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注: は、大きく
大和が復活した後の週末…
「この前の店、奢ってやる」
大和から、そう誘われ
例の定食屋で、昼飯を食う事になった
相変わらず、決まってるくせに、メニューを見て悩むフリをする大和
この店来たら、食うもんなんて決まってるだろうが
注文し終えると
「熱が出てる間、一応世話になったからな。これでチャラだ」
海老フライ定食頼んだ奴が、偉っそうに、そう言ってきた
「へぇへぇ。黙って奢られとくよ」
「ところで確認だが…俺は、お前が来てから帰る位までの記憶が、ほぼない。ずっと夢ん中に居たかの様だ。誰にも俺の弱ってる姿、見られなかったろうな?」
誰にもって…
お前の家族と、俺の家族しか居ねぇんだから、見られてもいいだろが
って、言葉を飲み込んで
「見られてねぇよ……あ…」
「何…」
怖っ…
急に声のトーン下がったんですけど?!
「いや…トイレ連れてった時に、おばさんには見られた。けど、おばさんなんだから、セーフだろ?」
「は?セーフな訳あるか。母さんに見られたら、余計な心配かけるだろが」
いや…
心配かけていいんだって
たまには、甘えてやったら喜ぶって
「お前が可愛くなってるって、喜んでたぞ」
「かっ…?!…一体、何してたんだ?俺は…」
「トイレから出て来たら、居なくなって1人にするつもりだろって、なかなかトイレ入んなかったんだよ。そこに、おばさんが来てくれて、俺を捕まえとくから大丈夫っつったら、ようやくトイレ入ったんだよ」
「~~~~~~っ…!」
まあ、恥ずかしいだろな
事実だから仕方ない
「~~っ…あとは…あと、何かおかしな事したのか?」
「むしろ、殆どおかしかったな。だが、誰かに見られたのは、それだけだ」
「…っはぁ~~…お前を呼び出しといて、良かった。絶対ユウ達には見せられない」
だろうな
お前が思ってる数十倍、おかしくなってたからな
けど…
「海老フライ定食のお客様」
「はい」
その顔よ…
俺にとっては、まあ…
全然あり得るんだけどな
「んっ…やっぱ美味し……んっ…」
子供かよって顔して食ってる
「ん?海老フライ食べたいのか?やらないぞ」
「要らねぇよ。俺のトンカツ定食のが旨いわ」
「勿体ない奴め…ここの海老フライを食べないとは…」
お礼に奢るとか言って
単に、自分がまた食いたかっただけなんじゃねぇの?
「ふっ…」
「ん?何…」
「口の端、タルタル付いてっぞ」
「ん?」
「そっちじゃねぇわ」
お子様ランチに夢中みたいな大和が
反対側の口の端を舐めてんのが、滑稽で…
「こっちだ」
なんとなく、自然に指で拭ってやった
拭ってから、気付いた
俺は、こいつの彼氏か?!
いや、どちらかと言えば、父親的な感覚…
って、どっちもキモいわ!
大和が、少し驚いた様な顔してる
ここは、流せ!
「勝手に拭んな!タルタルだって、貴重なタルタルなんだぞ!」
「…は?」
こいつ…
「ったく…口で言えば分かるわ…」
なんか、ぶつぶつ言ってる
タルタルの事しか、考えてねぇ!
まあ…いいんだけどさ
「ん~と…」
まるで、定食とセットかの様に
帰り道でコンビニに寄り、アイスを選んでる
「こっちにすべきか……けどなぁ…こっちは、期間限定だしなぁ…」
満腹って、言ってたろうが
って、この前も思ったけど
「ん~~~…」
悩み過ぎだろ
ってか…
どっちも、めちゃくちゃ甘そう
アイスコーナーを、ぐるぐるぐるぐる
どっちの角度から見たって、同じだろが
「よし、決めた!これにする」
「……これ…今帰って食えんの?」
「食べれるけど?」
「…なら、いいけど…アイスは、俺が買ってやるよ」
海老フライからの、ガッツリコーンの付いたアイス…
子供嗜好で、胃袋大人…
レジに持ってく途中で気付く
『大人のショコラベリー』
大和の選んだアイスに、そう表示されてて
めちゃくちゃ子供に戻ってる様な奴が
大人って書いた味選んでて
なんか笑えた
「あ~…最高」
俺の部屋で、甘ったるい匂いのするアイスを、パクパクと食って、満足そうだ
「全部が甘いもんで出来てて、飽きないのか?」
「馬鹿が…パーツ毎に、甘さの種類が違うだろ。飽きる訳あるか」
いや、どのパーツも甘々だろ
絶対飽きるわ
「お前、小さい頃は普通にアイス食べてたよな?甘いお菓子も…」
「信じられないが、普通に食ってたな」
「急に味覚変わったのか?」
「急に…なのか?あんま、覚えてねぇな…気付いたら、ポテチとかしょっぱい系好きになってたな」
「人生の幸せ半分を手放したな」
手放してないお前は
好きな時に食えてないだろが
コソコソ皆に隠れて食いやがって
「はぁ~…さてと、寝るか」
「当然の様に、俺のベッドを使うな」
「ん~?なんか、お前のベッド、小さくなったか?」
「なる訳あるか!俺達が成長してんだよ!」
「ん~…まあ、いいか…」
何が、まあいいかだ
満足そうな顔しやがって
「おい…寝るなら、上に着てるシャツ脱がなくていいのか?」
「………ん?」
「もう寝てるんかい…ったく…」
皺になっても知らねぇからな
ゴミも、放置しやがって
完璧な兄ちゃんは、何処行った?
「げっ…」
大和の食べたアイスのパッケージを、何気なく見ると
「308kcal…エグッ…」
どんだけ、砂糖使われてんだ?
見るからに甘そうだったもんな
「………んっ?!」
え?
ちょっと待て…
注:リキュールが使われております
小さなお子様、妊娠・授乳中の方、アルコールに弱い方は、お控え下さい
「は?!『注』が小さ過ぎるだろ!」
ってか、コンビニの店員何も言わんかったぞ?
あ…でも、チョコレートとかは、アルコール入ってても買えるのか
「……小さなお子様でもねぇし、大丈夫か」
嗜好はお子ちゃまだけど
体は高校生だしな
クシャッとゴミを片付けて
特にする事ねぇし…
「おら…もっとそっち行け」
「ん~~…」
「ん~~…じゃねぇんだよ。俺のベッドなんだからな」
大和を、グイグイ押し退けて、ベッドに横になる
はぁ~
食って寝て、休日最高
やっぱ、トンカツ定食も最高だったな
今度は…
「ちょっ……ちょちょちょ…」
なんだ?
「ちょ~ちょ…ちょちょちょ…」
は?
「おい…大丈夫か?」
「ん~……ちゅん…ちゅちゅちゅ…ちゅん」
「……大丈夫じゃねぇな」
これ…酔ってんの?
こんな酔い方あんの?
夢見てるだけか?
「おい、大和…」
「…ぴよ…ぴよっぴよ…ぴ~よ…」
「ぶっ!…くっくっくっ…」
何これ…
面白過ぎんですけど
「……ん?」
「お…目覚めたか」
「たんたか…た~ん…」
「おい…」
俺の髪を、思いっきり、あっちとこっちに引っ張り出した
「痛いだろが」
「ぶしぶし…ぶし…」
今度は、ペチペチ顔中触ってくる
意味分からん効果音付きで
「大和、頭ふわふわしてるのか?」
「…ふわふわ?……ふわふわ…ふわふわ…」
「いや、俺の髪は関係ねぇよ…ってか、確実にふわふわしてんな。気持ち悪くねぇのか?」
「ん~~…ちゅっ…」
は?!
なんで、気持ち悪くねぇかの質問に、キスで返す訳?!
こいつ、酒癖最悪に悪い!
「おい…お前が酔ってんのは、分かった。そして、お前が悪くないというのも分かっている」
「……あむっ…」
「おい!なんで俺の腕に食いつくんだよ?!」
「ペッペッ…美味しくない…」
「はあ?!」
勝手に食いついて来て
すげぇ残念そうに、そう言ってきた
「お前は…黙って寝てろ!」
大和を、胸ん中に押し込めて、布団掛けて強制的に寝かせる
「ん~~…イヤイヤ…」
「イヤイヤじゃねぇ!酔っぱらいの介抱なんて、知らねえんだから、酔いが醒めるまで寝てろ!」
「………」
お?静かになった
寝たか?
「…もぐもぐ…もぐらの…も~しゃんが~…」
「今度は、なんだ…」
なんか…謎の歌、歌いながら
俺の胸、指でなぞり出した
「けっけけっけ…けむしのむ~しゃんで~」
何故、もぐらが毛虫になった?
そして、毛虫なのに、何故む~さん?
「こら、大人しく寝ろ」
頭、軽く抑え付けると
「……アイシュ…食べたい」
「あ?食ったろが」
ってか、そのアイスでこうなってんだよ
「パフェ…クイームショーダ……パン!ケーキ!」
「うるせぇ!寝ろ!」
すげぇ厄介だ!
ぜってぇこいつ…酒飲ませらんねぇ!
「やらやらもんね~…チッチッチ…しゅっ…ぽ~ん!」
大和が、勢い良く布団の中から出て来て
めちゃくちゃ楽しそうに、笑ってる
「ぶっ!…楽しいのか?」
「楽し~!」
後から知った
酔っぱらいを、あまり動かしてはいけないと
とにかく、水飲ませて、アルコール出さないとダメなんだと
楽しそうな大和を見て、諦めた俺は
水も飲ませず
好きな様にさせた結果…
数時間後………
「……何時」
「4:00…」
うわぁ…
あの後、寝てくれたし復活かと思ったら
めちゃくちゃ機嫌…ってか、気分悪そう
「…なんか…すげぇ頭痛い上に…気持ち悪い…」
「……今日…泊まってったら?」
状況を把握出来てない大和に、経緯を説明すると
溜め息を吐かれ、水飲ませて寝かせるもんだと指導された
不幸中の幸いだったのは
そもそもが、自分のミスでもあるのと
大声出す程の元気がなかった為
いつもなら、まだまだ続く説教が、すぐに終わった事だ
母さん達に、なんか食あたりしたみたいとか言って、大和を泊めて
夕食も食べれない大和に、こっこり持って来た頭痛薬を飲ませ…
酔っぱらうって、大変なんだと知った
そして、こいつは体質まで、お子ちゃまなのだと知った
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