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第一章 嫉妬⑤

――マティ……さ…! ――マ……アス様…! 開けて……い!  どれくらい時間が経っただろうか。それほど経ってないような気もするし、永く永く終わらることがないほどの時にも感じた。  横たわっていた堅く冷たい石に体温が吸い取られ身体が強張っていた。しかし身体の内部は不完全燃焼が続き、股は何度も放った精で濡れている にも関わらず勃起した状態が続いている。  疲れ果てたマティアスは朦朧とする頭で夢と現の狭間を彷徨っていた。 ――マティ……様! マティアス……ま!  遠くで誰が呼んでいる。  耳にはその声が入ってくるが目を開けるのが億劫だ。 「マティアス! 開けろ!」  突然の怒号が脳に届き、マティアスはハッと目を開けた。  すぐに開けなければと思い、重い身体を起こし、閂に腕を伸ばす。 「ふっ……ん……!」  力が入らない腕をなんとか奮い立たせ、木製の重い閂を持ち上げた。  ガコンッ!と重い音がし閂が外れ、その瞬間扉から眩しい光がマティアスを照らした。 「マティアス様っ!」  次の瞬間マティアスは抱き締められていた。全身の力が抜け、その温かな腕に身を預ける。  マティアスの働かない頭でも、その声や匂いや肉感ですぐに分かった。ウィルバートだ。 「こんなに冷えて……!」 「すぐ湯を用意しよう。浴室へ運ぶのじゃ」  軽々と抱き上げられたマティアスはそのまま運ばれていった。  城内にある最も広い浴室は王族専用で現在はイーヴァリとマティアスしか使用していない。  繊細なモザイクタイルが施された六角形の大きな浴槽にはバシャバシャと大量の湯が流し込まれていく。 「急ぎなので火焔石で温めておる。すぐにいっぱいになるだろう」 「ブラックストン様、こちらに必要な物を置いておきます。お飲み物も。様子を見て殿下に飲ませてください」  ベレフォードとハンナを声をマティアスはウィルバートに抱きかかえられながらぼんやりと聞いていた。 「承知いたしました」 「では、後は任せるよ」  そう言うとベレフォードとハンナは退出して行った。  ウィルバートは浴室内に置かれたラタンのソファにマティアスを寝かせた。 「少しお待ちを」  そう言うとウィルバートは素早く服を脱ぎ始めた。マティアスはぼんやりとその背中を眺めていた。見事な筋肉が張られた美しい背中だ。  やがてウィルバートが腰に布を巻いただけの姿になり、マティアスは自身の身体が再び熱く(たぎ)り始めているのを感じた。

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