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第一章 自覚した想い③
イーヴァリの執務室を後にし、マティアスは悩みつつもウィルバートの部屋に向かった。
正直、昨日の今日で顔を合わせづらい。しかし自分の身勝手な行動によりウィルバートが罰を受けるハメになったことは謝りたかった。それと恥ずかしさもあるが、ウィルバートに会いたいと言う気持ちも大きい。
兵舎へ向かい、ウィルバートの部屋の扉をノックした。
「はい」
低く覇気のない声が中からした。マティアスは扉を開け顔を少し覗かせた。
「少し良いか?」
「マティアス様……!」
机で書類の整理をしていたらしいウィルバートは驚いて立ち上がった。
四年ぶりに帰りウィルバートは新しい部屋を与えられていた。ベッドと机と棚が一つあるくらいで実に簡素だ。
マティアスは中に入り扉を閉め、意味無く床を見つめた。色々な感情が混ざりウィルの顔を見ることが出来ない。
「その……私のせいで罰金と謹慎処分になったと聞いた。陛下に取り下げていただけないか言ってみたが、ダメだった。すまない……」
「マティアス様……。罰は当然です。私は貴方をお守り出来なかった」
ウィルバートがとても悲しそうな声を聞いて、マティアスは視線を上げた。
「あの魔物は上位クラスだろう? ベレフォードでも勝てるか怪しい」
「そうですね。でもベレフォード様なら何か出来たでしょう。私は貴方が炎に包まれている間、見ている事しか出来なかった……」
ウィルバートが顔を左手で覆った。
マティアスはあの時の遠くに聴こえたウィルバートの悲鳴を思い出した。
(ああ、謝るべきは罰のことではないのかもしれない……)
「ウィル……済まなかった。何もかも私が軽率だったよ」
マティアスはウィルバートに近付きその頬に触れた。ウィルバートが驚いたようにこちらを見てさらに顔を歪ませた。
「しかも……貴方を汚してしまった……本来なら死罪でもおかしくありませんっ」
『死罪』などという物騒な言葉にマティアスは驚いた。
「何を言う! 死罪だなんてあり得ない!」
「いいえ。私の犯した罪はそれ程の重罪です。陛下が寛大すぎるのです」
「そんなことない! 罰金三十万ダルベスだろ!? 四年間の報酬じゃないか! それを全部罰金にするなんて……!」
「金などどうでも良いのですっ! 私はもはや貴方の騎士になる資格も無い……」
ウィルバートのその言葉にマティアスは息を詰まらせた。
「ウィル……何を言っている……」
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