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真相(21)
驚愕に目を見開く。
「三間さんが、僕を追って戻って来た……?」
僕の反応に、何故か三間までもが軽く面食らった様子だった。
「俺としては、できればそこじゃなく、『お前達と、幸せに生きていくために』ってところに食いついて欲しかったんだが……」
何やら複雑そうな顔で後ろ髪を掻いた三間が、あまりに普段通りの彼だったから。頭や胸でぐるぐると渦を巻いていた情報や感情が、緊張が解けるように、ふっとどこかに消えていってしまった。
ちょこちょこ引っかかっていたことの全てが、「三間も巻き戻っていた」という説明で腑に落ちるから、それが事実だと言われたほうが納得がいった。
むしろ、僕がスルーしたことで三間が地味にダメージを受けている、『お前達と、幸せに生きていくために』という言葉のほうが、現実味が湧かなくて、今はまだピンときていない。
三間が廊下の奥へと視線を向ける。ガヤガヤした声が聞こえ始めたから、記者会見が終わったようだ。
「ここで立ち話でできる話じゃないから、部屋に行ってもいいか? 社長に言って、部屋を取ってもらっていたんだ」
「話をするだけですよね?」
「部屋に行ったら、たぶん話をするだけでは終わらない」
再び、どうする? と目顔で問われる。
「無理はしない。念のため、アルファ用の抑制剤も持ってきている。嫌なら、寮に送って行く間に車の中で話をする。俺としては、寮もアパートも心配だから、できればホテルに泊まるかうちに来てほしいんだが……」
さっきの『お前達と、幸せに生きていくために』と同じで、アルファ用の抑制剤を現実的なこととしては捉えられなかった。
彼が、発情期 中でもない僕に、何か会話以上のことをしたいと思うとは思えない。実際、本当は佑美さんとは付き合っていなかったにも関わらず、鹿児島の旅館ではキス一つされなかった。
だからあまり深く考えずに、「部屋に行きます」と答えた。
手を引かれてホテルの中を歩くのは、さすがにマレーシアの夜を思い出して、落ち着かない気分になる。
カードキーがかざされ、ドアを開けてくれて先に入るよう促される。
照明がつき、テレビの旅番組でしか見たことのない、広々とした部屋に圧倒されていると。後から入って来た三間に、いきなり後ろから抱きしめられた。
「え? ちょ、ちょっと」
顎を捉えられ、顔を後ろに向かされそうになって、慌てて両手で押しのける。
「なんだ? こういうことをすることに了承してくれたから、部屋に来たんじゃないのか?」
明らかに、三間の機嫌が急降下する。
「あ、いや。了承はしましたけど、その前に話を……というか、三間さんは、僕とこういうことがしたいんですか?」
「お前、さっきの俺のプロポーズ、聞いてたよな?」
「え? あれ、プロポーズだったんですか?」
……なんだろう。僕が何か喋るたびに、三間の眉間の皺がどんどん深くなっていってる気がするんだが。
「三間さん……、」
「晴 、だ」
「――晴さん。訊きたいことはいっぱいあるんですけど……、とりあえず、さっきの……、『お前を追って戻って来たって』、どういうことですか? 晴さんが僕と一緒で、時間を遡って過去にタイムリープしたことは、なんとなくわかるんですが……、『追って来た』の意味がわからないし、どうして、僕と晴さんとで、時間のずれがあるんですか? 僕は一度目の人生で晴さんと出会ってから今まで、足すと2年8カ月くらいです。晴さんがさっき記者会見で言っていた人が僕のことなら、僕と晴さんとでは8カ月のずれがあります」
「それ、今話さないと駄目なことか?」
「僕たちここに、話をしに来たんですよね?」
「話も しにきた」
――なんか言い方が、微妙に最初と違くないか?
お互いに一歩も引かず、何故か若干険悪な雰囲気になる。
「わかった。そのかわり、今夜はここに泊まるってことでいいな?」
「わかりま……」
手を引かれ、彼の胸に倒れ込んだと思ったら、顎を捉えられて唇を塞がれていた。
――――っ――――!!
熱い舌が躊躇なくねじ込まれ、舌を絡み取られて、口内の柔らかな粘膜を擦り上げられる。
一応は手加減してくれたようで、下半身に影響が出ない程度に口内をひとしきり貪ると、満足したのか唇を解放してくれた。
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