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第一章 ウィルバートの帰還③

 人の忠告など全く聞く気がないマティアスにベレフォードはあからさまにがっがりした表情を向けた。しかしそんなことを気にするマティアスではない。もはや今日という日が最高に楽しみな様子でエメラルドを嵌めたような緑の瞳を輝かせていた。  『ウィル』こと、ウィルバート・ブラックストンはボルデ村の炭鉱主の息子で、マティアスより七つ年上の現在二十五歳。  出会って早々にマティアスがウィルバートを自分の騎士にすると宣言したことにより、以来ウィルバートはマティアスにふさわしい騎士になるべく努力を重ねてくれている。  転機は四年前、『黒霧の厄災』の被災地であるボルデ村の再興と新事業の開拓の為、調査隊が結成されウィルバートが隊長に任命された。  二十一歳という若さながら隊長となった理由は、ボルデ村出身であることと、マティアスの騎士となる為の実績作りが目的だった。  しかし当時十四歳だったマティアスは、ウィルバートの任務が自分の為だと理解はしていたものの、まだ厄災の毒が残っているかもしれない地域にウィルバートが赴く事に強い不安を感じていたし、何より城からウィルバートが居なくなることが淋しすぎて泣き、ウィルバートを困らせた。  マティアスはウィルバートの居ない淋しさを彼との手紙のやりとりで紛らわし、いずれ正式に自分の騎士となれば、その先はずっと一緒にいられる事を励みにこの四年間耐えて来た。  その四年間も今日で終わるのだと思うと浮かれずにはいられない。 「そのような態度、他の者には見せないようになさいませ。次期国王としての示しがつきませんぞ」  ベレフォードはマティアスの浮かれように釘を刺してきた。  『そのような態度』や『示しがつかない』の意味がいまいちマティアスには解らない。だって誰に何と言われようとウィルバートはマティアスにとって特別なのだ。他と者と同列に扱うつもりも無い。しかしベレフォードにそれを言っても話が長くなるだけだ。

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