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第一章 嫉妬②
マティアスは記憶を巡らせた。その名は昔から知ってはいるが、つい最近何か話題に登ったような気がする。
ふと頭の中で記憶が繋がった。
(あ……! ウィルの縁談相手だ……)
あの後のゴタゴタでその家の名が薄らいでいたが確かにそうだ。それにウィルバートが貴族の家を尋ねる理由が他に無い。
ウィルバートは謹慎が明け早々に縁談相手に会いに行ったのだ。
マティアスは足元からザワザワと闇が昇り、全身が飲み込まれて行くような感覚に陥った。
(謹慎が明けてすぐ行くなんて……そんなに縁談相手に会いたかったのか? 私には会いに来てくれないのに……?)
ウィルバートがその娘に会えばきっと縁談は纏まるだろう。そしてマティアスの知らないその娘と結婚し、くちづけをし、抱き合い、子を成す行為をする……。
マティアスの頭の中にはつい一週間前にウィルバートに抱かれた記憶が鮮明に蘇ってきた。あの熱い抱擁をウィルバートは他の女にするのだ。
「うっ……!」
突然、マティアスは胸に激しい痛みを感じた。本当に実体のある痛みだ。立っていられなくなり絨毯に膝をつき胸を抑え、ハアハアと荒く息をしなんとか耐えようとした。
「な……、なんなのだ……?」
やがて胸の痛みは息苦しさに変わり、覚えのある熱が下腹部に集まってきた。
「……う、うそだ、嫌だっ!」
マティアスの男である象徴がみるみる堅くなっていく。それと同時に先日ウィルバートと繋がった場所もズクズクと疼き始めて来た。
「あっ……くっ……」
マティアスは耐えきれず身体を丸めて絨毯に転がった
「はぁっ、うっ……くっ!」
マティアスは衣服の上から股間を抑えて圧迫した。しかしそれだけの刺激でそこは容易く精を吐き出した。身体がビクビクと痙攣する。しかし熱は一向に冷める様子がない。
「んっ……あの妖術、なのか……?」
ベレフォードがマティアスの中に『術の痕跡を感じる』と言っていた通りに、まだ妖術は完全に解けていないようだった。
「あうっ……苦し……」
どうしょうもない熱にマティアスは苦しみ、その場にいない者の名を口に乗せた。
「……ウィルっ」
そして理性と言う膜が剥がれ、どんどん欲望と憎悪が増していくのを感じた。
(ずっとずっと愛してたんだ! なんで、なんで縁談なんて……他の女なんかに渡したくない!)
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