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第4話 眩しい世界③

「ちょっとあの店で買い物してもいいかな」  グランが指さしたのは宝飾店だった。窓から覗いただけでも、たくさんのキラキラしたアクセサリーが並んでいるのが見える。だが、高級感を売りにしているわけではないらしく、カジュアルな商品も並んでおり、広い店内は若い女性で賑わっている。  きらめきに満ち溢れた空間にも物怖じせずに、グランは扉を押した。窓越しよりもさらに鮮やかな空間や、女性たちの高い声にリンネは気圧される。おそるおそる店内を見回していると、二人に気が付いた店員の女性が近づいてきた。 「何かお探しですか?」  まさか、自分はこんなものに縁はない、と思ってリンネは首を振ろうとしたがグランが一歩前に出た。こっそりと店員に何かを伝える。 「まあ、この子が例の!」  グランの言葉に、店員は手を合わせて、目を輝かせたかと思うと、リンネの顔を興味深そうに見た。突然の注目にリンネはたじろぐ。  一体グランは何を伝えたのだろう。女性店員は店の奥に引っ込むと、すぐにアクセサリーが複数入った籠を手に戻ってきた。グランは嬉々とした表情で籠を覗き込むと、店員と話し込み始めた。 「髪と瞳の色的にこちらの商品など……」 「綺麗ですね、でもイメージ的にはこっちも……」 「こちらに使われている宝石には特別な技法が使われていて細工が細かく……」  店員とグランが品定めを始める。やりとりは、途中からほとんど呪文のようだった。時折、自分の方に視線が向くのが気まずいし、自分に居場所がないような気がして、リンネは二人に背を向けた。 「僕、あっちの方を見てくる」  逃げるように店の端っこの方に向かって棚の陰に隠れる。こそっと覗くとグランと店員は普通に会話を続けていて、胸を撫で下ろした。  落ち着いて見ると、目の前の棚にもいくつか指輪やネックレスなどが並んでいる。リンネはおずおずとそれらを眺めた。  一つ一つの意匠はどうやって作っているのかリンネには全く見当がつかないほどに細かく、宝石も色とりどりで目を楽しませて、いくらでも見ていられそうなものなのに、どうにも集中できない。ちらちらとグランの方ばかり気にしてしまう。  こっちを見ろ、と、こっちを見るな、が頭の中で押し引きしあって気がとられる。 「ねえ」  だから、急に声をかけられた時、リンネは飛び上がるほどにびっくりしてしまった。

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