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「迎え、呼んでおいたから。お腹の子に触るし、早く行って?」
「……でも、……。分かったわ、本当にごめんなさい。拓海くん、何があったのかは知らないけど……優斗のこと、よろしくね……?」
そう言って母親は俺と東を一瞥し、何か言いたげな表情を必死に抑え、公園の外に停まっていた車から降りた背広を着た男たちに連れられて行った
「お前……母さんに酷いことするんじゃないだろうな」
「そんなことしねーよ!………寧ろ俺が酷いことをしたのはお前の方だし……」
悲しそうな顔をして言う東の顔を見て、ここ最近の話のことを言っているわけではないことを悟った
俺の失くした空白の時間に、少なからず何かしらの接点があったのだと確信した
「俺とお前って、昔なんかあったのか……?俺、何も……」
思い出そうと考えを巡らせたが、それを邪魔するかのようにズキズキと脳に衝撃が走る
「……うっ!」
「優斗!大丈夫か?……家に帰ろう。そこでちゃんと話すから、今までのこと、全部」
そうして俺を労るように肩を抱える東の姿に、抵抗よりも何故か安心感を覚えてしまい、複雑な気持ちで東の家へと向かっていった
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それは高校の入学式の時だった
桜が舞い散る校庭に、莫大な人だかりの中ですぐに俺の目に留まった
あの子がいる
一目で分かる相手
俺が小学生の頃に初恋だったその子は
父親の不倫相手の子
俺の家庭をめちゃくちゃにした女の子供だ
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