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心配な弟達

シュウが、健気に一途に、ユウの帰りを待っている そんなん、行くなって、言ってやればいいのに まあ…あのユウが、シュウを置いて会いに行くって決めたんだ なんも言えねぇか… 前世の話も、幽霊の話も 俺にとっては、ほんとかよ?でしかないけど ユウが、そんな嘘吐く意味がない シュウを悲しませる嘘吐くなんて、あり得ない なんて言うか… シュウを見てると もっと感情出せたら、少しは楽なんじゃねぇの?とか思うけど… 絶対大丈夫じゃないシュウに、大丈夫か?とも言えず なんとなく、傍に居てやる事しか出来ず 昼か… ユウ…そろそろ帰って来んのか? まさか、ついでにランチとかねぇよな もうシュウが泣きそうだぞ? 居ても立っても居られず かと言って、いつユウが帰って来るかもしれない時間に、昼飯食う?って感じでもなく コーヒーを薦めて、準備し出したところで 待ちに待ったインターホンが鳴った やれやれ… 出したコーヒーとマグカップを棚に戻し、スマホを持ってリビングから出ると まだ玄関で抱き合ってた 「ユウ、帰って来たのか?」 「朔兄…そっか…一緒に居てくれたんだ」 「そんなとこ居ないで、さっさと部屋行け。俺は、ちょっと出掛ける」 「うん…シュウ、上行こ?」 家を出て、あてもなく適当に歩く もはや、兄弟… いや…歳が同じなんだから、双子みたいな2人 双子で、親友で、恋人で 最強にしか思えないんだけど… 逆か 最強だと思ってるからこそ 知らない事や、知らない存在が、普通以上に不安になるのかもしれない 近くの公園で、一息ついてると ヴヴ 『ユウ、そっち行ってる?』 あ… ユウの奴、ほんとに真っ先にシュウの事考えて、来てくれたんだ 『さっき来た』 『今頃シュウの部屋で盛り上がってる』 あいつら、どこまで進んでんだろ あのグッズ、使ったのかな ヴヴ 『シュウと出掛けてたんじゃないんだろ?』 『ユウ変わりなかった?』 え? ユウの奴、大和には言ってなかったのか 『前世友達と会ってたらしいぞ』 『ユウはいつも通り』 なんか様子おかしかったんか? 普通に見えたけどな ヴヴ 『今すぐ家来て詳しく話せ』 「げっ…余計な事言わなきゃ良かった」 『今、外』 ヴヴ 『さっさと戻って来い』 「出た!悪魔め」 ユウの奴 そんな心配する感じだったのか? なんで? シュウなら分かるけど… ヴヴ 『無視するな』 『さっさと動け』 『分かってんのか?』 「うざっ!…ったく、めんどくせぇな」 『今向かってるわ!』 ってか、話聞きたいなら、お前が来い! なんて、あの悪魔に言える訳ない 「さっさと、お前の知り得る限りの、全ての情報を教えろ」 この偉そうな態度 「へぇへぇ…」 文句言ったところで、勝てる訳もなく それどころか、どんな仕返しが待ってるか分からないので、仕方なくシュウから聞いた話をする 「そうだったのか…」 「ユウ、なんか様子おかしかったんか?」 「いや…今日出掛けるって言ってたから、てっきりシュウとだと思ってて…出掛けに、楽しんどいでって言ったら…」 「……うん…ありがとう…」 「そう言ったユウが…なんとなく、いつものユウじゃない感じがして…」 「説明すんの、めんどくさかったのかもな。どうせ、その後シュウに会うしって、思ったんじゃね?」 「はぁ~…馬鹿は楽観的でいいな」 「は?!馬鹿じゃねぇし!」 ユウが、めんどくさがったせいで 俺が、めんどくせぇ事になってんぞ! 「お前さ…ユウが結叶じゃなく、蓮になった時の事、覚えてる?」 「ああ…なんか、未だに信じらんないけど…」 「ユウさ…蓮の記憶なくした訳じゃないのに、全然蓮の話しないんだ」 「そりゃ、わざわざ思い出して、する様な話でもないだろ。誰もそいつの事知らないんだし」 「……馬鹿はいいな」 「はあ?!」 もっと文句言ってやろうとしたけど 思いの外、大和が思い詰めた顔をしてたので、やめた 「結叶に戻った直後に聞いた話だけでも、結構色んな事思い出してそうだっただろ?なにより…今より大変な人生だったはずだ」 「まあ…そうなんだろな」 心臓が悪いとか 中学まで生きれたとか なんか、そんなん言ってたもんな 「ユウが、どんなタイミングで、どの位思い出してるのかは知らないけど…辛い思い出なら、どうする事も出来なくたって、誰かに聞いて欲しいとか、思うかもしれない」 「まあ…そうかもな」 「だけど、きっとシュウに話して、分かったんだろな…話すと心配とか、不安にさせるって」 まあ… シュウの場合、自分のせいで、ユウが前世思い出してしまったっていう、負い目もあるんだろうけど… 「なのに、すっかり蓮になって、あの日皆が心配したもんだから、益々俺達には言えなくなったんだろな」 「話したりしない方が、また忘れんじゃねぇの?」 「それならそれでいいが……誰にも言えない、蓮を知ってる存在が、ほんとに居るなら…きっと、凄く心強いだろうな…」 あの日、ほんの少し関わった蓮は ユウみたいに、可愛くて、優しくて だけど、気まぐれに出て来た幽霊みたいなもんで もう居ない奴の為に、皆振り回されてんのかと思うと、なんだか理不尽な気がする 「前世の記憶なんて、また消してやれればいいのにな」 「そうだな…こんな風にならない為に消えてるもんなのにな…」 「シュウの奴、ユウを待ってる間、見てらんなかったぞ」 「だろうな……けど、そんなの知ってても、あのユウが会いに行く程って事だ」 「めんどくさ…さっさと忘れやがれ」 シュウが可哀想じゃん それに、中学の後は知らんけど 蓮だって、精一杯生きたんだろ? なんだって、また辛かった事、思い出さなきゃなんないんだよ 「ところで、あの2人の進捗具合は?」 「知らねぇよ。一応あの忌まわしいグッズは、シュウに引き継いだが、使ってんだかどうかは知らねぇ」 「……ユウが戻って来た時の、シュウの様子は?」 「泣きながら、玄関で抱き合ってたぞ。だから今頃…」 うわぁ… 今頃、あのグッズ使ってんのかな あの可愛らしい色した、忌まわしいグッズ達… 「はぁ…ユウもとうとう処女卒業かぁ…ファーストキスから、早かったなぁ」 「ってか、ユウ自分でイケる様になったのか?」 「なってないんじゃない?多分、自分でイケたら、俺に報告してくるだろうな」 「どんな教育方針だよ…キモッ…」 改めて考えたら ユウって、性欲とかと無縁な感じがする 「ユウって、ちゃんと感じれんのかな…」 「ユウは、通常の5倍人より感じるぞ」 「えっ?!マジで?!」 「そもそも、相当なくすぐったがりだしな。お前、覚えてないか?小さい頃遊んでる時、くすぐったがって、ユウが転げ回ってたの」 「そんな事あったか?」 ユウが転げ回ってた… ユウが… 「きゃははっ…やはっ…やっ………はぁっ…はぁっ………ゃっ……」 「ユウ!」 「あっ!思い出した!なんか…すっげぇ小さい頃じゃね?」 「そう」 「普通に遊んでて、笑いながら転げ回ってたのに、ユウの様子がおかしい事に、おばさんが気付いて…」 「ユウは、くすぐった過ぎて、苦しくて、上手く息出来なくなってたんだ」 「ヤバっ…」 「それから、ユウをくすぐって遊ぶのは、なんとなく禁忌となった」 怖っ… 子供の遊びで殺人事件起きかけてんじゃん?! 「今でも、少し触れるだけで、かなりの反応だ」 「お前…やめろって。ユウの教育上良くないぞ?全ての兄弟は、そういうものだと思い込むだろが」 「いいんだよ。ユウの周りは、なんとなく察知してくれるから」 「…っそ」 まあ…だからこそ この歳まで、色んな事知らずに来たんだろな いいんだか、悪いんだか 「とにかく、ユウは感度抜群だ。恐らく通常より早く開発が進む」 「リゾート計画でもあるまいし、もっと言い方ねぇのかよ」 「あれ以上感じる子になっちゃったら、どうしよう…」 「日常生活が困難になるんじゃね?」 「いや、そんな事より…ユウを狙う奴らが、わんさかと増える」 「……御愁傷様」 兄馬鹿だ いや、馬鹿兄だ まあ…弟なのに、そういう心配しちゃうくらい、可愛い奴ではあるが… こいつの場合、行き過ぎだ なんだかんだと話してるうちに 「15:30か…そろそろ2人して寝てる頃か…」 「キモッ…想像すんなキモ兄貴」 「よし、行くか」 「は?何処に?」 「お前の家に決まってるだろが」 全然決まってる意味が分かんねぇけど 絶対、行かない方がいいんだけど そりゃ、俺だって 可愛い弟は気になる訳で… なるべく音を立てない様に… 静かに階段を上がってくと… あれ? なんか聞こえる シュウの声だ 大和と顔を見合わせて シュウの部屋のドアへと、耳を当てる 「ユウ…ねぇ、ユウ…」 「…………」 「ユウってば…聞こえてる?」 「…………」 「起きて…ユウ!」 え? 何事?! コンコン 「シュウ?どうかしたのか?大丈夫か?」 「朔兄…ちょっと来て」 大和と頷いて、ドアを開ける 「どうした?」 「大丈夫か?」 シュウが起き上がってて 隣にはユウが眠っている …様に見えるけど? 「朔兄…大和…ユウが…全然起きてくれない」 「普通に熟睡してんじゃねぇの?」 「ユウ?」 ?! ユウ…肩見えてるって事は、服脱いでんのね? よく見たら、ドアの傍に、ユウの全てと思われる脱け殻が転がってるわ つまり、今ユウは…スッポンポン! 「ごめん、大和……ユウ…全然収まらなくて…絶対ユウにとって凄く体に負荷かかるって、分かってて…っ…2回…イカせちゃったんだっ…」 え… マジっすか 「そっか…その後、ずっと寝てるのか?」 「うん…俺も寝ちゃってたから…けど、目覚めてから、心配になって…いくら呼んでも全然反応なくて…ユウ…っ…大丈夫かな…」 「大丈夫だよ。ユウ…ほら、シュウが心配してるぞ」 大和が、ユウの耳元で話しても、ピクリともしない 「ユウ…ユウの大切なシュウ…泣いてるぞ?」 「……ん」 「ユウ!」 「ほら、シュウが泣いてる…泣いてるシュウは、ユウがどうにかしてやんなきゃだろ?」 「……シュウ…手…」 「~~っ…ユウ…良かった」 ピクリともしなかったユウが 目も開けないまま 重そうな腕を持ち上げて シュウが手を握ると 「……泣くなよ…シュウ…」 「良かった…ごめん、ユウ…」 「ん……大丈夫……大丈夫だよ…」 まるで、夢の中で話してるみたいだ 「ユウ…起きてんのか?」 俺の隣に戻って来た大和に聞く 「さあな?けど、夢の中だろうとなんだろうと…シュウが泣いてんのは、ほっとけないんだろ」 「なんか…すげぇな」 なんだ 全然大丈夫じゃん 前世だかなんだか知らねぇけど ピクリともしないのに シュウが泣いてるってだけで、意識も曖昧なのに動き出すんだから シュウ…自信持てよ すげぇ繋がってるよ

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