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それ、嫉妬…
俺も大和も、すっかり体調が良くなった週末
「シュウ、お待たせ」
「ん…行こ」
深山の事を聞いて、不安そうにしてたシュウ
行こうって言ってから、だいぶ待たせちゃったな
「…………」
「ん?何?」
シュウが、じっと見てくる
髪?服?どっか変?
「ユウ…今日は、いつも通り」
「いつも通り?」
「うん…初めてのデート…ユウ緊張してた」
「初めてのデ…」
デート?!
そうだ
なんか、普通にシュウと遊びに行く感覚だった
デートだった!
ちらりとシュウを見る
「ん?」
「っ!」
なんか、デートって思った途端
シュウが…
いつもと違う感じに見える!
「…ごめん…言わなきゃ良かった」
シュウが、少し困った顔をしている
「え?…あっ…ごめん」
急に俺だけ緊張するから、おかしいんだよな
「なんかさ…シュウと居るのって、自然だろ?」
「うん…」
「だからさ…何にも考えなくても、一緒に居る…ってか、一緒に居ても、何にも考えなくていいくらいじゃん?」
「うん…」
「なのに…デート…とか……そういうの考えた途端……シュウが、いつもと違って見えるんだ…それで……ごめん。俺、こういうの初めてだからさ…どうしたら、慣れるんだ?」
シュウも俺を好きなのに、いつも通り
なんなら、俺より気持ち大きそうなのに、いつも通りだ
「分からない」
「え?」
「ユウを好きになってから、ユウと近付くのも、ユウと2人になるのも、ユウに触れるのも、意識せずには居られない」
「……でも…シュウは、ずっと変わらないじゃん?」
あの、キスしてきた時まで
気持ち聞くまで、全然分からなかったし
「元々…分かりにくいから…でも、ユウ達には気付かれると思って……普通にする努力した…ユウを…困らせたくなかったし……知られて、嫌われたくなかったから…必死だった」
「シュウ……」
「だから…一緒に居て、何も考えないって事…出来なくなってた……ユウと居ると、意識せずには居られない…今も慣れてない」
驚いた
だって、いつものシュウだ
彼女とか居た事あるし
そういうの慣れてて、落ち着いてるんだと思ってた
「シュウも…俺が笑ってるの見て…気持ち…いっぱいになったりする?」
「いつも…毎日してる」
なんと…
俺より、ずっと前から、ずっとあれに堪えてたんだ
そりゃ…慣れてないって言ったって、俺よりは慣れてる
「俺…いっぱいになると、どうしたらいいか、分かんなくなる…シュウは、どうやって落ち着かせてるの?」
「落ち着いてない…けど…どんなユウも、少しでも長く見てたい…だから黙って見てるだけ……だけど…いっぱいな気持ち…溢れて……ユウに勝手にキスした…ごめん」
なるほど…
分かったぞ
俺は、気持ちいっぱいを、その都度小出しにするタイプ
シュウは、気持ちいっぱいを、溜め込んで爆発させるタイプなんだ
「なんか、分かったかも…」
「?…何が?」
「俺は、小出しタイプだから、その都度気持ちいっぱいになっても、仕方ないんだ。だから、俺が急に緊張してても、あまり気にしなくていいよ」
「タイプ?…そうなの?」
「うん。シュウは溜め込みタイプだから、時々爆発しても、付き合ってやるよ」
「……うん…ありがとう…?」
解決にはなってないけど
タイプは違うけど、実はシュウも同じって事だ
俺だけじゃない
こんな落ち着いてますって顔してても
シュウも同じなんだって思ったら
嬉しくて、心強くて、安心する
「ユウ…ここ、見ていい?」
「うん」
ショッピングモールを、適当に歩いてると
シュウが、お店の中に入って行く
シュウが、たまに服を買うお店だ
普通サイズが、既に大きめな作りになってる、このお店の服は、シュウに似合っている
そして、絶対俺には似合わない
シュウは、モノトーンのコーディネートが多い
デザインも、シンプルな物が多いけど
シュウが着ると、なんか格好いい服に見える
「迷ってるの?」
「うん…」
「着てみたら?」
「いい?」
「うん、俺も見たい」
シュウの試着を待つ
何着ても格好いいんだけどね
シャッ
「へぇ…なんか、着ると感じ変わるね?」
「うん…」
「もう1枚の方も見せて?」
「うん」
おかしくはないけど
ってか、全然格好いいけど
ちょっと、シュウって感じじゃないかも…
シャッ
「あ…こっちのが、シュウって感じする」
「ふっ…うん…俺も、そう思う。こっちにする」
「うん」
鏡越しに、笑ったシュウが
凄く嬉しそうで
そして…凄く格好いい
この格好いい男が
俺の恋人なのかぁ…
恋人!
シャッ
「…ユウ?……顔…真っ赤…」
「なっ…何でもないから…大丈夫」
シュウが、周りをキョロキョロ見てる
「誰かに…何かされた?」
「え?違う!ただ…その…ちょっと意識しちゃっただけ…だから…」
「……うん…これ、買って来る」
「っ!…うん…」
シュウが、めちゃくちゃ嬉しそうな顔するから
こっちも、嬉しくなっちゃうじゃないか
一緒に隣に居て
幼馴染みになったり、恋人になったり
不思議だな…
シュウの服を買って
ブラブラして
お昼ご飯食べて
俺の家に向かってる訳だけど
シュウの、スマイル出現回数が、過去最高!
それも、俺達だから分かるやつじゃなくて
皆が見て分かる位のやつ!
だから…
めちゃくちゃ、女の子達が見て行く
シュウは、全然気付いてなさそう
イケメンって、そうなんだろうなぁ
大和も、あんなに視線送られてても
気付かないのか、もう慣れて気にしてないのか
けど…
俺でも、ここまでの笑顔は、しょっちゅう見れる訳じゃないのに
あの子も
あの子も
あの人も…
シュウは、芸能人じゃないんだぞ
そして…
一応、俺の恋人なんだぞ
「ただいま~」
「お邪魔します」
「また、皆出掛けてる」
「ユウの両親…しょっちゅう2人で出掛けてるね?うちもだけど…」
「うん…」
あれ…
なんか今…俺、嫌な感じじゃなかった?
「ユウ…」
「何?」
「なんか…怒ってる?」
「え?」
俺の部屋に入って、ベッドに座ると、すぐにシュウが聞いてきた
「何で?別に怒ってないよ?」
「……そう」
怒って…ないよな
だって、怒る様な事、何もないし
だけど、気持ちがスッキリしないのは、なんでだろう…
何となく…もやもやしてるのは…
「……シュウさ…なんか…今日、随分笑うよね?」
あれ?
なんで、こんな事…
「今日…凄く楽しいから…」
「でもさ…俺だけが見る訳じゃないだろ?」
あれ?
何言ってんの?
「ユウ?」
「外に居たら、皆見るだろ?シュウが、そんなに笑う事自体珍しいのにさ…」
何これ…
止まんない
「ユウ…」
「ただでさえイケメンなのに、シュウが本気で笑ったら、今日どれだけの人に見られてたか分かってるの?!なんで、俺以外の人達に、あんなに見せるんだよ?!」
え…
何だこれ…
自分の口から出たとは、思えない…
一体俺は、何を言ってるんだ?
「ユウ…」
「あ…ごめん!違うんだ!なんか…俺…頭おかしくなった…」
「ユウ…」
「今言った事、気にしないで!」
「ユウ…気にする…嬉しいから…」
「え?」
そう言うと
シュウが、優しく抱き締めてきた
「嬉しい?俺…訳分かんない事で、シュウを怒ったんだぞ?」
「訳分かんなくない…ユウ…それ、嫉妬…」
「嫉妬?」
「ヤキモチ…妬いてくれて、嬉しい…ありがとう…」
「ヤキモチ?」
ヤキモチ…あれが?
シュウが笑って、怒ってたのが?
「ユウと服選べて…凄く嬉しかった…」
「うん…」
「それで…今日ずっと、幸せだった…」
「あ…そうだったんだ…」
俺と服選んだのが、そんな嬉しかったのか
それで、シュウ…あんなに笑ってたんだ
「どれだけの人が見てたのか…知らない…俺は、ずっとユウを見てた」
「~~~っ!」
嬉しい…
めちゃくちゃ嬉しい…
もやもやが…無くなってく
「ユウだけ見てくれてたら…あとは要らない」
「~~っ…俺だけ?いっぱい…可愛い女の子も見てたよ?」
「知らない…要らない…ユウだけ欲しい」
「~~っ…うん…俺も…シュウだけ…」
沢山の可愛い女の子達
要らないんだ
俺だけ…
「ユウ…キスしたい」
「うん。キスしたいの…俺だけ?」
「ユウだけ…していい?」
「うん」
ヤキモチ…なんだろな
俺って、こんな事考える奴だったんだ
なんか…自分の知らない自分みたいで
それは、あんまりいい自分じゃないから
気付きたくなかった気がした
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