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大切な玩具
未だに上手く状況が掴めていない相澤に向かって東はニヤニヤと笑いかける
「アハッかわいー優斗、目がクリクリしてる」
警察やらの事情聴取で数日空けてた自分の家に戻ると、いつの間にか物が一切なくなり、代わりにコイツがまた俺の前に現れ、何の説明もなしにこの家に連れ込まれ今の状況に至る
今思い返せば、コイツって超大企業の東グループの御曹司とかじゃなかったっけ
今更だけどほんととんでもないやつに目をつけられたんだなと改めて胃が重くなる
それなのにいつの間にか馴れ馴れしく下の名で呼んではここまでの面倒を見ている
元々少ない相澤の所持品は、空き部屋だったらしい所に全て運び込まれていた。高校生の一人暮らしで2LDKの家に住むあたり、やはり普通の暮らしをしている人とは思えないと改めて実感し、そして疑問に思う
「本当に……お前の目的は何なんだ」
「えー!?まだそれ言う!?最初に言ったよね?お前は俺のオモチャなんだって。俺自分のモンは手元に置いときたいタイプだし」
そう言って東は相澤の頭に手を伸ばす
しかし頭に触れた手はもどかしそうにそこから動きはしない
その異様な光景が理解出来ず、数秒考え込んだあと、あぁ。と肩を落胆させ、静かに自身のシャツのボタンを外した
「え?何してんの?」
「……好きにすればいい」
震える手でシャツのボタンを全て外し、上半身を露わにさせる。相澤の顔には、実父となんら遜色ない、ただ相手が変わっただけ、クズの相手をただそつなくこなす。そんな表情が見て取れた
「ハァ!?ちょっと待って!何勘違いしてんの!?あっでも全部俺のせいか……~~~ックソッ」
う~~~ん、と頭を悩ませる素振りを見せた東は思い立ったように顔を上げ、気恥ずかしそうに口を開いた
「………。俺ってほんとは物とか超大事にするタイプだし」
ボソボソと喋る東の声が上手く聞き取れず、ただ無言で見ていると、東はもどかしそうに立ち上がる
そのままドカドカと煩く足音を響かせながら部屋を出ていき、数秒経ったあと、何やら手に抱えて戻ってきた
そこにあったのは古臭い、でもどこか懐かしいような、そんな妙な思いを馳せる雰囲気のある猫のぬいぐるみを抱えていた
「………。」
それを見せつけられはしたが、返す言葉は出てこない
「……これ、小学生の頃、好きだった子に貰ったやつなんだよね」
何か期待していたのを裏切ってしまったかのように、東はあからさまに肩を落としてそのぬいぐるみを見つめた
「俺、昔超体小さくて、柔道もめちゃくちゃ弱かったんだけど、その子はいつも俺のこと応援してくれてたんよ」
続けてまあその子はどこか遠くに行っちゃったけど、とどこか懐かしむような顔で宙を見て言った
相澤はポカンとした表情で東を見つめた
東はそんな俺の顔を見て少し寂しそうな表情を浮かべた気がしたが、呆れたように深くため息を吐いた
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