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傷ついて、心配された先は…
衝撃的な記憶が、蘇って
そりゃ、忘れちゃおって思うの分かる位のもので
だけど…
ゴロゴロ…ペッ
「ユウ…大丈夫か?」
「…ユウ」
大和と、シュウまで心配で俺んとこ来た
急に走って吐き出したからね
「はぁ…大丈夫。なんか…中途半端なのが、1番不安で怖かったかも」
「ユウ…思い出したのか?」
「っ!…思い出さなくていい!」
シュウは、まだずっと泣きそうなままで…
「思い出しちゃった」
そう言ったら
「っ…~~~~っ…ごめんっ…ごめん、ユウっ…ああなる前に…助けに行けなくて…っ…ごめんっ…」
痛い
シュウの内側が…痛いよ
「あんなん初めてだからさ、気付いたら、声出せないし、動けなくなってて…心配かけてごめん。よく声出せなかったのに、俺があそこに居るって、確信したな?」
「っ…ユウの気配したっ…ユウが居るのにっ…俺の声に返事しないのっ…おかしっ……~~っ…ごめんっ……遅くなって…」
分かってた
シュウなら、気付いてくれるって
やっぱりちゃんと、気付いてくれてた
「シュウ…見てよ」
「っ…何?」
「俺さ、生きてるじゃん?明日も、きっと来年も、皆と過ごせんだよ。めちゃくちゃ怖かったし、ちゃんとした理由も無いのにってのは、腹立つけどさ……あんな奴らのせいで、あんな少しの時間奪われただけで、これからの俺達の時間まで、どうにかなんて出来ないよ」
「~~っ…ユウっ…」
28年で1番怖かった
だけど、そんな事絶対起こらないって、決まってる人なんて居ない
これからも、まだまだ続くはずの、俺の人生の中の、たった1つ
しばらく、トイレが怖かろうが
しばらく、怖い夢見てしまおうが
そんなん、すぐに助けてくれる人が
俺の周りには、いっぱい居るんだから
「やっぱ、ユウは強いな。あんなの、考える時間与えてやるな。ユウの毎日は、楽しくて、騒がしくて…嬉しい事も、沢山あって忙しいんだから……いつだって、俺達が居るんだから」
「うん…しばらくは、トイレ大和と一緒じゃなきゃダメかもだけど…」
「そんな時もあったなって…笑える日が来るよ」
「うん」
俺が元気なら、シュウも少しは安心
だけど
きっと、シュウの気持ちは、そんな簡単なもんじゃ…ないよな
甲斐にキスマークを付けられただけで、あんなになってたんだ
あんな格好してたら、何された?って…不安に思ってるよな
「大和…シュウに…ちゃんと話したい」
「っ!…ユウ!」
「……ユウ…もう少し…落ち着いてからじゃなくて…今がいいのか?」
「シュウ…俺を助けに来てから、ずっと…俺が呑気に記憶失くしてる間も、苦しんでたから」
「いい!話せば……思い出す…話さなくていい!」
でも、多分ほとんど思い出しちゃったよ、シュウ
それに、後から後から…怖かった事、思い出すよりさ
ちゃんと一回終わらせた方が、いいと思うんだよ
何だか分かんないのに、底知れぬ不安とか、恐怖とか…
それはそれで、怖いし
なんて言うか…
自分の一部が欠けてるって、ぼ~~っとしてて
ちゃんと生きてないみたいなんだ
「シュウが聞きたくないなら、いい。だけど、シュウも知りたいなら…ちゃんと話して、俺達の中で、一回終わらせたいって思う」
「~~~~っ…ユウ…思い出して…話して…大丈夫なの?」
「俺が大丈夫じゃない時なんて、今までも、どんだけあった?いつだって、皆が居てくれたから、大丈夫だったんだよ」
俺なんか、1人だったら、何度乗り越えられない事が、あった事か
皆と同じ速さで歩けなくたって
皆より休む事が多くたって
皆が、いつも、あったかく支えてくれたから、今俺は、皆と同じ場所に居れる
「~~~~っ…聞きたいっ…っ…ユウがっ…大丈夫なら……~~~~っ…ユウにっ…ユウにっ…何してっ…~~っ…ユウのどこっ…~~っ…」
ずっと我慢してた物が
シュウの瞳から、零れ落ちる
「ん…ちゃんと話すから」
シュウを、ようやく抱き締めてやる
「大和…2人で…話せるかな?父さんや母さん…は、まあ…後で分かるだろうけど…四葉には、ちょっと…聞かせたくない」
「このタイミングで…心配だとは、思うけど…話してみよう」
「ありがとう…」
きっと、皆心配してる
シュウだけじゃないのは、分かってるけど
ごめん
シュウが…誰よりダメージ大きいんだ
俺が…誰よりシュウを、元気に出来るんだ
「いいと思う。シュウ君が、誰よりも先に聞くべきだよ」
意外過ぎた
シュウと2人で話したいって言ったら
皆が、静まった中…
四葉が、そう言った
「でも…今、思い出したばかりなのに…」
「シュウ君も、ほら…また、苦しくなるかもしれないし、もう少し落ち着いてからの方がいいんじゃないか?」
父さんと母さんの心配も、言ってる事も、もっともだ
だけどさ…
「俺と朔が、俺の部屋に居るよ。何かあったら、すぐに来ればいい。な?」
「ああ…俺は、シュウの過呼吸も一度見てるし、大丈夫だ」
そんなこんなで、皆の協力の元
やっと2人になれた
パタン
「~~っ…ユウっ…」
ドアが閉まった途端に、シュウが抱き付いてきた
「ん…ごめん…俺だけ勝手に忘れてて…」
「~~~~っ…ユウっ…ユウっ…」
「ん…ちゃんと居る」
朔兄が、教えてくれた
急に、息しづらそうになるって
ちゃんと、息出来なくて、苦しそうにしてたら、それが過呼吸だって
そうなったら、すぐに呼ぶんだぞって
そんなの…なった事ない
シュウは、病気と無縁で
ずっと元気だったのに
「シュウ…座ろ?」
「……ん」
座る為に離れるのも、不安そうで
しっかりと手を握って、ベッドまで行って
座ると、すぐに抱き締めてきた
「シュウ…苦しくなってない?大丈夫?」
「ん…ユウ…もう離れたくない…」
「俺が、トイレから戻らないから、見に来てくれたんだな……俺は居ないのに、気付いてくれて、ありがとう」
「っ……もっと…早く…」
「そんなの無理だよ。俺の姿も声も無いのに、疑わずに、助けてくれただけで奇跡だよ。シュウにしか出来ない」
「でもっ!…ユウっ…~~~っ…」
ドアまで壊して…
あれ、弁償すんのかな
弁償すんなら、あいつらに請求して欲しい
「俺ね…シュウなら、きっと気付いてくれるって…シュウが来た時ね、シュウ!って感覚を送ってた……んっと…分かる?小さい頃感じてたやつ」
「分かる…あと誰が居るのかは分からなくても、ユウが居る事だけは、ハッキリ分かった」
「おお!やっぱな!絶対シュウなら、分かってくれると思ったんだ。一緒に居たのがシュウで、良かったよ」
せっかく、明るくそう言ったのに
シュウは、ぎゅ~~っと抱き締めてきて
「~~っ…俺じゃなくて…大和だったら良かった」
「なんで?」
「大和ならっ…もっと早くに探しに行ってた…もっと…なんか…効率良く…解決出来てた…」
「……そうかもしんないけど…そもそも、あそこに俺が居るって、分かんないよ。シュウにしか、分かんないよ」
まあ…
大和の場合、どうにかして中、確かめそうだけど…
俺じゃなかったとしても
「ユウがっ…~~っ…ユウがっ…全部っ…見られる前にっ…~~っ…助けられたかもしれないっ…」
「シュウ……」
「ユウをっ…傷つけたっ……ユウの体…っ…勝手に触れたっ……許さないっ!」
「こんな傷…すぐに治るよ」
シュウが…自分が痛いかの様に
そっ…と、俺の腫れた頬っぺたに触れてくる
「そこまで痛くない。そんな顔すんな」
「~~っ…口の中は?…っ…ハンカチっ…~~っ…血…付いてたっ…」
「ちょっと切れただけだ。口の中なんて、すぐ治るからな。普通にご飯食べたよ」
「~~っ…あとは?…あと…」
シュウが、俺の両手を持って
じっと見てる
「手首なんて、全然痛くないよ?」
「縛られっ…~~っ…縛られたままっ…抵抗…しようとしたんだろ?」
「ん~~…抵抗…出来ないだろなって思ったから…」
「…え?」
「だって俺…そんな力無いもん。縛られたまま、男2人に勝てる可能性、ほぼ0だろ?」
「ユウ……」
かなり驚いた顔してる
信じられないって顔してる
「でも、あいつらさ…殴っただけで、あとは…服脱がして…そういう事しか、しなさそうだったから…殺される訳じゃないなら、シュウが来るまで堪えればいいって、思ったんだ」
「っ!…そう…そうだよな……殺されるかもって…思うよな…」
「うん…でも……ただ遊んでるだけみたいだったから…死ぬ訳じゃないならって思って…」
そもそも、面白そうな事探してた
たまたま、弱そうな俺が目に付いたんだ
「……ぃ……して…る」
「ん?シュウ?」
「許さない…絶対殺してやる」
「……な…え?」
「ユウを…そんな目に合わせて…遊んでた?……絶対…見付け出して…殺してやる」
「なっ…何言ってんだよ?!」
殺すって言った
シュウの口から…
「許さない…ユウを…」
「許さなくていいけど、殺すとか言うのやめろよ。そんな事して、シュウが捕まったって、誰も喜ばないよ」
「捕まったっていい…同じ目に合わせてやる…ユウが、どれだけ怖かったか……抵抗出来ない…助けも呼べないのが…どれだけ怖かったか…思い知らせてやるっ…」
「シュウ…」
シュウから…痛いが伝わってくる
殺すなんて…そんな事思う奴じゃない
痛いの無視して…そんな事考えんなよ
ちゅっ
「っ!…………え?」
「シュウが捕まったら…シュウと会えなくなる。シュウとキス出来ない。シュウの手、握れない。シュウと…笑えない。それでも…シュウは満足?」
分かってる
俺を大切に思うからこそ、そこまで恨んでるの
だけどさ…
もう、俺達苦しんだじゃん
この先も、まだまだ…あんな奴らの為に時間使って、苦しんでくの?
「俺は、あんな奴らの事より、もっと楽しい話したい。シュウにも、あんな奴らの事思い出してる時間あったら…俺と何して遊ぼうか、考えてて欲しい。あんな奴らに…シュウの少しの時間も…あげたくない」
「~~っ…だって…だって!許せない…許せない…」
俺だってそうだよ
許せないさ
呑気に、自分を襲う計画聞いてたのに、なんの抵抗も出来ないまま…
こんな大事になって、自分も皆も傷付いて…
でもさ…
弱いのも、馬鹿なのも、仕方ないもん
傷付いて…心配されて…
その先は?
「なんだよ!あんな目に合わせたのに、全然傷付いてねぇじゃん!って、びっくりさせてやる」
「……え?」
「もしも、あいつらが俺を見た時さ…俺が、すっごい幸せそうにしてたら…俺の勝ちだと思わない?」
「……無かった事になんて…させない」
辛そうに言う、シュウの手を握る
「それは、シュウの役目じゃない。ちゃんと、そういう役目の人居るから。シュウは…これからも、俺の傍に居る役目だろ?違うの?」
「~~っ…っ……そうだけどっ…」
俺のせいで、そんなに泣くなよ
どうしてあげたらいい?
「ユウ…優しく…するからっ……俺も、キスしていい?」
「普通に、好きなだけしていいよ」
「~~っ…じゃっ…じゃあっ…~~っ…ユウのっ…体…~~っ…見たら…怖い?」
「…怖い訳ないだろ?シュウが、見ようが、触ろうが、怖い訳ないだろ?」
「…触ろうが?…ほんとに?…触って…いいの?…ユウの体っ…あいつらにっ…ユウの体っ…」
「シュウ……いいよ…好きにしなよ」
それで…そんなんで…
シュウの気持ち、少しでも落ち着くなら
シュウなら、全然
怖い訳ないだろ
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