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本当に全部思い出してしまった時、
俺はあいつの事をどう思うんだろう
死ぬほど恨んで憎んで殺してしまいたいと憎悪するだろうか?
それとも……
「あ~~やあっと見つけた~」
性懲りも無く背中から抱きついてくるこいつを蔑むどころか……
ーー拓海くん、好き!
「……うぅっ!」
色んな事が頭を張り巡らせ、ズキズキと脳がキャパオーバーを示すかのように痛みだす
全てを思い出すということは、俺がそれを認めてしまうことになる
ずっと考えないようにしていた一番危惧していた避けられない事実を
「優斗……大丈夫?少しあっちで休もうか」
優しく手を引かれて、海水魚の泳ぐエリアに辿り着く
壁に備え付けられてるソファに腰掛け、様々な魚の泳ぐ海曹を見つめる
「……。」
目まぐるしい一日が優斗の脳内を疲弊させ、ぼうとその遊泳する色取り取りの魚を見つめる
東はそんな優斗をちらりと見ては、小さく口を開いた
「……優斗さ、ちっさい時この魚になってっていったんだよ。俺その時めっちゃ傷ついてさ~」
そう言って海曹の下の方に指を差し、黄色くて小さな魚が泳ぐのを見つける
「名前、何だっけな……」
「……ヒフキアイゴだよ」
「あっ、そうそう!やっぱ優斗は頭良いね」
ケラケラと笑いながら東はその魚を見つめる
「なってって言われてもどうしたら良いか分かんないし。金髪に髪染めたのも、優斗がもしかしたら俺のこと思い出すんじゃね~かな~と思ったからなんだよね」
まあ、安直だし記憶喪失じゃ無理だわなと少し悲しそうな顔で言う東に、なんて声をかけたら良いのかわからない
「……そんで、ここで優斗がずっと大事にしてたものをくれて、俺めちゃくちゃ嬉しくてさ……」
朝からずっと片手に持っていた紙袋を漁り、前に話してた少しボロくさい猫のぬいぐるみを取り出した
「優斗は覚えてないかもしれないけど、このぬいぐるみを、ずっと肌身離さず持ってたんだよ」
そう言ってその猫のぬいぐるみを手渡す
手触りや、色、形、大きさ……どれも確かに見覚えのある……
それをまじまじと見つめたあと、ズキズキと頭を痛めたものが、ピークに達した
「うっ!うぅ……ッ」
片手で頭を抑え、その痛みに耐えきれず東に崩れるようにもたれかかり、東が呼びかける声を遠くに感じながら意識を失ってしまった
夢を見た
多分、小さい頃の夢
俺の前に立っているのは、強くて、かっこよくて、大好きだったーー
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