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第6話
風呂あがりの真嗣は、隆也のスウェットを借りたが、身幅や腰回りは問題は無かったが腕と脚の長さが真嗣には微妙に短かった。それを見た隆也は
「まぁ、一晩くらい我慢しろ」
と笑った。
風呂上がりのビールは美味いに決まっているが、さすがに今日は飲み過ぎだとばかり、二人はペットボトルのミネラルウォーターを半分ずつにして飲んだ。
飲み終わると、隆也は、歯磨きするぞ、と落ち着かないような照れた様子で洗面台に立った。歯磨き後、鏡に映った真嗣と自分の姿を見ると、手の平を自分の頭に乗せて真嗣の方へ水平に動かした。
「こうやって並ぶと、お前やっぱり背、高いな」
「隆也君も大人になったんだろ?」
「そうだよ。寝るぞ」
隆也は先に寝室に行った。寝室には以前マンションで使っていた物より、かなり大きめのベッドがあった。
「えっ?お前こんな大きいベッドで寝てんの?」
「そうだよ。悪いか。俺は寝相が悪いんだよ」
隆也は二週間前、真嗣が会社に来ることがわかると、真嗣がこれから先、泊まりに来ることを予想、いや期待して新しいベッド、しかもダブルベッドを買った。隆也には布団を一組買うという選択肢はなかった。
すると隆也は、あぁっ!と叫んだ。
「隆也?どうしたんだよ」
「真嗣、ごめん。掛け布団用意するの忘れた…」
「えっ?用意って…ひょっとしてお前、このベッドも」
「あぁ。それ以上言うな」
真嗣は隆也に抱きついた。
「ありがとう、隆也。寝相が悪くて」
「うるせぇよ。それより布団だ」
「お前がいつも使ってるのは?」
「あるけど、それはシングルサイズだ」
「じゃあ、二人でひっついて寝よう」
隆也は急に閃き、抱きついた真嗣の背中を叩いて言った。
「真嗣、ちょっと手伝え。こたつ布団だ」
隆也はリビングのこたつの天板を真嗣と一緒に持ち上げ、布団を外した。
「よし。まぁ一晩ならこれでいいだろ」
隆也はそう言うと、こたつ布団を丸めて寝室に持って行った。
二人はこたつ布団を被って肩を並べて横になった。何を話せばいいのか、何も話さなくてもいいのか、お互いに何となく所在無げな感じになっていた。
「ねぇ、もう一回キスする?」
真嗣から誘った。
「えっ…まぁ…いいけど。じゃあ、お前からしろよ」
「じゃあ、どこにしようかな…」
「どこって、お前…普通は口だろ」
隆也はぼそっと言った。
「でも、せっかくだから…」
「あぁ、お前変なこと考えてんだろ。もう、キスはなし。寝るぞ」
隆也はそう言うと、真嗣に背中を向けた。すると真嗣は隆也の背中に抱きついた。
「お前なぁ、寝るって言ってんだろ」
「隆也…ずっと前に話したさ、何故、人は服を着るのかって話し。あれ、覚えてる?」
真嗣がまだ実家に戻っていない頃、酔っ払った隆也が、真嗣に絡んできた話しだった。
「あぁ、あれか…覚えてるよ。人は繋がりを持ちたいから服を着るんだって、お前、そう言ったよな」
「そう。でさ、実はそれには続きがあるんだよ」
「…続き?何だそれ」
真嗣は少し勿体ぶった振りをして、隆也に抱きついた手を少し腰の辺りにずらした。
「誰かと特別な繋がりを持つことができたらさ、その人に触れたくなるだろ?で、肌と肌を重ねてみたくなって、結局、服を脱がしたくなるんだよっ」
真嗣は隆也のスエットの裾を引き上げた。
「あぁっ…お前、脱がすための口実だな、それ」
隆也はスウェットが上がらないように手で押さえた。
「当たり…ねぇ脱がさないから、手だけ入れさせて」
真嗣はへその上くらいまで引き上げたスウェットの裾から手を突っ込んで、隆也の胸元を手の平で撫でた。隆也は、もう、と言いながら真嗣の好きにさせた。
「隆也の素肌って、すべすべだな」
真嗣は隆也の素肌の感触を楽しんだ。
「お前、くすぐったいよ」
真嗣は指先に触れた隆也の乳首をつまんだ。
「あっ…ん」
隆也は思わず声を出した。
「隆也の声って…可愛い」
「もう…やめろって」
真嗣は乳首を触り続けた。
「ねぇ…ここにキスしたい」
「お前…」
真嗣は隆也のスウェットを更に引き上げて脱がすと、自分も勢いよく脱いで、隆也を仰向けにした。
「あぁ…隆也とこんな風になるなんて夢みたいだ。今日の俺の感情はジェットコースターだよ」
「真嗣…」
「じゃあ、最初は口からね」
真嗣は隆也に覆い被さり唇にキスをした。
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