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その後、大きな大会でどんどん優勝を重ねていき、一年生の時は同じぐらいの背格好だった二人が、小学五年生の頃には見るからに体格差も生まれていた 結局それまで一度も髪を伸ばすことなく、スカートも頑なに履こうとしてくれなかったが、二人で遊んでいる時にふざけて用意したスカートを渡したら、渋々履いてくれたこともあった アイちゃんは、絶対に母親にこんな格好をしているところを見られたくないと強く言うので、そこから二人きりの時だけたまに俺はアイちゃんにちゃんと女の子の格好をさせた アイちゃんはいわゆるボーイッシュ系?なのか、あまりこういう格好を好まないみたいだが、俺がひつこく可愛い可愛いと絶賛するので、渋々要求に応えてくれていた。それがまたチョロくて愛しかった 二人きりの時だけ、手を繋いでキスをした もうあまり抵抗しなくなったアイちゃんに俺は自分でもよく分からない感情を抱き始めていた その頃に授業で習った性教育の話で、アイちゃんの裸が見たいと思い始めていた 俺の部屋で二人きりの時に、アイちゃんの服に手を伸ばした その時に思い切り手を引っ叩かれ、そんな事をしたら大嫌いになると言われてしまい、俺は必死に謝った そして、アイちゃんが俺の目を見て、いつもより真剣な表情で告げる 「……拓海くん、ずっと言わなかった事があるんだけど、今度の試合の後、聞いてくれる?」 そう言うアイちゃんは凄く表情が曇っていて、俺はそのことに特に何の疑問を持つこと無く了承した いつしかアイちゃんが俺を見上げるようになった頃、俺の家庭は崩れ始めてきていた アイちゃんを守れる男になるため、強さだけじゃなく知識も必要だと遅くまで塾で勉強して家に帰ると、いつも両親が声を荒げながら喧嘩をしていた 元々あまり会話の少ない両親で、実際俺も父親にべったりなこともあって母親とはあまり会話がなかったが、あんなに声を荒げる母親は初めてだった 話の内容は聞いてもよく分からず、その数日後、母親は家から完全に姿を消した あまり関心の無かった俺だが、淡々と父親に離婚の話を持ち出された 妙に納得したような顔で、俺はその事を受け入れた そしてそのまた数日後に、突然アイちゃんの母親がアイちゃんを連れて家に来た 最初は休みの日でも無いのにアイちゃんに会えた事に凄く喜んだが、父親に「今日からこの二人がお前のお母さんと兄妹になる」と告げられ、俺は狂ったように喚き散らかした 父親も予想外だと言わんばかりに驚いていたが、すぐに俺を怒鳴りつけた アイちゃんの母親は申し訳無さそうにアイちゃんを連れてすぐに家から出ていった そうして俺は是が非でもあの子と兄妹になることは嫌だと言い捨て、父親の言葉に聞く耳を全く持たなかった その週の土曜日には、アイちゃんは試合には来なかった なので結局、アイちゃんの話も聞くことはできずに、俺の唯一の至福の時間は唐突に終わりを告げた 翌週、翌々週と全く顔を見せなくなったアイちゃんだが、意地っ張りな俺はもっと大きくなって強くなってかっこよくなった姿を見せたいと、躍起になって柔道と勉学にのめり込んだ 六年生の冬頃には、アイちゃんの母親だけがよく家に来るようになった その頃には不倫関係で実の母親を失くし、父親を奪った女として、俺はその女に嫌悪し始めていた それを察していた女は、俺の見えないところで父親の肩を借りてわんわんと泣いているのは知っていた その女の身体に、いくつかのアザが付いていたのも見てないフリをしていた そして小学校を卒業した日から、アイちゃんの母親が父親に強引に連れられ、申し訳無さそうに居座るようになった その頃には目を瞑れないぐらい綺麗な顔に大きなアザを作っていて、俺は少し戸惑いながらも何があったのかを聞き出せずにいた 女は何度も何度も謝り、あの子と仲直りして欲しいと懇願するが、それでも俺は聞く耳を持たなかった いつか親父の会社を継いで、立派な男になって高級な車で絶対迎えに行くと心に決めていた身勝手な意地のせいで、頑なな俺は意固地になっていたからだ ーーそのアザの矛先が次に向かう先が誰かなんて、幼稚で足りない頭では想像すらできなかった

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