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第一章 幼き日④
下を見るとに男が一人、マティアスを見上げていた。
(やばい! 見つかった!)
焦るマティアスに男はさらに話しかけてくる。
「そんな所、登っちゃいけないんじゃないか? 危ないから降りてこいよ」
どうしようかと思いつつも降りられなくなっていたのも事実。落ちて怪我をするよりこの男に助けを求めるべきだと判断した。
「お、降りられない!」
「はぁ? どうやって登ったんだよ」
マティアスの助けを求める言葉に男は呆れたようだった。
「ちょっと待ってろ。動くなよ!」
男はそう言ってその場を去ってしまった。
(やばい! ベレフォードを呼ばれてしまったら……)
マティアスは焦り、今いる足場を確認する。
横になら移動できる気がして、モゾモゾと右側へ動いた。建物の角まで来た時、
「わっ!」
狭い隙間から足を踏み外しバランスを崩し、あっという間に背中から落下していった。
(母さま!)
マティアスはギュッと目を閉じ地面に叩き付けられる衝撃を覚悟した。
ドサッ! と身体に強い衝撃を感じ、そのままゴロゴロっと転がった。しかし、予想に反して地面は柔らかくそれほど痛くない。
「っ……! あっぶねっ!」
間近で声がして恐る恐る目を開けると先程の男と目があった。真っ黒な瞳に同じく真っ黒な短い髪の男は、この前会ったサムエルと同じくらいの歳に感じた。その男はマティアスを抱えて地面に寝転んでいた。
「お前っ、動くなって言っただろ⁉」
その男は身を起こすとマティアスに怒鳴りつけてきた。
「だ、だって……」
「だってじゃない! 梯子 か何か借りようと思ったけど、ふと見たらもうお前落ちかけるし。はぁ〜、寿命縮んだわ~」
「じゅ、寿命って縮むの⁉」
「縮む縮む。五年は縮んだ」
「そ、そんなに⁉」
マティアスは驚き、その男にしがみついたまま男の顔を覗き込んだ。
助けて貰ったのに五年も命を縮めてしまったことにマティアスは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「ご、ごめん。僕の命、分けてあげるよ!」
マティアスがそう言うと男は驚いたように見つめてきて、それから「アハハ」と笑った。
「ごめん、嘘だよ。それくらい驚いたって例え話だ」
「そうなの? なーんだ」
マティアスがそう言うと男はマティアスの頭をグリグリと撫でた。
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