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怖い訳ないのに
「光!光~~っ…」
最初に、死ってものを感じたのは
何歳の頃だっただろう
あの時は気付かなかったけど
多分あれが最初だったんだ
「蓮…起きちゃった?」
「ん…光君?」
「大丈夫…まだ夜だから寝よう?」
「うん…」
そう言って、母さんは
安心する様に抱き締めてくれたけど
「~~~~っ…光っ…光~~っ…」
「うっ…~~っ…光っ…頑張ったな…頑張ったな…」
頑張ったな?
光君、頑張ったんだ
大変だったけど、頑張って治ったのかな
「お母さん…」
「ん?」
「僕も頑張ったら、治る?」
まさか死んだなんて、分からなくて
母さんに、そんな事聞いてしまった
何度、あんな声を聞いただろう
少しずつ、分かってった
あの声聞いたら、その後その子に会う事はなくて…
でも、誰もそれに触れないのが
なんか怖くて
聞いちゃダメな気がして
1人で入院する様になってから
「郁人兄ちゃん…死んだら、どうなるの?」
「どう…なるんだろね」
「郁人兄ちゃんも、分からないの?」
「誰も分からないんだよ」
「……そうなんだ」
それは…
不思議な感覚だった
誰も分からなくて、不安で怖いのと
誰も分からないんだから、皆同じっていう
不思議な安心感みたいな…
「ユウ…」
「んっ……んっ…」
シュウ…
凄く怖かったよ
痛いと、怖いと、不安と…
パニックになったけどさ
殺されはしないんじゃないかなって、思ったら
少し落ち着けたんだ
「ユウ…~~っ…ユウ…」
「ん…そんな、泣くなよ」
だってさ
やっぱり、死ぬ時は
怖かったんだ
「ユウ…触れていい?」
「いいよ」
痛いも、苦しいも、その全部から解放されるって事より
ほんとに、自分ってものが
この世界から、消えちゃうんだってのが
何にも無くなっちゃうんだってのが
「ユウ…」
「んっ!」
何処に行くの?とか
どうなるの?とか
それよりも
「んっ…んっ……ぁっ…」
俺って存在が
世界から消える
それが、凄く
悲しくて
虚しくて
「んっ…あっ!…シュウ…」
「こんな風に…触れられた?」
「どんなだったか…よく覚えてない」
「そっか…」
だから、きっと…
死ぬ時は、眠たくしてくれるんだ
考えられなくなって
ただ…
皆のあったかい声を聞ける様に…
「シュウ…」
「うん?」
「へへっ…シュウ…好き」
「…俺も…ユウ……っ大好き」
怖いも、痛いも、辛いも
許せないも、悔しいも
この世界に、存在してる証拠
誰かと関われてる証拠
「ユウ……教えて。全部…触れられた?」
「胸は凄く……あっ…そう言えば、シュウさ…大和になんか伝えてた?」
「何かって?」
「一緒にお風呂入った時、大和がやたら胸洗って来たんだよ……あれ?でも、シュウだって知らなかったよな?」
俺と、あいつらしか知らないはず…
「あいつらが出て行って…すぐにユウのとこ行って…ユウの服…服…着せようとしてっ…」
「シュウ…泣くなってば」
「ユウの体っ……確かめた…下は…濡れてなかった……だけど胸っ…~~っ…ユウの胸っ…濡れててっ…~~っ!」
なるほど
凄いな、シュウ…
あの状況で、そんな事考えて確かめるなんて
「だからっ…ユウ…洗ってあげたかったけどっ…出来なかったからっ…っ…朔兄にっ……それだけお願いしたっ…」
「……ごめん…俺、呑気に忘れてて…」
シュウの頭を、よしよしと撫でてやる
「~~っ…忘れてて…良かったのに…」
「自分の事…自分だけ忘れてるって、結構不安だったよ?」
「んっ…でもっ…」
「痛かったなぁ…一瞬、意識ぶっ飛んだ」
「~~っ…」
シュウが、俺の頬に、そっと触れてくる
「でもさ、もう人生でないかもって考えたら、あれも経験だよな。人に殴られるなんて、そうそう無いもんな」
「そんなの…無くていい」
「ん…あんなの、もう二度とゴメンだ」
「胸…~~っ…舐められた?」
シュウの瞳から
涙がボロボロ零れてくる
「うん」
「~~~っ…下は?下も…」
「うん…触られた」
「っ!…~~っ…あとは?あと…っ…何された?」
知りたいんだよな?
知らないと…ずっと気になって、不安だから
伝えた方が…いいんだよね?
「俺を…後ろから支えてた奴が、多分アソコ…俺の後ろに擦り付けてた」
「~~~~っ…っ…~~~っ…はっ…」
「シュウ?大丈夫?」
「はっ…っ…許せない…っ…ユウにっ…~~っ…」
なんか…変だ
シュウの息の仕方…
「シュウ…苦しくなってない?大丈夫?ちゃんと息しろよ?」
「っ…ユウの…っ…~~っ…っ…」
「シュウ…?」
なんか…
なんか変だぞ
「っ…~~~~っ…はっ…~~~っ…っ…」
なんか…
息…止めてるか…吸い込んでるかで…
ちゃんと吐き出してなくない?
「シュウ…息…吐いて」
「~~っ…っ…はっ…~~~~っ…っ…」
「違う。吸うんじゃない。吐くんだ」
「はっ…~~~~っ…っ」
短く吐いても、すぐに長く吸ってしまって
どうした?
「シュウ…」
シュウの顔に近付いて
ちゅっ…と、キスをする
「…っ…はっ…っ…はっ…」
驚いたシュウが、少し息を吐いてる
「シュウ…好きって言って?」
「…す…っ…好き…っ…っ…」
「ん…」
シュウの手を取ると
変に力が入って、冷たくなってた
その手を、俺の胸に触れさせる
「んっ!」
「っ!…ユウ…っ…っ」
冷たっ…
なんで、こんな冷えてんだよ
その手を持って
そのまま、俺の胸のあちこちに手を触れさせる
「んっ…ぁっ……んっ…」
「ユウ?……っ…なっ…何?…っ」
シュウが驚く程に
シュウの息は、整ってきて
そのまま、シュウの手を
下に持ってって
下着の中に入れた
「っ!」
「ユウ!」
「こんなのさ…キスマークじゃないんだから、意味ないと思うんだけど…」
「っ…意味…なくない……あいつらの跡…俺が全部消してやりたい」
あの時みたいに、ちゃんとマークが付いてれば
シュウは、消してやったって思えたのかな
「…シュウが、また笑える様にしたい。ねぇ、シュウ…また、一緒に笑ってたいよ」
「~~っ…ユウ…同じ事…っ…したら…っ…怖い?」
「怖い訳ないだろ?」
「~~っ…ユウっ…」
泣いてるけど
息…整ってきた
固くなってたシュウの手が
シュウの意思で動き始める
「んっ……はぁっ…」
まだ少し冷たい、シュウの手が
俺のアソコに触れながら
ゆっくりと下着を下げていく
「ぁっ…んっ…」
余計な物が無くなって
シュウの手は、どんどん動いてく
「ぁあっ!」
手を動かしたまま
胸を舐め始めた
「ユウ…あいつらに…その声………」
「んっ…ん?」
「……あいつらでも…やっぱ…感じた?」
「あ…えっと………弱くて、ごめん」
「~~っ…ユウが悪いんじゃない……けどっ…~~っ…」
「ごめん…シュ…っ!…あっ!…んんっ!」
ごめんって、謝るのも…実のとこ、あんまり分かってない
ただ、キスマーク付けられた時のシュウが
やっぱり、今みたいに、泣きそうだけど、怒ってるみたいだったから
俺が悪いんじゃないって、言ってくれたけど
怒ってるみたい…
「あっ!…んっ…んっんっ…はっぁあっ!」
胸も…アソコも…
激しく刺激してくる
シュウじゃないみたいだ
シュウが、シュウじゃなくなる位に
傷ついたんだ
「あっ…シュ…~~っ…あっ!」
俺の胸の上にある
シュウの頭を、なんとか撫でる
よしよし
大丈夫だよ
俺もシュウも、ちょっと傷を負っただけなんだよ
夢中になって、俺の胸を舐めたり、キスしたり…
もう…きっと消えたよ
そんなには、されてないんだ
「シュ…はっ…あっ……んんっ!…だっ…ぁっ……大丈夫だよ…」
「……?…大丈夫?」
「はぁっ…ん…そんなに…されてないから…きっと、もう消えたよ」
シュウが、胸から顔を上げて
動きを止めてくれたから
ようやく、ちゃんとシュウの頭を撫でてやる
「………まだ…まだだよ」
「え?」
そう言って、シュウが俺の隣へと横たわる
「シュウ?」
手…握る?
抱き締める?
「俺も…後ろから……いい?」
「後ろから……ああ!いいよ」
そうだった
全部ね…
全部同じ事したら
だいぶ、シュウの傷は塞がる?
「ユウ…そっち向いて?」
「うん」
言われた通りに、シュウに背中を向ける
「っ!」
「っ…ユウ?…怖い?」
「……えっと…びっくり…しただけ…」
だと思う
シュウのものが、後ろから触れてきた時
一瞬、あいつの…生ぬるいものが押し付けられた感覚を、思い出してしまった
「嫌だったり、怖かったら、無理しないで…」
「うん……無理なら…言う」
「うん」
なんでかな
シュウの体だし
怖い訳ないのに
さっきまでと違って、心臓がバクバクいってる
「ユウ……はぁ…ユウ…」
シュウの声
シュウの気配
だから、怖い訳ないのに…
「………シュウ」
「ん?」
「……えっと……自分でも…よく分かんない…けど…」
「……ユウ…震えてる?!」
震えて…るのか
変に力入ってるから…なのかな
「いや…シュウが怖いとかじゃないよ?」
「…ごめん…ごめん、ユウ…」
俺から離れたシュウが
ゆっくりと、俺の向きを変えて
優しく抱き締めてきた
「これ…怖くない?」
「ん…怖くない」
「~~~~っ…ごめんっ…ユウ…ごめん」
「いや、謝るなって。俺も、よく分かんないし」
シュウの顔…見えなくなっちゃうからかな
シュウだって、分かってるのに
時間経ったら…こんな風にならなくなる?
「大丈夫?…まだ、怖い?」
「怖くない。シュウの胸ん中、安全だからな」
「俺の為に…無理させて、ごめんっ…ユウにっ…~~っ…怖い思いなんて…させたくないのにっ…」
「分かってる。俺も、大丈夫だと思ったんだ」
頭で理解してても
体は、何かに反応するのかな
14年の生涯の大半の時間
考える事と言えば、体の事と家族の事で
残りの時間で、その他の色んな事を考えた
気付いた時には、自分の人生が長くはない事と向き合って、生きてたから
そうじゃない人生を送ってく人の、痛みや、辛さ、苦しみについてとか…
そんなの、ゆっくりと考えてみる時間なんてなかった
病気じゃなくても
全然、終わりが見えてない人でも
辛い事…あるもんなんだ
しょっちゅう入院する様な体じゃなくたって
皆を心配させて、泣かせてしまう事…あるもんなんだ
「ユウ…大丈夫…もう怖くない」
「ん…分かってる…大丈夫」
それでも、こんな風に、あったかくなれるんだから
あったかくしてくれる人と、居られるんだから
つまり…きっと…
「俺は…恵まれてる……」
「ユウ?」
頭の隅で…奥の方で…考えてる
寝ちゃダメだとか
大和達に、声聞こえてたかなとか
皆、下で心配してんのにとか
だけど…
ちょっと力入って、冷たくなった体が
シュウのぬくもりで、あったかくなったから
一気に眠気が………
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