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第4話
仕事が完成し、打ち合わせ室で白狼と顔を合わせる。
「ありがとう。助かったよ」
「うん」
よかった、間に合って。
「昼、食べにいかないか。お礼にごちそうさせて」
「いいって。仕事だろ。気にするなよ。それに俺、弁当だから」
「今日も?」
「え?」
「いや、前見かけたとき弁当だったから――」
(彼女の手作り弁当なのかな……?)
「お、俺、自炊派だから。弁当もそれで」
思わず彼女いないアピールをしてしまった。
白狼は興味ないだろうけど。
いや、彼女いないって逆に恥ずかしいかと落ち込む。
(兎洞の手作り弁当か。なんか、いいな)
白狼が微笑んで見つめてくる。なんだか照れくさい。
***
昼休み、俺は白狼と社員食堂にいる。
結局、白狼と一緒に食べることになった。
俺は弁当、白狼は社員食堂で購入した親子丼。
「兎洞の弁当、美味しそうだな」
「夜の残り物だよ」
そういえば白狼って丼ものか素蕎麦とか偏ってるよな。
「白狼って、偏食?」
「あー……、バレた。自分で選ぶと偏っちゃうんだよな」
(兎洞の弁当うまそうだな。俺も食べたいなあ)
え。白狼が俺の料理食べたいって……。
嬉しくなるが、これは幻聴と自分を戒める。
「兎洞、今度俺にも弁当作ってよ」
「え!」
幻聴じゃないよな?
「き、嫌いな野菜しか入ってないかもよ」
焦るな、俺。
これは、きっと、社交辞令的な、営業マントーク的な、アレだよアレ。
「いいよ」
いいの!?
白狼の笑顔に本気にさせられそうで、目をそらしほうれん草のお浸しを食べる。
でも、その笑顔見られただけでついてるよな。
自炊しててよかった。
って、俺、乙女すぎ?
「今日の夜何作るの?」
「まだ決めてない。帰りにスーパー寄って帰ろうと思って」
「俺、生姜焼きが食べたい」
「え……白狼、生姜焼きが好きなんだ。俺、生姜焼きのタレがかかったキャベツにマヨネーズつけて食べるの好き」
「あ~……」
白狼が遠い目をする。
「白狼、キャベツ食べないな」
「バレた? でも兎洞が作ってくれたら食べるよ」
「なんだそれ」
「今度作ってくれよ」
「え?」
「そうだ、兎洞の家でお疲れ様会しない? 俺、酒買うよ」
「ああ……今度な」
社交辞令じゃなくて?
「じゃあ、今週末は?」
急だな!
「兎洞の手料理楽しみ」
「いや、人にふるまえるほどのもんじゃ――」
(ダメか。そうだよな……迷惑だよな……)
白狼が俯く。
白狼落ち込んでる……。いやこれは幻聴……でも――
「それでもいいなら。いいよ」
「いいの?」
「う、うん」
(やった。嬉しい。楽しみだなあ)
喜んでくれた白狼に、思わずにやけてしまう。
「そうだ、ついでに泊まっていい?」
白狼の甘い笑顔に、俺は固まった。
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