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助かった。これで解放される
そう安堵したのも束の間
「なんだ東、今日は珍しいじゃ…」
「そうなんすけど先生~相澤クンなんかちょっと体調悪いみたいで~今から保健室連れてっていきます」
担任が話しかけるのを遮るように東は耳を疑う提案をしてきた
「なっ、お、おいっ!」
やっと口を開いた相澤は上手く呂律が回らず言い淀んでしまった
「そうなのか?相澤」
「いやっ俺は……」
全然大丈夫です
そう言おうとした瞬間、東が自分にだけに聞こえるように
昨日の写真、どうなってもいいの?
そう囁いた
思考がフリーズする
寝不足の頭で咄嗟の言い訳も思いつかない
「……っ」
相澤は静かにこくんと頷くしかなかった
「確かにちょっと顔が赤いな。じゃあ少し保健室で様子見てこい」
「はーい、先生俺が連れていきまーす」
東が腕をグイッと強引に引っ張る
「いい!俺一人で行けるっ……ッ!」
東はクラスのみんなに見えないよう相澤の重心を崩した
側から見るとフラついてみっともなく倒れ込みそうになるのを東が片手で抱き抱えて、端から見ればまるで紳士そのものの振る舞いに見えたことだろう
その瞬間女子たちがキャーと小さな悲鳴を上げるのが聞こえた
「だいぶ辛そうだな、まあ東は体力だけが取り柄だし、相澤を頼むぞ」
「体力だけって酷くない!?まあでも任せてセンセっ」
とんだ茶番に付き合わされ、言い逃れの余地もなくあれよあれよと東に抱き抱えられ保健室に連行される
言うまでもなく嫌な予感しかしない
「そんなに見つめんなって。照れるじゃん」
半ば諦めの心境で、保健室の扉を開ける東を最後の抵抗と言わんばかりに力なく睨みつける事しか出来ない自分が心底情けなかった
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