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第6話 永遠なんてなくっても⑥
「やっ、ああっ……!」
奥を押されるたびにリンネの口から嬌声がもれた。先ほど精を吐き出したばかりの中心も再度芯を持ち始めており、身体が快感を拾っていることが見て取れる。
頭がどんどん真っ白になっていく。積み上がった快感が頭の中ではじける直前に指が引き抜かれた。
「あっ……なん、で……」
さっきまで自分の中にあった質量が急になくなったことで、喪失感を感じてしまう。自分の中の熱をどうしたらいいかわからず、リンネはグランの顔を見て、息を呑んだ。
熱い視線が、リンネのことを真っ直ぐ見つめている。普段の優しい目つきとは違う。さっき一瞬見せたものよりもっと切羽詰まっていて、理性で取り繕う余裕もないようだ。
「ごめん、もう、止まれないかも」
なんで謝るんだ、とか、止まったら逆に承知しないぞ、とか。そういうことを言おうとしたのに、すべての言葉はすっかり蒸発してしまって、「ん……」と小さく頷くことしかできなかった。
すっかりと解れた後孔にひたりと熱が押し当てられる。いつの間にかグランも着衣を取りさっていて、布越しではない感触は生々しく、肉体と肉体がぴったりとくっついてしまったかのようだ。
グランがゆっくりと腰を押し進める。少しずつ、だが、指よりも遥かに大きい質量にリンネは息を詰める。精神は受け入れようとしているのに、身体が異物を拒んでいる。
「ゆっくり息して、力抜いて、その方が苦しくないから」
「は、むりっ」
「ゆっくり、ゆっくりで大丈夫だから」
グランが頬を撫でたり、額や首筋を唇でなぞったり、触れた端からリンネの身体の強張りが柔らかく解けていく。
優しい手つきに触れられながら、きっとこんなのは当たり前ではないのだ、とリンネは悟る。
もっと無理やり事を進めることも出来て、そうしたいに違いないのに、リンネの身体を気遣ってばかりいる。彼の優しさに報いたい一心でリンネは身体を委ねた。
「ん、上手……」
それから充分に長い時間をかけて、自分の中が自分ではない熱で埋められていく。それに従って先ほど感じた快感も思い出されて、身体も思考も溶けていく。頭の中に幸福物質が溢れてふわふわとする。
そしてついに、一番深いところにまで切っ先が到達した。
「あつい……」
リンネはほとんど譫言のようにそんな言葉を零していた。
室温や、体温の話ではない。もっと深いところが燃えそうなほどの熱を孕んでいる。リンネはその熱を逃すように荒く息を吐き、潤んだ視界でグランの顔を見た。
グランもまた、荒く息を吐いていた。ぽたり、とリンネの胸元に額から汗が落ちる。ぐっと何かをこらえるような顔に、リンネは自然と微笑み、その眦に触れた。
「おまえも、気持ちいいか?」
「……うん、最高の気分だ」
心の底から満ち足りたような言葉を聞いて、リンネは胸の中がいっぱいになった。
自分のすべてを曝け出し、与え、与えられている。それはすごく信頼のいることだ。グランのことを信じているから、今この瞬間がある。
どちらからともなく指を絡めて、唇をあわせた。汗でしっとりと濡れた肌が密着して、身体の境界線もあやふやになる。
「動くね」
耳元でグランが切羽詰まったように囁く。リンネがその意味を理解するより早く、ずるりとギリギリのところまで剛直が引き抜かれ、次の瞬間には再度一番奥まで穿たれる。内壁を一気にこすり上げられる刺激と、一番好いところを突かれた衝撃にリンネは細い喉を晒して喘ぐ。
「んっ、あ、ああっ……」
杭が抜き差しされるたび、神経を直接嬲られるような快感に、声も反応も抑えることができない。
「や、あ、やぁっ――っ」
「っ……」
また、さっきのような強い電流が駆け巡って、身体が収縮する。一気に快感の渦に飲み込まれて、目の前が真っ白に塗りつぶされる。その瞬間、腕を力強く引っ張られて、リンネは強く抱きしめられていた。リンネも縋りつくように抱きしめ返す。
きっと今、喉元を嚙み千切られて死んだって、あの世で後悔はしないだろう。
だって、この瞬間に繋いだ熱は本物だから。
「っ……リンネっ……」
「グ、ランっ……グランっ……」
互いの存在を確かめ合うように名前を呼ぶ。リンネは抱きしめる腕に強く力を込めた。
「――愛してる」
耳元で囁かれて、胎の中に熱が吐き出される。二人が繋がった証のようで、リンネは幸せを噛み締めた。
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