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第6話 永遠なんてなくっても②

 温かな沈黙が部屋を満たす。リンネはちょっとの距離も惜しくなって、黙ってグランの身体に身を寄せた。ちらりと横目でグランの顔を見ると、もうすっかり見慣れたはずの顔が今日はやけに輝いて見える。  眩しさを誤魔化すように、猫みたいな仕草で彼の肩に額をこすりつけた。グランは戸惑ったように両手を上げたが、やがておずおずとリンネの頭を撫でる。  柔らかな感触が気持ちいい。頭がふわふわとして、体が温かくなってくる。麗らかな日差しの中でひなたぼっこをしているかのような心地よさにリンネは目を細めた。  でも、だんだんと、髪に触れられるだけでは物足りなくなってくる。  リンネはグランにしなだれかかったまま、その顔を見上げた。満月のような黄色の瞳は、朧がかったように潤んで揺れる。 「今日は、あれはしないのか?」 「あれ?」 「キ、キス……」  自分がどうしてこんなことを言い出したのか、リンネにもわからなかった。でも、自然と口をついて出た。  リンネの言葉にグランは一瞬呆けてから、沸騰したように顔を一気に赤くする。彼の反応を見て、リンネは自分の発言が恥ずかしいものだったと自覚する。でも、今さら無かったことにはできない。 「……していいの?」 「う……」 「いや、ごめん。今のなし。ダサすぎた」  ぎこちない手つきでグランはリンネの頬に触れる。手のひらが熱い。リンネは自然と目を閉じていた。唇に柔らかいものが触れる。触れたところから熱く、融けてしまいそうになる。 「リンネ」  一瞬の息継ぎの折に、グランがリンネの名前を呼んだ。少し掠れた響きに、首の後ろあたりがぞくぞくとする。  グランが再び角度を変えてリンネに口づける。触れる体温に身を委ねて力を抜いたところで、急に唇の間から濡れた熱が入ってきて身体がびくりと跳ねた。一拍遅れてそれがグランの舌であることに気付く。  手を握るより、唇を合わせるより、もっともっと深い触れ合い。グランの舌が歯列をなぞるのに困惑して自分の舌で押し返そうとすると、逆に絡めとられてしまった。唾液で濡れた粘膜が絡み合って、このまま一つに溶けてしまいそうだ。 「あ、んぅっ……」  初めての感覚に、リンネの思考回路が柔らかく蕩けていく。何も触れていない指先が切なくなって手探りでグランの服を掴むと、優しく指を絡めとられた。たったそれだけの接触さえ、微弱な電流が走ったように甘く身体を痺れさせる。初めて経験する痺れと熱が、少しずつ身体の中心に集まってくるような感覚にリンネは身をよじった。 「や、なに……」  そのタイミングで唇が解放される。混乱したリンネは力の入らない手でグランを押しのけようとした。僅かばかりの抵抗に、グランは慌てた表情を見せる。 「ご、ごめん! 嫌だった!?」 「嫌じゃない、けど……なんか、変……」  リンネは膝をこすり合わせ、潤んだ瞳で訴えかけた。具体性のない言葉にも、グランは意図を理解できたらしい。目を丸くして、それからごくりと唾を飲みこむ。

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