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真相(3)
「中島佑美さんのストーカー被害のことは把握していませんでしたが、三間さんの事故の件は、犯人が三間さんのスケジュールを把握していた可能性が高いと我々も考えました」
専務の発言を受け、渋面の刑事が淡々と話をする。
「そこで、アプローズの社長に、社員や契約タレントの行動履歴やシステムへのアクセスの記録を調べさせてもらえないか、相談してみたんです。しかし、社長は、『うちにはタレントに危害を加えるような社員はいない』と仰って、捜査への協力を断られました。これが殺人事件のような重大な案件であれば、令状を取って強制捜査を進めることもできますが、今回の事件の規模では、捜査に強制力を持たせることが難しいんです」
「殺人事件」という言葉に、僕は思わず身を硬くした。
専務も何やら考え込むような表情で口を噤み、重苦しい沈黙が満ちる。やがて専務は膝の上で組んでいた指を組み替え、ふぅ、と小さく嘆息した。
「私も会社を経営する側の立場だからね。社員を疑いたくない気持ちはよくわかる。だが……、今回は軽症で済んだけど、もしかしたらその所為で犯人の怒りは治まっておらず、再び三間君を狙ってくるかもしれない」
そして、次こそは――……。
専務はそこまでは口にしなかったが、その深刻そうな顔は、そう物語っていた。
今回の事件だって、三間が運動神経のいい頑丈なアルファだから脳震盪ですんだものの、十分に殺意はあったと考えられる。実際、一度目の人生で同じように突き落とされた僕は、おそらく命を奪われている。
結果だけで事件の規模を小さいと決めつけられることには、僕も納得がいかなかった。
「あの……、捜査に協力してもらえるように、僕からも片桐社長にお願いしてみましょうか……」
僕のその言葉に、専務の片方の眉がピクリと上がったように見えた。
「柿谷君は、片桐社長と知り合いなのか?」
いつも穏やかな専務の表情に、今は少し緊張の色を感じられる。
「知り合いというほどではないですが……、昨日、三間さんと電話で話している途中で急に大きな物音がして通話が切れたので、そのことを誰に伝えるのがよいかわからず、アプローズの本社に電話をかけたんです。片桐社長のことは、三間さんから以前、話を聞いたことがあったので……、動揺していて社長の名前を出してしまい、結果的に社長に助けていただくことになりました」
そのうち社長に紹介したいと言われていたことについては、なんとなく言わない方がいい雰囲気を直感で感じ取り、曖昧な説明にとどめた。
「そうだったのか」
困ったような笑みを浮かべた専務は普段通りの彼で、不穏な気配は消えていた。
「昨日は緊急事態だから仕方なかったが、うちの所属タレントが他の事務所の社長と直接連絡を取り合うことについて、私の立場では容認できない。これから先は、個人的に連絡を取ることは控えてくれるね?」
「あ、はい。以後、気をつけます」
確かに、昨日、電話で話した雰囲気があまりに気さくだったから、つい安易に考えてしまったが、本来なら僕のような他社のひよっこが気軽に連絡を取り合える人ではなかった。
「片桐社長とは私も若い頃から現場でよく顔を合わせていて、業界の中では一番仲がいいんだ。二人でお酒を飲んだこともある。だから彼が、社員の一人一人を家族のように大切に思っていることも知っている。せめて犯人の目星がつけば、彼も捜査に協力してくれると思うんだが……」
専務が額に手を当て、眉間を指先で揉む。
「一つ方法がないことはないんですが……」
刑事が奥歯に物が詰まったような口調で言い、上目遣いでチラリと僕を見た。
「その捜査方法は、原則禁止されています」
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<お知らせ>
萌えどころの少ないお話にここまでお付き合いくださり、本当にありがとうございます!
毎日たくさんの方がスタンプを送ってくださり、本当に嬉しく思っております。
お話の途中で度々お知らせを挟んで申し訳ありません。
アルファポリスの第12回BL大賞の投票締め切りが明日、2024年11月30日のため、最後の宣伝をさせていただきます。
本日、11月29日時点で、コンテストの順位が全体で6位という奇跡的な順位まで押し上げてもらっています。フジョッシーからもたくさんの方が応援に来てくださったことと思います。本当にありがとうございました。
話の内容&筆力的に受賞は夢のまた夢だと思ってはいるのですが、ここまで押し上げてもらったからには少しでも選考委員さんの心を動かしたいので、アルファポリスのアカウントをお持ちの方で票が余っていて、投票してやってもいいよ!という方がおられたら、応援よろしくお願いします!(;´∀`)
作品のURLはこちら↓です。本文だとコピペできないかもしれないので、あらすじ欄にも貼っておきます。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/5536614/745910821
こちらはシリアスターンに入って、読者数も減ってきているので、アルファポリスで完結後は時間があるときにどこかで残り全部を一挙公開にしたいと思っております(;´∀`)
先行のアルファポリスはシリアスターンを抜けてようやくゴールの光が見えてきたので、早めに続きをお読みになりたい方は、上記↑作品の『真相』という章の『おとり捜査』というページからお読みいただくと、こちらのページの続きになっております。
読むだけならアカウントなしでも読めます。
お知らせは以上です。
こちらでお読みくださる方は、引き続き、よろしくお願いします_(._.)_
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