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第4話 眩しい世界②

「あ、グランだ!」  そうやって歩いていると、近くで遊んでいた子供たちのうちの一人がグランに気付いて声をあげた。他の子供たちもそれを合図に、次々にグランの名前を呼んで集まってくる。瞬く間に二人は囲まれてしまった。 「なんかひさしぶりだなー」 「いっしょに遊ぼうぜ!」 「おれ、木登りできるようになったから見てよ!」 「わたしの方が先だってば!」  急にたくさんの声に囲まれて、リンネは困惑する。子供の相手なんてしたことがないぞ、と思いつつグランの背後に隠れたが、好奇心旺盛な子供たちからは逃れられない。 「あれ、このお兄さんって……」  子供の一人がリンネの顔を指さした。リンネは思わずびくりと肩を震わせる。まさか、正体に気付かれたのか? 思わず顔を隠すように俯いた。  だが、子供の反応は、想像とは違っていた。 「グランの友達?」 「そうだぞ、挨拶は?」 「こんにちはー!」  明るい多重奏をぶつけられて、リンネは面食らう。どうしたらいいかと横目でグランをうかがうと、頷かれた。リンネは勇気を振り絞る。 「……こんにちは」  たったそれだけの言葉に、子供たちはきゃっきゃとはしゃいで喜ぶ。  きっとグランのおかげでもあるのだろう。グランが普段から優しく接しているから、子供たちもひねくれずにこちらを信頼しているのだ。  子供たちがグランの腕や服を引っ張って連れて行こうとするのを優しく手で制しながら、グランは子供たちの頭を撫でた。 「俺、今日はこの子とデートだから。遊ぶのはまた今度な」  女子たちはきゃあ、と黄色い声をあげ、男子たちはブーイングを漏らす。グランは軽く手を挙げて子供たちに別れを告げると、リンネの手を引いて歩きだした。リンネは少し振り返って、手を振る子供たちの姿を見る。 「良かったのか? あの子供たち、ずいぶんお前に懐いていたようだが」 「ナメられてるだけだよ。それに言ったでしょ、今日はリンネとデートだって」 「デートっていうのは」  リンネは本で得た知識を引っ張り出す。 「恋仲同士がやるものじゃないのか?」 「え!? ああ、そう、なんだけど」  単純に疑問に思ったから聞いただけなのに、グランは慌てた様子で手を振ると何度か咳き込んだ。 「一緒に出掛けることをデートっていう事があるんだよ、ほら、例えとしてね」 「ふーん」  なんだ、別に特別な意味があるわけじゃないのか。  ……なんだってなんだ。  自分の中に生まれたよくわからない思考回路にリンネは内心で首をひねる。だが、答に辿り着くよりも早くグランが町の一角を指さして、リンネの腕を軽く引いた。 「ちょっとあの店で買い物してもいいかな」

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