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暗がりで待ってる

✳事後表現あり Rではないと思いますが閲覧注意。  暗闇で手を伸ばせば汗ばんだ背中に行き当たった。背骨を辿っていると不意に笑いだしそうになって慌てて手を引っ込めた。  堅物で何の面白味のない奴だと思っていた。目を合わせればなにかと言い合いになる。反りが合わない、水に油。言葉を探せばいくらでもある。  だらしがない、は1日に何度もきく。苦手だと面と向かって言われたこともある。それなのにーー。  やってしまった。  と言えば酒の常套句だ。事実少しは酒のせいにしたかったがそんなことはなくいつもの言い争い、売るか買うかの問題だった。  出来ない、に賭けていた。出来るわけがない、と。そうしてたかをくくって思い出したーー自分は賭けに弱いことを。  1賭ければ倍は負ける。  でも、賭けなきゃ勝てないのだ。  バカな自分でも良くわかることーーその土俵に上がらなきゃ勝ちはないのだ。  そう思って、さんざん売り言葉を言って相手をムキならせた。  その結果が今だった。  目が慣れない暗闇。呼吸音ですらろくに聞こえない。先ほど触れた背中にもう一度手を伸ばす。筋肉質な硬い皮膚。指の先に僅かにガサガサした感触。 ーーこれは、かさぶただろうか。  形をなぞっていると、手を掴まれた。 「あ、」 ーー起こしたか?  と口を開こうとするより先に 「はやく、ねろ」  どこかふわふわした調子で言われる。相手が寝返りを打ったような音がして、掴まれた手を顔の横に置かれる。  暗闇の中、相手の呼吸音が聞こえる。気のせいか仄かに体温を感じる。 ーーちゃんと、そこにいる。  もたり、と重たい睡魔がやって来て、ゆっくりと目を閉じた。

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