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刻まれた肉欲
あの話を境に、東はよく夜中に出かけるようになった
与えられた自室には寝具はなく、東が使っていいと言うので、遠慮なく東の寝室で毎夜寝ていた。
夜遅くに出かけては、深夜や朝方に帰ることの多い東
それでも前回、あんな調子で言ってはいたが、多少の遅刻をしながらも、毎日一限の途中の授業から参加はしている
しかしほとんど寝ているので、あまり意味はない気もするが
昼休みも、東がいつの間にか用意してくれているパンやおにぎりを手渡され、あの使われていない旧校舎に連れて行こうと手を引かれるが、付き合いが悪いと東の取り巻きたちが間に入るので、相澤は昼休みのチャイムが鳴るのと同時に教室から逃げるように出ていく毎日だった
東はそんな俺を引き止めようとするが、逆に取り巻きたちに囲まれて、身動きが取れなくなっている
正直、取り巻きたちには感謝していた
複雑なことに、俺は最近東の顔がちゃんと見れない
東と二人きりになるのが、少し怖かった
こうやって誰もいない裏庭の花壇の石垣に腰を落とし、東がくれたご飯を黙々と食べていると、ふと頭に過ぎる
毎晩毎晩強引に実父に抱かれていた俺は、最近になって悪夢に苛まれ始めた
ーー実父に組み敷かれ、恥辱を味わう夢
殴られ、蹴られ、強引に抱かれて、首を絞められる
そこでいつも目が覚める
目には涙が溢れ、息は絶え絶えにも関わらず、ズボンを見ると、そこははち切れんばかりに膨らんでいるのだ
身体が覚えてしまっている
身体が求めてしまっている
自分の意思とは反対に、暴力という快楽を
その日から寝るのが怖くなった
最初は東がいないことに安堵さえしていたのに
最近は夜中に出かける東に苛立ちさえ覚えた
側にいるって言ったくせに……
「なんで俺……こんなこと……」
強引に頭を振り、おにぎりを口いっぱいに押し込み、気を紛らわすように興味もない本を開く
そうしてまた1日の授業が終わり、一緒に帰るのが嫌なので、図書館で時間を潰したあと、時間差で東の家へと向かう
東は意外にもいつも夕食の準備をしてくれている
それを少し申し訳なく思いつつも、お風呂に入っておいでと声を掛けられるので、小さく頷き浴室に向かう
風呂から上がると、既に夕食の支度が済んでいでいて、テーブルの椅子に腰掛ける東が微笑む
しかし東の顔がまともに見られない俺は、無言のままテーブルの向かいの席に座り、東の用意してくれた決して美味しいとは言えない夕食を静かに咀嚼する
夕食を終えた東がまた身支度を始める
それを見届けるしか出来ない俺は、もどかしさと苛立ちで心が締め付けられた
先に寝てて良いから、なんて前とは別人のように微笑み、頭を優しく撫でる東に遂に押し殺していた言葉が漏れる
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