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覚醒

怖い夢を…多分見た だけど、すぐに忘れた 頭の中にある、モヤの中に消えてった 大和が抱き締めてくれて 大和の温もりの中で 今度は、ぐっすりと眠った チュチュチュン… チュンチュン… 朝? 「ん…」 もう少し、眠ってたいな なんか、寝心地いい あ… 優しく頭撫でて… そっか 大和と寝たんだった 大和の胸の中 気持ちいい 少しだけ、頬を擦り寄せると また、頭撫でてくれて… また、眠っちゃいそう… 久しぶりに、大和と寝たから 起きちゃうの、勿体ないな もう少し、寝てるフリしよ… 「ふっ…いっぱい眠って、いい子だな」 いい子… 褒められた いっぱい眠ってって… じゃあ、ほんとに寝ちゃうよ? 「起きたら、少し頬っぺた冷やそうな」 頬っぺた冷やそうな? 「ユウは、我慢強いけど…痛いはずだからね」 痛い… そっか 頬っぺた腫れてんだっけ っ! そうだ…シュウ! 「ユウ?」 「あ…おはよう、大和」 「おはよう…どうした?大丈夫?」 「うん。そろそろ起きる」 シュウ…心配して来たがってた 大丈夫だよって、会ってあげなくちゃ 起きて、着替えをして 「ユウ…下行こ」 「うん」 大和と下に下りて いつも通り、洗面所に行って その後、いつも通りトイレに行って… 「あ、ユウ…」 「?」 「……心配だったら、ドア開けとくんだよ?俺、ここに居るから」 そうだった 昨日…怖くなったんだった 「うん、分かった」 なんでだか、分かんない 今日は、大丈夫なんじゃない? 深く考えずに、ドアを閉めて、鍵をかけると っ! ……なんで 何なの…これ 何も起きてないのに… 鍵を開けてみる だけど… やっぱり怖くて… ガチャ… 「ユウ…大丈夫?」 「………やっぱり…開けといていい?」 「いいよ。ちゃんと、ここに居るから」 「うん……」 ほんの少し、開いてるだけ なのに、全然違う 何なの? 自分で開けたのに… 不安になる 開いてるよね? 大和…居るよね? 「大和…」 「うん。ちゃんと、ここに居るよ」 「うん…」 トイレに関する事? それとも、何処か個室に関する事? いや、きっとトイレなんだよ トイレの…個室? ゾワッ… 「っ…」 トイレの個室… きっと、そうなんだ そこで、殴られたのか? ジャー 「ユウ…大丈夫?」 「うん…俺…トイレの個室で殴られたりしたのかな?」 「…どうかな…詳しい事…分からないから」 「……俺、喧嘩なんかした事なかったけど…よく、この位の怪我で済んだね?シュウが、助けに来てくれたのかな」 「……その辺も…シュウも落ち着いたら…話聞いてみようね」 「うん…」 蓮14年+結叶14年 喧嘩経験0 ついでに、親に叩かれた事もない 頬っぺた腫れる程、殴られたら そりゃ、凄い衝撃で それで、記憶まで消したのかな 「おはよう…ユウ、眠れた?」 「おはよう、母さん。大和のお陰で、眠れたよ」 「ユウ…痛くないのか?」 「父さん…心配かけて、ごめん。でも、見た目程痛くないんだよ。普通に話せる」 「ユウ~~!大和!おっはっよ~~!」 四葉が、部屋から出て来るなり 走って、俺達の元へ来て おはようのキスをしてくれる 「おはよう、四葉。今日も朝から元気だね」 「ユウ…頬っぺた痛い?」 「少しだよ。心配する程じゃない。ぐっすり眠れたし」 「うん…でも、冷やす?痛そうだよ?」 元気いっぱいの四葉 そして、俺よりしっかり者だから すぐに、兄である俺の心配をしなくてはならない 「大丈夫。ほんとに痛くなったら、冷やしてもらおうかな」 「うん!いつでも、四葉に言って!」 「ふっ…ありがと」 ごめんね しょっちゅう心配かける、兄ちゃんで 人の手で殴って、こんなになるのかな 凄いな 強い人だったのかな なんで俺を、殴ろうと思ったんだろ 俺、ぶつかったか何かしたのかな トイレ行った時に ぶつかった人? 「あ~~…面白くすりゃいいんだよな」 っ! あれ…? これ…誰の言葉だっけ? なんか凄く…不快な感じのする… 「ユウ?どうした?」 「…え?」 気付くと、家族全員が俺を見てた 「ユウ、ビクッてなったよ?大丈夫?」 「ああ…大丈夫だよ」 大丈夫だけど なんだっけ、あれ 誰だっけ あれを思い出したら… きっと、頭のモヤモヤを取り除ける気がする どんな人だった? 面白い事? 何だっけ? ちょっと待って 消えないで… 「ユウ…零れるよ」 「…え?」 見ると、俺はみそ汁のお碗を持ってて 傾いてたのか、大和が反対側から支えてくれてた 「ごめん…なんか…色々考えてると、すぐにぼ~~っとする。忘れてる事があるせいで、頭がモヤモヤしてるんだ」 「うん。ぼ~~っとしててもいいよ。ちゃんと傍で、見ててあげるから」 「うん…」 考えない様にと思っても 気付くと、手が止まってて ダメだ、これ 一気に食べちゃお 手を止めない様に 黙々と、ひたすら、朝ごはんを口に掻き込んだ 「ユウ…冷たいヤツ貼る?」 隣に座った四葉が 心配そうに見上げてくる 「貼らなくて大丈夫だけど、貼った方が安心する?」 「ううん…ユウが要らないなら、いい」 「…四葉、おいで」 「うん」 ゆっくりと、俺の膝の上に乗って来る 「大丈夫?ユウ…」 「大丈夫だよ。四葉をぎゅ~~っして、元気パワー貰おうかな」 「いいよ!いっぱいあげるから、いっぱいぎゅ~~っしていいよ!」 「ははっ…ありがと」 怖いのか?俺 怖くて…閉じたのか? こんなに、あったかい人達に囲まれてるのに 俺の覚えてない俺の事で この、あったかい人達を不安にさせてる ピンポ~ン 四葉が、俺の上から飛び降りて、走ってく 誰が来たか、分かってるからだ 「シュウ…朔兄も、おはよう」 「ユウ…」 昨日、別れた時とおんなじ 今にも、泣きそう 「おお、元気そうだな。顔、すげぇ事になってるけど」 「喋ってると、少し痛いくらいだよ」 朔兄の この、遠慮のないとこが嬉しい 頭ん中モヤモヤして、スッキリしない話を、シュウにしてると 「なんか、こう…もう少しで思い出せそうな気がするんだけど…」 「思い出さなくていい!」 びっくりした こんな…怖く怒るみたいなシュウ… こんな強い口調のシュウ… 隣の朔兄でさえ、びっくりしてる そんなに? でもさ、シュウ… 俺の事なのに、俺だけ忘れてんのおかしくない? 俺の事なのに 俺が忘れて、シュウが泣きそうなの、おかしくない? 四葉が、皆でゲームしようって言い出した 四葉は、皆が居る時 ってか、朔兄が居る時、このゲームをするのが好きだ 朔兄は、四葉相手でも手加減なし 本気で遊んでくれるから 「うおっ!マジか!」 「へっへ~ん…あっ!」 「へっ…油断してっからだ」 「んむ~~!」 四葉と朔兄を いや、皆が四葉を応援して 2人を見守って、あったかい光景… だけど、ずっと伝わってくる シュウが、ずっと泣きたがってる 「不思議なのよ~?ユウとシュウ君は、ほんとの赤ちゃんの頃から、同時に笑い出したり、同時に泣き出したりしてたの。どっちかが先にじゃなくて、同時なのよ。不思議よね~」 いつだか、母さんが言ってた 俺にとっては、不思議でも何でもなかった だって、すぐ隣に居るシュウから伝わってきてたから もちろん、赤ちゃんの時の記憶なんてないけど 隣にシュウが居たら 痛いとか、悲しいとか、嬉しいとか、楽しいとか 言葉に出す前に伝わってくる きっと、お腹空いたとか、なんか不快を感じると、俺もそれを感じて 楽しい夢見たりすると、俺もそれを感じて それは、お互いが感じてる事だから そりゃ、同時に泣くし、笑うよなって思った 今も残るその感覚が、教えてくれる シュウは、ずっと泣きたい 悲しいと…少し怒ってる様な… 泣きたいが、伝わってくる 泣くなよ、シュウ 俺は、こんなに元気なんだから だから、泣くなよ… もう、泣くなよ ああ…そうだ あの時も俺… シュウが来たから、大丈夫って思えたんだから もう、大丈夫なんだから 泣くなよ…シュウ… そうだ あの時、シュウ泣いてて… そう… シュウが来てくれたから あ…… トイレ…… 凄い音…して…… 怖くて…怖くて… だけど ドアが壊れたら… シュウが来てくれて… そう… 何か言ってあげたかったけど 言えなくて 安心したら、意識失ったから…… ……違う 声…… 声が… シュウって、叫びたかったのに 叫べなかった 口… 口ん中… なんか…… 「っ……っ…っ…」 「ユウ?」 なんか… 口ん中… 「~~っ…ケホっ……ケホケホっ…」 「ユウ?苦しいのか?」 「ユウ!どうしたの?」 なんか… 口ん中に入ってる感覚 出したい… 「っ…~~っ…ゲホッ…ゲホッゲホッ……ゲホゲホっ…」 「母さん…喘息?」 「違うと…思うけど……一応、吸入しよっか」 違うんだ 苦しくない ただ…出したい 出したい…… 「~~っ!」 吐く! トイレに駆け込む後ろから 皆の心配そうな声が、聞こえる 思いっきり吐いた 吐いて…吐いて… 涙と鼻水が出てきて 訳の分からなくなった頭ん中に 次々とモヤの中の事が思い浮かぶ 「~~っ…うっ…っ…うぇっ…」 面白そうに…笑ってた 遊んでた 「~~~~っ…うっ…~~っ…」 悔しい だって…シュウが悲しむから 俺が、抵抗出来なかったせいで… 「ユウ…大丈夫か?」 ごめん、大和 今…何も言えない 「うっ……~~っ…うっ…」 落ち着いて…俺 生きてるから 皆と居れてるから 大丈夫だから 死んで終わる事考えたら、全然だろ? ほんの一瞬の事だ あんまり怖くて、驚いたけど もう、終わったんだ 俺が元気なら 俺が気にしなきゃ シュウもきっと、元気になる ほんの一瞬の事に捕らわれるな 前を見ろ 穂積 結叶は、きっと、まだまだ続くんだ あんな奴らの一瞬で 壊れてたら、勿体ないだろ せっかく 14歳から先、生きれんだぞ そんなんで、勿体ない時間過ごすなよ! 「ユウ…」 「大丈夫…大和。落ち着いた」 ほら、どれだけの人に包まれてんだよ あんなの… すぐに、気にしない様にしてやる なんだよ、シュウ… あんなんで、いつまで泣いてんだよって 言ってやるからな

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