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練習試合が終わると、いつも父さんに連れられて、アイちゃんの母親たちとパン屋が提携しているカフェに行くのがお決まりだった 「これ食べる!」 アイちゃんはそこのメロンパンが大好きで、いつも小さい口を目一杯開けて頬張りながら食べていた 「もっとゆっくり食べなさい」 母親がそう諭しながらも嬉しそうに食べるアイちゃんが凄く可愛くて、俺は適当なパンを食べながらその姿に釘付けになるのもいつものことだった 食事を終えると、父さんたちが他愛のない会話を始める。いつもはその会話に混ざりながら、愛想よく相槌を打っていただけだったが、今回は近くの公園で遊んで来ると言い、カフェのすぐ隣にある公園に、アイちゃんを連れ出した。 「さっきの約束、覚えてる?」 そう言うと、アイちゃんはまた顔を赤くしてカフェの方を振り向く 母親は心配そうに、あまり遠くへ行かないでと言い、公園が見えるテラス席に移動して、こちらの様子を伺っていた。だからアイちゃんもママが見てる。とまたぬいぐるみで顔を隠してしまう 「えーっ、もう!」 もどかしくなった俺は、公園の中にあるドーム型の遊具に手を引いて連れ込み、ここなら良いでしょとアイちゃんを追い詰める ついに観念したアイちゃんは恥ずかしそうに、じゃあ目を瞑っててと言うから俺は素直に目を瞑り口を尖らせた その数秒後、頬に何か柔らかいものが当たる感触に眉をしかめて細目を開けた そこにはアイちゃんが頬っぺたに精一杯に唇を押し付けていたのが目に映って、それでも十分嬉しかったが俺は貪欲に「頬っぺたじゃなくて口にしてよ!」とませた事を言う 「だっ、だって……!恥ずかしいよっ、それにキスするのは……こ、恋人同士がする事なんだよ……?」 これが限界と言わんばかりに顔をタコみたいに赤くさせて、必死に言うアイちゃんを俺は真剣な顔で見つめた 「だったら恋人同士になろうよ。俺、将来アイちゃんと結婚する」 「けっ、けっこん!?でも、それって……」 「はい、決まり!早くしないと父さんたちこっち来ちゃうよ!アイちゃんお願い、チューして?」 ドームの壁まで更にアイちゃんを追い詰めて、逃げる事が許されなくなったアイちゃんは、ようやく諦めてくれたのか、目をギュッと閉じて、唇に軽く自らの口を当てる。 初めてのその行為に、子どもたちは心臓がドキドキして、何とも言えない空気に拓海の方が耐えられず口を開いた 「……え、えへへ、ちょっと照れくさいな……」 アイちゃんは恥ずかしさの限界で体育座りでぬいぐるみで顔を埋めている 「俺、絶対もっと強くなるから……将来俺のお嫁さんになってくれる……?」 アイちゃんからの返事は無いが、顔を俯かせた状態で、本当にわからないくらいに小さく頷いた 「!!絶対約束ね!俺、立派になって社長になってアイちゃんを迎えに行くから!」 嬉しそうにアイちゃんの頭を撫でたところで、父さんたちの声が聞こえた まずいと思って二人ともそそくさとドーム型の遊具から抜け出し、気恥ずかしさを隠しながら親の元へと駆けていった その日から拓海は試合に勝つたびに、アイちゃんにご褒美のキスをねだるようになった

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