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第一章 告白②

「……あの日、魔物は先に私の元に現れておりました。そして私の想いを叶えてやろうと言って、マティアス様の元に……。つまりこの呪は私のマティアス様への想いが、欲望が、引き起こした事にございますっ……!」  ウィルバートは苦しげに、吐き出すようにそう言った。  マティアスの中で喜びが膨れあがった。  ウィルバートは自分を愛してくれている。  自分達は同じ想いだったのだと。  マティアスが嬉しさのあまり思わず立ち上がった時、 「……貴様ぁっ! よくも我が孫に!!」  横に座っていたイーヴァリが叫び立ち上がった。そして右手を構えると一瞬にして光り輝く剣が出現した。  強い魔力で作られたその剣は眩しい程の光を放ち、イーヴァリは迷うことなくそれをウィルバートに向ける。 「や、やめてください!」  マティアスは咄嗟にイーヴァリの長衣を掴み縋り付いた。しかしイーヴァリはマティアスを引きずりながら怒りに任せて突き進む。 「私のマティアス様への想いは消える事はありません! どうぞ、お手打になさってください!」  ウィルバートは覚悟を決めた目を向け、首を差し出すかのように頭を垂れた。  マティアスの喜びは一瞬にして吹き飛び、悪夢へと変わる。マティアスはイーヴァリの脚にしがみつき、必死に訴えた。 「陛下! どうか! どうか一度剣をお納めください!」  マティアスはこれほどまでに感情を露にしているイーヴァリを初めて見た。 「ベレフォード! アーロン! 陛下を止めろ!」  マティアスは二人に向かって叫んだ。しかし、ベレフォードもアーロンも、動揺しつつも相手が国王なだけあり止めに入ってはくれない。  イーヴァリはマティアスの静止を完全に無視してウィルバートを怒鳴りつけた。 「貴様っ! 自分が死ねばマティアスの呪が解けると知って何故城へ戻った!? マティアスを想うならば勝手に一人で死んでくれば良かろうに! なぜのこのこと戻った!? 当ててやろう卑怯者めっ! マティアスに自分の死を背負わせたいからであろう! マティアスが一生忘れられぬ程になっ!」  イーヴァリの発言にウィルバートがハッと顔を上げ、マティアスと視線が絡んだ。そして顔を歪ませるとマティアスを見たまま苦しげに言葉を吐いた。 「おっしゃる……通りにございます……」  マティアスにしがみつかれたイーヴァリは低く呻くような声を出す。 「マティアスの(きた)る騎士として、貴様をどれだけ優遇して来てやったかっ! それを……こんな……私もマティアスをも裏切る行為だっ!」 「……はい。もはやお許し頂ける事だとは思っておりません……」  ウィルバートはそう言って床に頭をつけるように下げた。  そしてイーヴァリが言い放った。 「地下牢に放り込んでおけ! 王子を凌辱するなど、処刑以外ありえん! 明朝、刑を執行する!」  イーヴァリの指示にアーロンが謁見室の外で待期していた兵士たちを呼び入れた。兵士たちによりウィルバートは後ろ手に枷をかけられ連れて行かれる。  ウィルバートはもうマティアスに視線を向けてはくれなかった。  その様子を呆然と見ていたマティアスは再びイーヴァリに縋り言った。 「しょ、処刑なんてありえません! どうか、どうかお考え直しを!」  イーヴァリはマティアスを無視し光の剣を消すとベレフォードに言った。 「ベレフォード、マティアスを部屋から出すな」  イーヴァリはそう言って謁見室から出て行ってしまった。

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