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最高で最悪な日

色んな問題が落ち着いて 平穏な毎日が戻ってきた 「ユウ…そろそろ行ける?」 「うん!」 今日は、久しぶりにシュウとお出かけ シュウには、いっぱい迷惑と心配を、かけてしまった 「シュウ、このゲームやろう!」 「うん」 「ユウ、これ食べてこう」 「うん!」 楽しい 楽しい!楽しい! 久しぶりに、なんか思いっきり遊んでる! 「楽しいね!シュウ!」 「うん」 シュウも楽しそう きっと、他の人達には、そんなに楽しそうに見えてないかもしれない でも、俺には分かる なんとなく伝わってくる、この感じ 俺とおんなじ 楽しいって感じ 「シュウ、ちょっとトイレ行って来るね」 「うん」 今日は、シュウもよく笑ってる 良かった シュウが楽しいと、俺も嬉しい トイレに入ると、高校生位の人が2人 手洗い場の鏡で、髪を整えながら、話している 「なんか、おもしれ~事、ね~かな~」 「あいつも、そろそろ飽きてきたしな」 「マジで。反応毎日一緒だし…なんか、ねぇかなぁ…」 「次のターゲット探すかぁ…」 分かんないけど… なんか、良くなさそうな話に聞こえる さっさと出よ 用を足して、手を洗ってると… 「あ~~…面白くすりゃいいんだよな」 「…あ~!そうそう…面白くすりゃいいんだよ」 「お前、なんか持ってる?」 「あ~…ハンカチくらいしかねぇや」 「まあ…突っ込んどけば、大丈夫じゃね?」 ハンカチを、突っ込む? なんの話だ? とりあえず、早くここを出よう さっさと、ペーパータオルで、手を拭いて ゴミ箱に捨てたところで 「っ?!」 急に、両手を後ろに回されて掴まれた 「なに…っ!!」 口ん中… ハンカチ突っ込まれた ハンカチを突っ込むって… これの事?! 俺の口に突っ込む話してたの? なんで? こんな人達知らない 「ん~~っ!ん~~っ!」 「はいはい、静かにしようね~」 そのまま、何かで両手を縛られた 誰か… 誰か来て! 殺される… 「んっ!んんっ!」 「お前、いい声で啼くな」 「マジで。あいつより、ずっといいや」 そのまま、トイレの個室へと、引き摺りこまれる 個室入っちゃったら… 見付けてもらえない 「んん~~っ!んん~~っ!」 誰か! シュウ! 「よしよし。もう声はいいわ」 「ちょっと、静かにしよう…な!」 ガッ! 「っ?!」 左の頬を殴られた…んだと思う 突然の痛みと衝撃で 膝から崩れ落ちた 目の前が、チカチカする 頭がクラクラする 無理矢理、後ろから抱き抱えられる様に、立たせられたけど 全然力、入らない 声…出さなきゃ 逃げるなんて無理 声にならなくても 出さなきゃって思うのに 口の中にハンカチ入ってるせいで ちょっとくらいの力じゃ 全然音にならない 俺… 死ぬのかな もう1人が ニヤニヤしながら、俺のシャツのボタンを開けていく 何されるのか分からない恐怖 勝手に涙が溢れてきた 「お?泣いてんの?いいね~」 全然… 悪い事してるだなんて、思ってない 遊んでる 楽しんでる 待って よく考えろ 殺人なんて、そんな簡単にする事じゃない ズボンのファスナーが下ろされ 下着と共に、下ろされていく なんか… そういう事されるのかもしれない だけど、そうだとしたら 殺されはしない 「ふ~~ん?いいじゃん」 ニヤニヤしながら、俺の体を触ってくる 「っ!……っ…~~っ…」 これを我慢するだけで終わるなら 我慢すればいいだけ 死ぬ訳じゃないなら 堪えられる きっと、そのうちシュウが気付く 探しに来てくれる それまでの辛抱だ 「んっ!」 「あれ?胸感じんの?」 「んっ!…ん~~っ…んんっ!」 「いいね~」 執拗に胸を弄ってくる 大丈夫 痛い訳じゃない これは、くすぐったいの延長だ 「じゃあ、こっちも気持ち良くしてやろうな?」 そう言って、俺を後ろから支えてる奴が 俺のアソコを握ってきた 「んっ!」 頑張れ もう少し 絶対シュウが来る 「ちゃんと声聞けねぇの、勿体ねぇな~」 そう言って 胸を弄ってた奴が… 舐めてきた 「~~~~っ!…っ…っ…」 声…出したい 声の代わりかの様に 涙が溢れてくる 「すっげ~…こっちも、勃ってきたわ」 「最高だな」 どんどん力抜けてく 頭…回んなくなってくる シュウ シュウ…助けて! その時… 足音が聞こえてきた シュウ? 2人共、ピタリと動きを止め 既に声の出せない口と、鼻を塞いできた 苦しい… 助けて… 「ユウ…居る?」 シュウ! シュウだ! 「っ!…~~っ!…っ!」 苦しいけど なんとか、気付いてもらわなきゃ… シュウ! 「ユウ…居ない?」 居る! 此処だよ シュウ! 「~~っ!…~~っ!」 くそっ! ほんの少しでも、何か俺だって分かればいいのに… シュウなら、すぐに気付くのに シュウなら… あ…… 小さな頃の、あの感覚 何も言わなくても分かってた あの感覚 気持ち…落ち着かせて きっと分かる 痛いも、怖いも、全部排除して ただ、シュウと通じ合ってる あの感覚だけを意識して……… 「……ユウ」 通じた?! シュウ! そう思った時… シュウの足音が… 遠ざかって行った ……嘘 絶対、シュウは…分かってくれる筈で シュウなら、絶対…… 「~~~~っ…」 「あ~らら…お友達、行っちゃったね~」 「さあ、続き…しよっか」 一気に、色んな力を失った気がした もう… きっと、こいつらが遊び終わるまで… 死にはしない 殺されはしない それだけ考えろ 堪えられない感覚と 吸いきれず、吐ききれない呼吸で 頭が、ぼ~~っとしてきた カチャカチャという音がして 後ろに、生ぬるい物が、当てられた もう… 何が何だか分からない タッタッタッタッ ? 誰かが、走って来た? ガチャン! 個室のドアが、勢い良く開く音 誰かが、急いでトイレに駆け込んで来たのかな でも、ガチャガチャ…ガチャガチャ… なんか、凄い音… 俺を支えてる奴が、手を離すと 立ってる力なんて、とっくに無くて その場にしゃがみ込むと 目の前に、目の前の奴の、アソコが出て来た 何? 今度は、何が起こるの? ガン! ビクッ! 何? 何かで…ドア叩かれた? 目の前の奴も、驚いて見てる ガン!ガン!ガン!! 何? 何なの? これ以上… 何が起こるの? ぎゅっと目を瞑ってると ドン! 「っ!」 今度は、体当たりしてきたみたいな 「おい!何やってんだ!うっせぇぞ!」 目の前の奴が、そう叫ぶ 後ろの奴も、2人してファスナーを上げながら、顔を見合わせている 俺は、ただ 隅っこにしゃがんだまま 何でもいいから、早く終われって願ってた 何度目かの体当たりで バキッ!って、聞いた事もない音が聞こえて ドアが開いた 少しだけ、目を開けた そこに立ってたのは… 「ユウ!」 「……~~~~っ!」 シュウだった 「なんだ?!てめぇ!」 2人が、シュウに向かって、殴りかかろうとする けど、シュウが、掃除用具を武器に構えている バタバタ…バタバタ… 「おい!大丈夫か?!」 なんか… 何人かの人達の足音 「くっそ!逃げるぞ!」 「覚えてろよ!」 「え?あっ!待て!」 「捕まえろ!」 少し離れたとこで、そんな声が聞こえてて 俺の目の前には、シュウが居て シュウが…助けに来てくれた 良かった… もう…大丈夫… 色んなものが、極限を超えてて シュウの顔を見た途端 全ての力を抜いて 俺は、意識を失った 「ユウ!ユウ!」 ごめん、シュウ… せっかく、楽しい休日だったのに なんで、俺ってこうなのかな もっと、大きかったら…強かったら… こんな事してやろうとか、思われないのかな シュウの声が、泣き声だ 慰めてやんなきゃなのに… もう… 少しも動けないや 俺は、意識を失ったから、全然知らないけど この後、救急車呼んで、警察呼んで 大騒ぎになったらしい シュウが、すぐに俺の口と手を解放して 衣服を整えてくれたお陰で 俺のフルチン姿は、公衆の面前には、晒されずに済んだらしい それどころじゃないだろって話だけどさ やっぱ、恥ずかしいじゃん シュウや大和の前じゃないんだからさ 所々、ほんの少し意識が戻ってたのか 何度か、シュウの泣き顔を見た気がする だから… 少し意識のある間は、シュウの手を握ってやろうとしてた気がする もう、泣くなよ シュウが来たから、大丈夫って思えたんだから もう、大丈夫なんだから 泣くなよ…シュウ…

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