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第一章 嫉妬③

「まあ! マティアス殿下!」  その時、ハンナの声がした。  ハンナはマティアスに駆け寄り肩を揺すり呼びかけてきた。   「殿下! いかがされましたの?!」 「ん……っ、は、ハンナ、僕……」 「……大変っ!」  朦朧としながら返答したマティアスを見て状況を理解したらしいハンナは急いで人を呼びに行ったようで、すぐに事情を知っているベレフォードとアーロンがやってきた。 「これは先週と同じ症状じゃな」  ベレフォードはマティアスを診てそう断言した。 「ブラックストンはいないのか」 「はい。今日は外出しておりまして。今から急ぎで呼びに行かせても、早馬で片道二時間はかかるかと……」 「往復で四時間か……」  朦朧とする頭に響いた四時間と言う言葉。もう今すぐにでも何とかして欲しいのに四時間なんて考えられないくらい果てしない時間だ。 「う……ウィル、ウィルぅぅ……!」  マティアスは愛しい人の名を呼びボロボロと涙を流した。 「うむ……。四時間この状態だと殿下のお身体が危ういか……。クランツ隊長、ハンナ、ちょっとこちらへ」  ベレフォードはそう言って二人を伴い廊下へと出て行った。  マティアスは絨毯に転がったまま一人苦しんでいるとすぐに誰かが戻ってきた。 「殿下、寝室へお運びいたしますね」  その者はそうマティアスに呼びかけると軽々と抱き上げ歩き出した。 「……ウィル」 「ええ、そう呼んでいただいて構いませんよ」  その者は優しくと答えつつも「こりゃ後で恨まれるな……」と小さく呟いた。  寝室に入り寝台へ寝かされ、マティアスは身体をさすり撫でられながらゆっくりと服を一枚ずつ脱がされていった。 「う、ウィル……ウィル……」  マティアスは朦朧としながら何度もウィルバートを呼んだ。  やがて下肢にも手をかけられ脱がされ、マティアスは絹のシャツ一枚で横たわっていた。 「殿下……、なんとお美しい……」  脚を開かせられ、内腿を撫でられる。  さらに首筋にキスをされ、シャツ越しに胸の突起を触られた時、ザワワワワッと悪寒が走った。 「やっ……! 何……!?」  驚いて目を開くと、そこにいたのはアーロン・クランツだった。 「アーロン……なんで……!」 「ウィルバートでなくて申し訳ございません」  アーロンは少し困ったように言った。

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