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最終話

「……優斗」 東が俺の名前を呼ぶ 幼少時代、俺は何度も神様に願った。 “アイちゃん”では無くて、本当の名前で呼んでくれる日を 女の子としてでは無く、本当の自分を知っても変わらず向けてくれる優しい拓海くんの顔が見たかった。 「あ、ずま……」 ボロボロと涙が溢れる 絶対に叶うことがないと思っていたこの光景に、胸が締め付けられる 「優斗、好きだ」 優しく口付けを落とす これまで何度も名前を呼んでくれていたその声が、今ではくすぐったくて、嬉しくて、心地いい。 「アイちゃんって呼ばれるの……本当は嫌だった」 「……うん、ごめん」 東が強く抱きしめる ちゃんと男としての俺を 「女の子って、勘違い、してるのがずっと……辛かっ、た……」 言葉の途中からまた涙が溢れ、後半はえずいて上手く喋れない 「……男って、知った時に、嫌われるのが怖かっ」 声にならないくらい上擦ってしまい、言い切る前に東に口を塞がれる 俺の言葉を否定するかのように何度も何度も唇を合わせた 「ごめん、本当に。俺……まじで最低な奴だ」 「……うん」 東は続けて労るように頬や目に口付けをし涙を拭い取る そして小さく、声を少し震わせながら俺の目を見つめて問う 「優斗は、まだ……俺のこと、好き……?」 いつも余裕のある東が、不安そうに聞いてくる 答えは決まっていた 俺もどうしようもない人間だとつくづく思う 「本当に、ムカつくぐらいに……東が好き……」 諦めたのか腑に落ちたのか、心が晴れたような気分になった。 好きだ、東が 本当に自分でも嫌になるぐらいに大好きな人 「今なら死んでも良いかも……愛してるよ、優斗」 薄暗くてよく見えないが、東の目が潤んでいるように見えた そしてまた唇にキスを落とす それが今では嬉しくて、もっと強欲になってしまう 「うん、俺も……東が、拓海が、好き……大好き」 好き好きと繰り返し言う優斗の言葉に、強く抱きしめる拓海の下半身が固くなるのを感じる 「……っ」 「はぁ…っ、優斗待って。今俺超ダセェ……好きって言われただけで勃つとかマジで格好悪すぎ……」 嬉しさを誤魔化すように額に手を宛て、拗らせすぎだろとぼやく東 そんな姿ですら今ではどうしようもなく嬉しくて、優斗は応えるように身体を求めてしまう 「拓海……俺も、シたい……エッチ、しよ……?」 気恥ずかしく言う優斗の顔を見て、拓海の理性が外れかける 「ッ!今そんな事言ったら、俺ほんとに止まんなくなるよ……?」 「……うん、いい。めちゃくちゃに抱いてほしい……」 呼吸が荒くなる拓海を熱を孕んだ目で見つめる その獣のような張り詰めた顔に両手を添え、唇を合わせる 「拓海、もっと、激しいの……して……」

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