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第一章 自覚した想い④

「何をって……もう私を騎士にするつもりはありませんよね」 「ば、馬鹿なことをっ! 成人の儀の翌日には予定通り任命式を行う」 「しかし……!」 「二人で十二年間、この為に頑張って来たんじゃないか! たかだかあんな事で何故取り消しになるんだ!」 「たかだかって……貴方は自分を汚した男を騎士にすると言うのですか!?」 「私は! 汚れてなどいないっ!」  マティアスの言葉にウィルバートはハッと息を詰まらせて、少しの間を置いて「すみません」と呟いた。 「マティアス様はたかだか一介の兵士によって汚されるような御方では」 「ウィル」  マティアスはウィルバートの言葉を遮った。そしてゆっくりとウィルバートに抱きついた。 「そういう意味じゃない。相手がお前だから汚されたとは思ってない」 「ま、マティアス様……」 「むしろ……お前になら汚されてもいいんだ」  マティアスはウィルバートの胸に顔を埋め、背中に回した腕に力を込め、強く抱き締めた。 「今回のことで気づいたんだ。私はウィルの事、ずっと……」  言葉にしようとすると猛烈に恥ずかしく、すぐに言葉が出なかった。顔や耳が熱く、きっと真っ赤になっていることだろう。  するとウィルバートがマティアスの肩を持ち自身から引き剥がすと目を見て言った。 「マティアス様っ、ベレフォード様の所へ行きましょう!」 「は? なんで……」 「いいですから。さあ」  ウィルバートはそう言ってグイグイとマティアスを押し、部屋を出た。  マティアスはウィルバートと一緒にベレフォードの研究室までやってきた。 「ベレフォード様、()られますか」  半地下の研究室には魔術の道具や、何かの動物の脚や薬草らしき束などがところ狭しと置かれ、大鍋では何かがグツグツと煮えている。  「んー、なんじゃ?」  部屋に鎮座している巨大な本棚の脇からベレフォードが顔を出した。 「ん? 謹慎をくらった奴がここでなにをしておる? おや、殿下まで」  ベレフォードは持っていた大量の本を魔法で浮かし棚に戻しながら二人を見た。 「今一度、マティアス様を診ていただきたいのです」  そう言うウィルバートの顔をマティアスは不審に思い見た。 「ん? なんだと言うのだ?」 「妖術が解けていません。……その、私に懸想しているような事を言うのです」  その突然の発言にマティアスは驚き、真っ赤になってウィルバートに詰め寄った。 「べ、ベレフォードに言わなくても良いじゃないかっ!」 「他に誰がその妖術を解除できるというのです?」 「よ、妖術なんて……」 (この想い全てがまやかしだと言うのか!)

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