慣れたといっても、この瞬間だけは、めいっぱい皮膚が開かれる痛みと尋常ではない圧迫感とで、呼吸もままならなくなる。 　力が抜けるタイミングに合わせて三間がゆっくりと腰を進めてくる。浅い呼吸を繰り返し、指では届かなかった、狭く閉じた部分を押し開かれる感覚に耐える。 　最後は、ずん、と一気に腰を突き入れられ、尻に濡れた下生えを押し付けられた。 「……ひぁっ……、ぁあ……ッ！」　 　待ち侘びていた粘膜がせわしなく蠢き、中の雄を締めつけるのがわかる。圧迫感に体が馴染んでいくにつれ、全身が痺れたように陶然とする。 　背後から聞こえる何かを堪えるような呼吸から、彼も、似たような状態だと察せられる。 　三間が、僕の中にいる。それを実感するこの瞬間は、何度経験してもたまらない気持ちになる。抱かれているのは僕なのに、愛おしさが込み上げてきて、全身で彼をぎゅうっと抱き締めているような、そんな感覚を覚えてしまう。 「イかなかったのは偉い」 　ぬめりを纏った三間の掌が、僕の尻たぶを撫で、鷲掴みにして揉みしだく。 　しょうもないことで褒めるのは、発情期(ヒート)中は、挿れられただけでイってしまう確率が高いからだろう。 　なじませるように、繋がったままゆっくりと腰を前後に揺すられる。やがてそれは、抜いて挿れる、という動きに変わり、浅いところの性感帯を小刻みに突き上げ始める。 　三間が腰を送るたびに、摩擦の濡れた音と、パチャパチャという水飛沫の音が立つ。その音が、いつも以上に気になってしまう。 　日の明るいうちから、半露天という無防備な場所で、淫らな行為をしている。その背徳感が、普段以上に感覚を過敏にしている気がする。 　 「……ぁ、ぁ、ぁっ、……っ……そこ……、気持ちいっ…………」 　肩をすぼめるようにして肩甲骨を浮き上がらせ、甘苦しい衝撃に耐える。繰り返し押し寄せる快感の波に溺れ、悶えるように背や腰を揺らした。 　僕がイキそうになるたびに、三間は動きを止め、焦らすようにゆっくりと腰を回す。 　何度かそれをやられ、堪えきれずに自分で性器を扱こうとして、その手を取られた。腕を引っ張られ、上半身を起こされる。 「ヤッ、……ひ、ぁっ」 　急に立ち上がり、ふらつきそうになった体を背後から支えられた。踵に力を入れて自分でもどうにか踏ん張るけど、その所為で臀部にも力が入り、中のものを締め付けてしまう。くっ、と小さな呻きが耳元で聞こえる。 「何で、急に……」 　立ちバックの経験はあるけど、何にも掴まるところのない状況は初めてで、心もとなさから責めるような声色になる。 「せっかく景色が綺麗だから」 　言われて視線を遠くに向けると、先ほどまでは竹の簾(すだれ)を透かしてしか見えなかった砂浜が、立ち上がると簾の先に見える。その先に広がるのは、海――。 　あまりにも牧歌的な風景に居たたまれなくなり、顔を俯かせると、腹に付きそうなほどに反り返った自身の性器が見える。どちらにしても、目のやり場に困る。 　三間の大きな手が、僕の性器をするりと撫で上げる。その手はすぐに上がってきて、両側から乳輪を抓まれた。乳首を捏ねられ、番(つがい)の噛み痕のあるうなじを舐められ、キツく吸われる。 　僕だけなら乳首の刺激だけどもイケそうだけど。三間は動きたいのではないかと思う。 「……ッ……晴さ……、ここ……ヤダ……」 　掴まるところが何もない状況では、激しく動かれたら立っていられなくなりそうで、不安だった。 　ずるっと一気に剛直が抜かれる。 「ぁあっ！」 　壁側を向かせられ、両手を壁に付くと、すぐにまた熱く猛ったものが隘路を押し入ってくる。 「動くけど、いいか？」 　挿入の余波で声を出せず、僕はこくこくと首肯した。 　両側から腰を掴まれ、激しく突き上げられる。下肢がガクガクと揺れ、壁についた両手で体を支え、立っているのがやっとだった。 　肌と肌のぶつかる音が響き、それに二人分の荒い息づかいと、僕が堪えきれずに洩らす嬌声が混じる。限界まで達した快楽の苦しさで、ひっきりなしに涙がこぼれた。 　ただ気持ちいいだけじゃない。 　発情期(ヒート)中と違って理性が残っている分、それが羞恥心や背徳感を刺激し、別の種類の高揚をもたらされる。 「はっ、ぁ……、も……、むり……、イクッ…………」 　官能の絶頂へと押し上げられた意識が、忘我に霞む。 　体中を巡っていた快感が下腹へと集まり、細い管を勢いよく昇っていく感覚に、全身が震えた。 　最奥を突かれ、壁に向かって、勢いよく白濁を迸らせる。 「あ、ぁああッ――――！」 　三間は腰を押し付けたまま、僕をぎゅうっと抱き込んだ。 　うなじに、甘噛みの痛みを感じる。――なつ、と触れた唇が動いたように思う。 　同時に、深部が重ったるい熱液で満たされていった。