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「……要するに…お前の父親と俺の母親は俺たちが小学一年の頃から不倫をしていたと?そんで俺たちは兄弟のように仲が良かったって?」
「兄弟のようにっていうか……」
幼少期の俺は、優斗のことを本気で女だと思っていたので、俺たちはその頃おままごとの恋人同士のような事をしていた
親父も、俺の実母とは愛のない政略結婚だったが、親父の会社はデカくなりすぎた為、支援を受けていた母親の会社を切り離し、結局その時に母親とも離婚した
莫大な慰謝料を払ってまで、相澤の母親と一緒になったのだ
「んで?結局俺の父親があんなんだから母親は俺と親父を見捨ててお前の父親と一緒になったわけ?」
明らかにトゲのあるその言い草にも無理はない
記憶を失くしたにしても、相澤にとっては母親は、子を見捨てた薄情な人には変わりないのだから
それを聞いて東は言いにくそうに目を逸らした
「その事に関しては……全部俺に責任がある」
苦虫を齧るような東の顔が、意を結したように口を開く
「お前の母親は……お前も連れてこようとした。……けど、俺が拒否したんだ」
「………は?」
「俺がお前のことを嫌いだからだと思っていたみたいだったけど……本当は、その逆で……」
「どういうことだよ」
「本当は……お前のことが、好きで……それで、昔、俺、本気でお前のこと女、だと思ってて……」
「ハァ?」
しどろもどろと東が胸の内を明かしていくが、相澤にとってはただただ面食らうことしか出来ない
「お前が一緒に来たら、本当の兄妹になっちまうってガキだった俺は勘違いしてて……兄妹は結婚出来ないし、そんなの嫌で……当時の俺はめちゃくちゃ反対したんだ。それで……」
そこまで言っておいて肩をすくめて口を窄める
「それで、その、めちゃくちゃ立派になって……大人になったらお前を迎えに行こうと思ってたんだ……」
幼少時代の自分勝手な行動で、相澤があんな目に遭っていたなんて知る由もなく、高校の入学式に思わぬ再会をした時、男だと知って失望し、俺を忘れていることに憤った。
全て自身のエゴが招いた結果なのにも関わらず
そんなひとりよがりで間抜けな俺が、心底情けなく腹立たしかった
優斗の親父がそんなヤツだと知らなかったとは言え、あんなことになったのは少なからず俺のせいだ
俺のせいで……
あの日、
優斗の身体にあった無数のアザと異常な性癖を知った日
不審に思った俺はやっと足りない頭で理解した
優斗の母親が必死に連れてこようとしたのを頑なに拒むバカな俺が
優斗をあんな目に遭わせてしまった
そんな自己嫌悪に苛まれても尚、こいつは俺を責めることをしない。
ーー否、蚊帳の外だ。優斗のいる世界に、俺やこいつの母親は存在すらしていない
それがまたどうしようもなく心苦しくて、悲しかった
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