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第一章 嫉妬⑪*

「ああっ! もうっ!」  ウィルバートは苛立ちを隠さずマティアスから離れると、腰に布を巻きながら言った。 「すぐに流します。そのまま動かないで」  ウィルバートは洗い場に向かいマティアスを座らせる浴室用の椅子などを出し始めた。  マティアスはそれを横目に自身の下腹部を見た。クタッと力尽きている自身の中心部や、内腿にウィルバートの精液がかかっている。見えないが後腔のほうへも伝って行っている感覚にゾクゾクした。  マティアスは下腹あたりに飛んだ一滴を中指で拭い取り、それを見つめながら口へと運ぼうとした。  どんな味がするのだろうか。どんな香りだろつか。なにより腹の中で受け止められなかったウィルバートの子種を自身の身体に取り込みたいと思った。 「やめろっ!」  突然、手首を強く握られた。  目の前にはウィルバートが怒りとも悲しみともつかない表情でそこにいた。 「ご、ごめん……」  あまりの剣幕にマティアスは咄嗟に謝罪を口にした。  ウィルバートは布でマティアスの指を拭い、さらに下腹部もざっと拭き取った後、マティアスを横抱きに抱き上げた洗い場へと運んだ。  ウィルバートはマティアスの身体を丁寧に洗い、髪も洗ってくれた。  頭皮をマッサージしながら髪を洗うウィルバートの指は実に心地よかった。しかしウィルバートはその間ずっと無言で、マティアスもウィルバートの険悪な雰囲気に全くリラックスはできなかった。

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