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第2話

 隆也と電話で話したあの時から、真嗣は隆也がペンダントトップのようにプラチナのチェーンに通してくれたお揃いの指輪を、服の上からぎゅっと掴むことが多くなった。そうすることで、今まで感じたことのなかった不安を掻き消したかった。  隆也が見てくれていると想いながら、ホームページの更新をまめにしていたが、一方で隆也の様子を知る手立てはなかった。今まで隆也から連絡がなかった理由は、今不安になっている答えなのではないか。気持ちが変わることはないと、何故、こんなにも盲目的に信じていたのだろうか。一度、膨らみ始めた不安は、加速度的にどんどんと大きくなっていった。  隆也と会う日、つまり隆也が勤めている会社への訪問日、社長のスケジュールの都合で、朝一番に行くことになった。サンプルの『桜日和』や他の荷物もあり、車で行くことにしたのだが、朝一番の約束ということで、約束の時間に遅れないように確実な前乗りにした。隆也に連絡をして近くのビジネスホテルを予約してもらった。  出発の前日になると、真嗣は会える喜びよりも、二人の関係が自分が今まで思っていたものと違っていたことを、はっきりさせられるかもしれないという恐さの方が上回っていた。  昼過ぎに高倉酒造を出た真嗣は、夕方、隆也に予約してもらったビジネスホテルに到着した。迷ったが隆也にホテルに着いた連絡を入れた。 「あぁ、お疲れ。じゃあ、一時間後くらいに顔見に行くよ」  隆也はそう言って、部屋番号を聞いた。  真嗣はもうすぐ、隆也がここに来ることに緊張していた。あの時の電話のように、ここでもまた淡々と仕事の話しを始めても、冷静に対応をしようと胸の指輪に手をやった。  俺達はもう、ビジネスの関係なんだ。自分でそう言い聞かせて覚悟はできた。  そして、一時間後、部屋のドアをノックする音が聞こえた。  ついに、隆也がきた。

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