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覚えのない恐怖

なんだか、頭の中がモヤモヤしたままだ とりあえず、無事帰って来れたし、いっか シュウが心配だけど 朔兄が居るから、平気かな 部屋着に着替えながら気付く やっぱり頬っぺた腫れてきてるかな 頬っぺたの内側も少し痛いかも 消えた記憶の中で、何が起きたのか ま、生きてるし 五体満足なんだから、大した事じゃないと、思う事にしよう ご飯食べ難くない?とか 痛み強くなってない?とか 皆に心配されながら、ご飯を食べ終わると 「ユウ、心配だから一緒にお風呂入ろ」 全然大丈夫なんだけど 「うん」 大和と入るのは嬉しいから 一緒に入る事にした 「大和、ちょっとトイレ寄ってく」 「じゃあ、着替え持ってくよ」 「ありがと」 大和に着替えを渡して トイレに入って、鍵をかけた ぞわっ… え? なんか… 急に寒気?なんだ? なんか… 怖い! 鍵を開けて、ドアを開けてみる 「?…ユウ?どうした?」 どうした? 分からない でも… 凄く心臓が、ドキドキしてる ただ、トイレに入って、ドア閉めただけ 何が起こったんだ? 「ユウ?大丈夫?」 大和が、戻って来てしまった 「大丈夫」 「なんか…顔色悪いよ?どうかした?」 「よく分かんない。多分…大丈夫」 そう言って、ゆっくりとドアを閉める カチャ… ぞわっ… 「っ!」 怖い! ガチャ 「大和…」 「ユウ…どうした?」 「なんか…なんか、分かんないけど…」 「っ!…ユウ…震えてる…」 「え?」 ほんとだ… 手…震えてる 何これ 「ユウ…ちょっとおいで」 「うん…変なの…大丈夫だよ?」 「大丈夫でもいいから…おいで」 「うん」 大和が、優しく抱き締めてくれる あったかい 「ユウ…今日はさ、ユウは覚えてないかもしれないけど、ユウの体…凄く疲れてたり、神経が過敏になってると思うから…沢山甘えさせてあげようね」 「うん…」 「トイレ、誰も来ない様に見てるから、ドア少し開けたまま、入ってごらん」 「開けたまま?」 「うん。俺なら、別にいいだろ?」 「それは、いいけど…」 それで、何か変わるのかな 俺、トイレが怖くなったの? 大和の言う通り、ドアを少し開けておくと ……大丈夫だ 大丈夫なんだけど なんか… この状況に不安なのか なんで不安なのか分からない事に不安なのか 「…大和?」 「うん。ここに居るよ」 「うん」 これじゃ、俺 ドア閉めて、1人でトイレ入れないじゃん ジャー 「大丈夫?」 「うん……」 今だけ? 今日だけ? これが続いたら、普通の日常生活送れないぞ 「ユウ…体洗ってあげる」 頭を洗い終わると、大和がそう言ってきた 「もう、手震えてないよ?」 「うん。でも、何処か気付かない怪我とか無いか、俺がちゃんと見たいから」 「病院の先生、全部見てくれたと思うよ?」 「うん。でも見せて?」 「うん…いいけど」 大和が、体を洗ってくれる 小さな頃に戻ったみたいだ 「よく、大和に洗ってもらった」 「そうだね」 「ちゃんと洗わないで、四葉と遊んでると、大和が俺と四葉の仕上げをしてくれたんだ」 「2人共、凄くはしゃいで、楽しそうだった」 「ずっと大和に、お世話してもらってばかりだね」 「ユウと四葉のお世話は、嬉しいでしかないよ」 首、肩、背中、腕、手 優しく、丁寧に洗ってく 「手首…痛くない?」 「痛くないよ」 「……そっか」 シュウも、気にしてた 手首って… 何処かに擦れたのかな? 「んっ…胸は、くすぐったい」 「ふっ…そうだね。ちょっと我慢だよ」 「胸とか…んっ…腰とか脇とか…っ…大和が洗ってくれる時…逃げてた」 「ユウは、昔から人一倍…いや、三倍位くすぐったがりだからね」 「んっ…」 なんか… ずいぶん胸…洗ってる 時々、お腹とか、腕とか洗うけど 胸を洗ってる時間が、長い…気がする なんか、汚れてる? 別に、いつもと変わりないよな 「大和?もう…いいんじゃない?」 「……ユウ…」 「何?」 「………大丈夫…ユウは…綺麗だから…」 「?…綺麗?」 「ちゃんと…綺麗にしたから…大丈夫だよ」 「……ありがとう」 そう言って 足を洗い出した なんか…変なの 下も、すっかり洗われると 「ユウ、先にお風呂入ってな」 「うん」 チャプン… 大和…俺が、記憶ない間の事 何か知ってるのかな 父さんと母さんは? シュウは、知ってるんだろな シュウ… なんか、シュウを 凄く呼んでた気がする 頬っぺが腫れてて、口の中切れてたら 1番考えられるのは、誰かに殴られた シュウは、居なかったって言ってた トイレ行くって行って…って、シュウ言ってた トイレは行ったのかな トイレの中の出来事? それとも、その行き帰りの出来事? トイレ… チャプン… あ… 「大和の背中洗おうと思ってたのに、ぼ~っとしてたら、終わってた」 「いいよ。よいしょ…っと」 「ふっ…こっち向き?」 「そうだよ。ユウ…痛くない?」 向かい合わせに座った大和が、俺の頬に触れてくる 大和が痛いみたいな顔してる 「そんな痛くないよ」 「そう?ユウは…凄く我慢強いからな…」 「救急車で運ばれたりしたら、大騒ぎだったでしょ?四葉…話聞いた時、大丈夫だった?」 「凄く心配はしてたけどね…ユウは…いつも、誰かの心配ばかりだね…」 そう言って、大和が抱き締めてくる だって 俺は、誰よりも心配されて、皆に守られてるから 「…シュウ…俺が怪我して倒れちゃったから、心配し過ぎて、気分悪くなったのかな…シュウが急患室で、休まなきゃならないなんて、よっぽどだ」 「そうだな…ユウが具合悪くなるのは、何度も見て来ただろうけど…怪我をして、意識を失ってるなんて…初めてだろうから…」 そっか 見てなかったなら、どの位の怪我か、分かんなくて もしかしたら、死ぬかも…とか、思ったのかもしれない 「相当びっくりさせちゃったな。帰って来た時も、凄く心配して、俺の傍に居たがってたんだ。大丈夫だと思うけど…後で朔兄に、伝えておいて?」 「分かったよ。ユウも……今日は、一緒に寝よ?」 「え?…うん。俺は、嬉しいけど…」 「俺も、凄く心配したから…今日は、一緒に寝させて…」 「うん…心配かけて、ごめん」 泣いてるんじゃないかな そう思う様な 少し掠れた様な声だった 大和が、俺達の前で泣くなんて、あり得ないんだけどね 「いいなぁ…四葉も、一緒に寝たいなぁ…」 「ごめんね、四葉」 「夜中に、凄く痛い所が出て来て、トイレ行くの支えたりなんて事が、必要になるかもしれないからね。それで、寝不足になったら、俺が明日休める様に、日中は四葉に任せるよ」 「うん!四葉に任せて!」 上手いなぁ…大和 ごめんね、四葉 四葉も、同じく心配してくれて、何か手伝いたいって、思ってくれてるんだよね 「四葉、ありがとう。おやすみ」 「おやすみ、ユウ。ちゅっ」 痛くない方の頬に おやすみのキスをしてくれた 「ユウ…夜中でも、何時でも、何かあったら、起こすんだよ?」 「分かった。おやすみ、大和」 「おやすみ」 てっきり、シュウ専用みたいになってる布団、敷くのかなと思ったら 一緒にベッドで、寝てくれた ほんの少し、心配だった 部屋のドア閉まったら また、怖くなるんじゃないかって でも、大丈夫だった たまたまだったのかな? それとも、トイレが問題なのかな… トイレ… トイレの中で…俺は、殴られたのかな 全然覚えてないや 一体、誰に殴られたんだ? なんで? 知り合い? 全然知らない人? 頭使ってたら、眠くなってきた まあ、いいや… また明日…考えよう… ………あれ? ここ…何処? なんで俺…何にも着てないんだ? クスクス… くっくっくっ… 笑い声… 色んな人が…こっち見て笑ってる 俺が…裸だからだ なんか着なきゃ ? なんだ? 全然、体動かない あれ? そうだ、俺… マネキンだ この店のマネキン 動く訳ないんだ 誰か、服着せてよ なんにも着てないから、皆笑ってる 何でもいいから、着せてよ ……あっ! 少し離れた所に 泣いてる人が居る シュウだ シュウが泣いてる 行って、手握ってあげないと 「ユウ……なんで…皆に見せてるの?」 え? 皆に… だって…仕方ないよ ここに、こうして居る事しか出来ないんだから 「なんで…皆に触れられてるの?」 え? あ…皆、来てくれた きっと、服着せてくれるんだよ 「ユウ…っ…やめて……やめて…」 なんで、泣くんだ? 泣くなよ 「ユウに…~~っ…触れないでっ…」 っ?! なんか… っ…やだ… 服…着せてくれるんじゃないの? なんで… やめて… シュウが泣いてる そんな風に触れないで やめて… シュウが泣いてる そんなとこ触れないで やめて… 誰か…誰か… 助けて…

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