 「ううん…大和…俺達の前じゃ、ちゃんと休めないから…朔兄が居てくれて、ほんとに良かった。ありがとう」 「ふっ…本人から聞きたいもんだけどな。あとは任せたぞ」 「うん。朔兄、お疲れ様」 「おお」 昨日の夜も、一昨日の夜も 夜中に物音聞こえてた 朔兄が階段歩く音と 多分、大和を連れながら歩く音 朔兄が、大きな体で良かった あの大和を支えれる 大和が、安心して顔埋めれる 「母さん、あとは俺、お手伝いするね」 「お願いね~」 コンコン 「大和…入るね」 ガチャ 「ユウ…朔帰ったか?」 「うん。帰ってったよ。大和、咳出てきた?」 「うん。だから、四葉は近寄らせないでくれ」 「分かった。今、熱は?」 「37.8℃。だいぶ下がって楽になったよ」 でも、ここから咳続いて疲れるんだよなぁ 明日、病院連れてくって言ってたけど 「ユウ?どうかした?」 「ううん…ご飯食べれそう?」 「お粥なら、食べれそうだ」 「分かった。何かして欲しい事ない?」 「マスク持って来てくれる?トイレとか行って、みんなにうつしたくない」 「うん。トイレ…行けそう?」 「大丈夫だよ」 母さんに、大和の様子を伝える 大丈夫だよ… 俺の前では、きっと、それしか言ってくれない 必要以上に行かない方が、大和休めるのかも… お粥をペロリと食べた大和 ほんとに、熱が下がって少し楽なんだ 咳は、結構出てきたけど 念のため、寝る前にもう一度、大和の部屋へ顔を出す 「熱、上がっても38.5℃だ。自分で動けるし、ユウは心配しないで寝て大丈夫だよ」 「そっか…おやすみ、大和」 「おやすみ」 大和が、俺の前で、大丈夫じゃない事はない いつも、大丈夫 俺なんか、四葉に、めちゃくちゃ心配かけて、お世話してもらってるのにな 『朔兄、大丈夫そう?』 シュウに連絡してみる 疲れて寝ちゃったかな ヴヴ ヴヴ 『帰って来て、風呂入って、ご飯食べたら、すぐ寝た』 だよね… 金曜の夜から、ずっとだもん 『大和には内緒だけどね』 『今日、大和と朔兄が、くっ付いて寝てるとこ見ちゃった』 『大和が凄く可愛いかった』 シュウにだけなら、いいよね 四葉には、内緒にしとくから ヴヴ ヴヴ 『朔兄だけは、大和の色んな顔知ってんだろな』 うん そう思うよ いつも、喧嘩ばっかりなのに 俺達とは全然違う 不思議な関係 『朔兄が居てくれて良かった』 俺が小さな頃は もう少し仲良かった気がする でも、俺とシュウほど、いつも近くに一緒に居るって感じじゃなかった 俺が覚えてないくらい小さな頃は、どんなだったんだろう? 2人共、まだ全然子供で 俺達みたいに、何するにも一緒だったりは、しなかったのかな その日の夜 何度も、大和の咳き込んでる音が聞こえてきた 多分、気を遣って、布団の中で咳き込んでる音も… 行って、背中さすってあげたい 何かしてあげたい けど、朔兄じゃないから きっと、苦しくても気を遣わせてしまう もっと頼れる弟になれてたら良かったのに… 「はぁ~~…」 「穂積?だいぶ深い溜め息だね?」 「あ…深山…」 「体調悪い?」 転校してきたばかりの深山にも 既に、体の心配されている 「いや…今度は、俺の兄ちゃんが風邪引いちゃったんだけどさ…」 「え…大変だね」 「うん…大変だし、俺は免疫あるから、色々お世話したいんだけどさ…」 「…出来ないのか?」 出来ないとは違うな きっと、させてくれる けど… 「俺がお世話すると、多分、気を遣っちゃうんだ」 「弟なのに?」 「うん…俺や、妹の前で、あまり弱いとこ見せないんだ」 「…何個上なんだっけ?」 「3個上」 「そっか…俺も、弟の3個上だから、なんとなく分かるかも」 俺は、四葉の2個上だけど 全然お兄ちゃん感が…… 「隣にさ…俺も兄ちゃんも、幼馴染みが居るんだけど…」 「あ、いつも一緒に帰ってる?」 「そう。兄ちゃんは、今は幼馴染みとは別の高校なんだけど…会うと、文句言ったり…その幼馴染みだけには、なんかね…気を遣わないんだ」 「へぇ…」 こんな話、深山にして、どうすんだろ 俺達の事、全然知らないのに 「その幼馴染みは、お兄さんと同い年?」 「そうだよ」 「じゃあ…なんて言うか…同士って言うか…戦友みたいな感じあるのかもね」 「同士…戦友…」 俺と、郁人兄ちゃんみたいな? 「下の兄弟が居るってさ、どんなに仲良くても、可愛いくても、どうしたって、上が我慢しなきゃなんない事とかあるだろ?」 「うん」 「そういうのさ、同じ時期に、一緒に乗り越えてきたみたいなさ…」 「……そっか」 俺は、大和もシュウも居たし 四葉が生まれたからって、そんなに寂しいとか、凄く我慢とか、なかった気がする それでも、やっぱり… あんまり覚えてないけど なんとなく…母さんと四葉を、羨ましい気持ちで見てた事が、あった様な気がする 大和やシュウが居なかったら、俺は、母さんを困らせてたかもしれない そっか 大和は3歳の頃から、お兄ちゃんで 俺にも、四葉にも、母さんを取られて… それでも、いつも一緒に居てくれたのが、朔兄で… 3歳…そうだよな そりゃ…朔兄の前では、怒ったり、泣いたり、普通にしてたんだろな 「深山…なんとなく分かった気がする」 「そう?」 「分かったからって、俺に出来る事はないんだけど…とりあえず、元気な俺で、出来る事をしてみるよ」 「うん。俺も、心配や不安そうな顔の弟より、元気な顔の弟を見ると、安心して、少し元気になるよ」 「うん!」 深山は、きっといい兄ちゃんなんだろな その上、郁人兄ちゃんの顔で言うもんだから なんか…他の人に言われるより、ずっと信用してしまう それでいいんだよ… 出来る事でいいんだよって、郁人兄ちゃんが、言ってくれてるみたいだ

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