73 / 166

第一章 告白①

――翌日  成人の儀の翌日にはウィルバートを騎士とする任命式を行うと、マティアスは長年思い描いてきた。しかしそれは叶わずその日を迎えている。  ウィルバートと迎えた昨日の朝は思いの外甘い雰囲気だった。あの余韻を壊したくなくて、マティアスはウィルバートに騎士の話を出来ずにいた。 『どのような形であれ貴方のお側を離れる気はありません』  それはまるで愛の告白のように聞こえたのは惚れた欲目だろうか。  マティアスもまたどのような形であってもウィルバートの側に居たいと思っている。しかしやはりウィルバートには騎士として側に居て欲しいと願わずにはいられない。そう宣言したあの幼い日からそれが一番の目標だったから。  しかしここは慎重に、ウィルバートに拒絶されないように事を運びたい。マティアスは時間にはこだわらずウィルバートを説得することにした。  その日の夕方、予想外なことにウィルバートから急ぎ報告があると謁見の申し出があった。しかもイーヴァリと一緒にだ。  国王陛下の前で何を話すつもりなのだろうか。 それはマティアスにとって歓喜か絶望の二極化となる可能性が高かった。  自らマティアスの騎士にさせて欲しいと言うのかもしれないし、はたまた城を去りたいなどと言うかもしれない。  マティアスの胸はざわついていた。  謁見の間の玉座にはイーヴァリとマティアスが座り、端にはベレフォードとアーロンが控えた。そして玉座の前で膝をつき頭を下げるのはウィルバートだ。 「……して、用件はなんだ」  イーヴァリが口を開きウィルバートに尋ねた。 「はっ。お時間いただきまして、誠にありがとうございます」  口を開いたウィルバートはとても緊張しているように感じた。 「マティアス殿下にかかった妖術を解くには今一度あの魔物に会うしか無いと考え、本日アルホの丘まで行って参りました」  ウィルバートの言葉に皆がざわついた。  マティアスも驚き声を上げそうになり口を手で覆った。 「なんと危険な! 契約を持ちかけられたらどうするのだ!?」  ベレフォードが怒り言う。  上位クラスの魔物は人の弱みに漬け込み契約を持ち掛ける。対価はその者の身体の一部が多い。ウィルバートの身体に欠損は見受けられないので、契約はしていないようだが。 「申し訳ございません。しかし、もう解決策が思いつきませんでした。それで、数刻呼び掛けておりました所、(くだん)の魔物が姿を現し、私がマティアス殿下の呪を解いてほしいと言った所……」  ウィルバートはマティアスに視線を向けた。そして静かに言葉を吐き出した。 「『お前のその想いが消えれば、王子が盛ることは無い』と……」 (……え!)  マティアスはその言葉を意味を考えた。  それはつまり……

ともだちにシェアしよう!