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第6話 永遠なんてなくっても③

「えっと……『そういう風』になるのは、初めて?」 「たまに、朝起きた時になるけど、それとは全然違う……」 「あー……そっか」  グランが神妙に頷いたので、リンネは自分が本当におかしくなってしまったのではないかと不安になった。だが、それを解きほぐすように、グランがリンネの額を優しく撫でる。 「大丈夫、気持ちいいとそうなるのは、普通のことだから」 「きもち、いい……」  そうやって口にした瞬間、自分の身体を巡るこの感覚に名前がついたことで、より一層リンネを襲う波は強くなった。肌の表面が粟立って、自分の意志と関係なく身体が跳ねてしまう。  きもちいい。グランに触られるのは、キスされるのは、きもちいいんだ。ほんの少しの触れ合いで洪水みたいに溢れて止まらなくなる。  ――もっと、触ってほしい。  不埒な考えが頭の中に浮かぶのと、グランがリンネに手を伸ばすのは同時だった。 「嫌だったら言ってね」  優しく気遣う言葉に、リンネは拙く頷く。  グランがそっとリンネの肩を押して、ベッドに身体を横たわらせた。覆いかぶさるグランに上から見下ろされるような形になるが、一切支配的な感じはしない。むしろ、包み込まれるような安心感があった。  グランがリンネのローブを丁寧な手つきでまくると、緩く立ち上がりかけている中心があらわになる。その段になってリンネは、今自分がものすごく恥ずかしいことをされているのではないかと気づいたが、すぐに熱で塗りつぶされた。 「大丈夫? 寒くない?」 「ん……」  むしろ暑すぎるくらいだ。心臓が過剰に動きすぎているのか、全身が沸騰してしまったようで、朦朧とする。リンネは意識を繋ぎとめるようにグランの目をじっと見つめて、小さく頷いた。  よかった、と呟くとグランはリンネの性器に手を伸ばし、優しく握った。 「あぁっ……!」  普段自分でも進んでは触れないような敏感な場所に躊躇なく触れられ、リンネは声をあげた。電流のような感覚に襲われ、息がうまくできず、引きつったような変に高い声が出てしまう。  強すぎる快感から逃れたくて、リンネは身をよじって脚をばたつかせた。何度かグランの胴体を蹴ってしまったが、グランは嫌な顔一つせず、むしろ淡く微笑んでリンネを見下ろすばかりで、決して手を離してくれない。 「やっ、それ、やだあっ……」 「だいじょうぶ、だいじょうぶ……」  優しくも力強い声をかけられると、身体から力が抜けていく。  リンネはいつしか固く瞑っていた瞼をゆるゆると開けると、グランの顔を見てぎょっとした。  彼の目つきのせいだ。普段と変わらず優しい瞳の奥底に、これまでには見たことのない類の光がちらついている。  それは、獲物を捕らえた肉食獣の獰猛さにも似ていた。しかし、リンネは恐怖を覚えることはなかった。むしろ、もっと暴かれたい、食われたいと、生命の摂理に反した欲を抱いてしまう。 「んんっ――あっ……!」 「いいよ、イって」  グランの指先が強めに先端を刺激した瞬間、リンネの身体にひときわ強い電流が走ったようになって、一瞬頭が真っ白になった。身体が大きく跳ねて、次の瞬間には弛緩する。  リンネは荒い息を吐いた。息が上がって、額に汗が浮かんでいる。ぱちぱち、と未だ混乱したように瞬きをするリンネの額に張り付いた前髪を、グランは優しく払った。触れた指先すらくすぐったくて、リンネは無意識に吐息を零す。

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