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第一章 自覚した想い②

 重い腰と脚をなんとか奮い立たせ、マティアスはイーヴァリの執務室に向かった。 「なんだ」  入室してすぐにイーヴァリがいつも通りの感情の無い声色で言ってきた。そんなイーヴァリに強い視線を向けマティアスは口を開いた。 「ウィルに……ウィルバート・ブラックストンに罰をお与えになったと聞きました。内容をお聞かせ頂けますか」 「罰金三十万ダルベスと、一週間の謹慎だ」 「三十万て……!」  それはつい三日前、四年間の報酬としてウィルバートへ与えれた金額と同じだった。  ウィルバートの苦労や努力、そしてマティアスが淋しさに耐えたこの四年間の全てが、昨日の一件で無に帰したような気がした。  マティアスはなんとか罰を取り消して貰いたいと思いイーヴァリの説得を試みる。 「……陛下、今回の件は完全に私に非があります。他の護衛を返すように言ったのは私ですし、アルホへ向かったのも私の独断です。罰は私が受けます」 「お前にそう言われたくらいで警護を手薄にしたことはあの者が判断を誤ったと言える」  イーヴァリはまるでマティアスがそう言ってくると予想していたかのように即答した。 「それにお前の罰は、その身を汚されことで済んているだろう」  思わぬ事を言われマティアスはイーヴァリを睨んだ。  『ウィルに抱かれて嬉しかったです』などと言えるわけもないが、イーヴァリが言っていることを肯定もしたくなかった。 「……あの程度のことで自身が汚れたなどとは思っておりません」  その答えにイーヴァリはフッと息を吐いた。呆れたような小さな溜め息だ。 「とにかく、ブラックストンは私の管轄だ。罰は取り消さない。話は以上だ」  そう遮られてしまえばマティアスには他に成すすべがない。  まだウィルバートはイーヴァリのもの。  あと少しでウィルバートを自分の管轄下に置けると言うのに、そのあと少しの所でこんなにも悔しい思いをさせられる。  マティアスは奥歯を噛み締め、執務室を後にした。

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